特定新株予約権の行使による株式の取得をした場合の所得税の非課税_特例適用者が国外転出した場合


今回は、特定新株予約権の行使による株式の取得をした場合の所得税の非課税のうち、特例適用者が国外転出した場合を確認してみましょう

特例適用者が国外転出した場合

規定を見てみましょう。

5 特例適用者が国外転出をする場合には、その国外転出の時に有する特定株式(取締役等の特定株式を除く。)のうちその国外転出の時における価額に相当する金額として政令で定める金額(以下この項において「国外転出時価額」という。)がその取得に要した金額として政令で定める金額を超えるもので政令で定めるもの(以下この項において「特定従事者の特定株式」という。)については、その国外転出の時に、権利行使時価額(当該特定従事者の特定株式の国外転出時価額と当該特例適用者が当該特定従事者の特定株式に係る特定新株予約権の行使をした日における当該特定従事者の特定株式の価額に相当する金額として政令で定める金額とのうちいずれか少ない金額をいう。以下この項において同じ。)による譲渡があつたものと、当該特例適用者については、その国外転出の時に、当該権利行使時価額をもつて当該特定従事者の特定株式の数に相当する数の当該特定従事者の特定株式と同一銘柄の株式の取得をしたものとそれぞれみなして、第三十七条の十及び第三十七条の十一の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する。

租税特別措置法第29条の2第5項、令和7年12月1日施行

カッコ書きを外してみましょう。

5 特例適用者が国外転出をする場合には、その国外転出の時に有する特定株式(注1)のうちその国外転出の時における価額に相当する金額として政令で定める金額(注2、国外転出時価額)がその取得に要した金額として政令で定める金額を超えるもので政令で定めるもの(注3、特定従事者の特定株式)については、その国外転出の時に、権利行使時価額(注4)による譲渡があつたものと、当該特例適用者については、その国外転出の時に、当該権利行使時価額をもつて当該特定従事者の特定株式の数に相当する数の当該特定従事者の特定株式と同一銘柄の株式の取得をしたものとそれぞれみなして、第三十七条の十及び第三十七条の十一の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する。

所得税が非課税となる要件を満たした人を「特例適用者」といい、国内に住所や居所がなくなることを「国外転出」といいます。

この特例適用者が国外転出した場合が要件です。
要件を満たした場合の取扱いは、次の3つです。

1つ目

その国外転出の時に有する特定株式(注1)のうちその国外転出の時における価額に相当する金額として政令で定める金額(注2、国外転出時価額)がその取得に要した金額として政令で定める金額を超えるもので政令で定めるもの(注3、特定従事者の特定株式)については、その国外転出の時に、権利行使時価額(注4)による譲渡があつたものと、

2つ目

当該特例適用者については、その国外転出の時に、当該権利行使時価額をもつて当該特定従事者の特定株式の数に相当する数の当該特定従事者の特定株式と同一銘柄の株式の取得をしたものと

3つ目

それぞれみなして、第三十七条の十及び第三十七条の十一の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する。

1つ目の規定を算式に変えます。

1、その国外転出の時に有する特定株式(注1、取締役等の特定株式は除外)のうち、その国外転出の時における価額に相当する金額として政令で定める金額(注2、国外転出時価額)

2、その取得に要した金額として政令で定める金額

3、1>2のもので政令で定めるものを「特定従事者の特定株式」といいます。

この特定従事者の特定株式については、国外転出のタイミングで、権利行使時価額による売却があったものとして取り扱われます。

個人の仕訳イメージ
権利行使時価額による売却収入 ×× / 特定従事者の特定株式 ××
(差額が売却損益となります。)

2つ目

当該特例適用者については、その国外転出の時に、当該権利行使時価額をもつて当該特定従事者の特定株式の数に相当する数の当該特定従事者の特定株式と同一銘柄の株式の取得をしたものと

特定従事者の特定株式を売却した代金は、実際に受け取りません。売却代金を使って、特定従事者の特定株式と同じ銘柄の株式を買ったものとして取り扱われます。

個人の仕訳イメージ
特定株式と同じ銘柄の株式 ×× / 権利行使時価額による売却収入 ××

3つ目

それぞれみなして、第三十七条の十及び第三十七条の十一の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する。

所得税に関する法令の規定が適用されます。


・第37条の10、一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例
・第37条の11、上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例

1つ目の取扱いにより、特定従事者の特定株式について、売却損益を計算する必要があります。

権利行使時価額

権利行使時価額(注4)のカッコ書きを見てみましょう。

権利行使時価額(当該特定従事者の特定株式の国外転出時価額と当該特例適用者が当該特定従事者の特定株式に係る特定新株予約権の行使をした日における当該特定従事者の特定株式の価額に相当する金額として政令で定める金額とのうちいずれか少ない金額をいう。以下この項において同じ。)

1、特定従事者の特定株式の国外転出時価額

2、特例適用者が特定従事者の特定株式に係る特定新株予約権の行使をした日における、特定従事者の特定株式の価額に相当する金額として政令で定める金額

3、1と2を比較して、いずれか少ない金額が「権利行使時価額」です。

参考情報

計算については、政令(租税特別措置法施行令)を確認する必要があります。

1、政令で定める金額、国外転出時の計算
租税特別措置法施行令第19条の3第15項

2、政令で定める金額、特定株式の取得金額
租税特別措置法施行令第19条の3第16項

3、政令で定めるもの、対象となる特定株式
租税特別措置法施行令第19条の3第17項

4、政令で定める金額、特定従事者の特定株式の価額
租税特別措置法施行令第19条の3第18項

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