エンジェル税制の改正


今回は、改正されたエンジェル税制の規定を確認してみましょう。

エンジェル税制の改正

令和5年4月にエンジェル税制
(個人投資家の税制優遇措置)が改正されています。

エンジェル税制は、3つあります。
・エンジェル税制(取得価額の控除)
・改正されたエンジェル税制(令和5年4月1日以後)
・エンジェル税制(寄附金控除)

今回は、改正されたエンジェル税制の規定を確認したいと思います。

エンジェル税制の全体像を確認する場合は、
経済産業省のWEBサイトを確認してみましょう。

参考URL、経済産業省、
エンジェル税制とは

今回確認する規定はこちら↓

特定新規中小企業者がその設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等

第三十七条の十三の二 令和五年四月一日以後に、その設立の日の属する年十二月三十一日において中小企業等経営強化法第六条に規定する特定新規中小企業者に該当する株式会社でその設立の日以後の期間が一年未満の株式会社であることその他の財務省令で定める要件を満たすものによりその設立の際に発行される株式(以下この項において「設立特定株式」という。)を払込みにより取得をした居住者又は恒久的施設を有する非居住者(当該株式会社の発起人であることその他の政令で定める要件を満たすものに限る。)が、当該設立特定株式を払込みにより取得をした場合における第三十七条の十第一項及び第三十七条の十一第一項の規定の適用については、政令で定めるところにより、その年分の第三十七条の十第一項に規定する一般株式等に係る譲渡所得等の金額又は第三十七条の十一第一項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、その年中に当該払込みにより取得をした設立特定株式(その年十二月三十一日において有するものとして政令で定めるものに限る。以下この条において「控除対象設立特定株式」という。)の取得に要した金額の合計額(適用前の一般株式等に係る譲渡所得等の金額(この項の規定を適用しないで計算した場合における第三十七条の十第一項に規定する一般株式等に係る譲渡所得等の金額をいう。第三項において同じ。)及び適用前の上場株式等に係る譲渡所得等の金額(この項の規定を適用しないで計算した場合における第三十七条の十一第一項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等の金額をいう。第三項において同じ。)の合計額(以下この項において「適用前の株式等に係る譲渡所得等の金額の合計額」という。)が当該取得に要した金額の合計額に満たない場合には、当該適用前の株式等に係る譲渡所得等の金額の合計額に相当する金額)を控除する。

租税特別措置法、施行日令和5年10月1日

第1項を整理してみましょう。

規定をまとめたもの


令和5年4月1日以後に、
その設立の日の属する年12月31日において
中小企業等経営強化法第6条に規定する
特定新規中小企業者に該当する株式会社で
その設立の日以後の期間が1年未満の株式会社であること
その他の財務省令で定める要件を満たすものにより

その設立の際に発行される株式(注1、設立特定株式)を
払込みにより取得をした居住者等(注2)が、

その設立特定株式を払込みにより取得をした場合における
・第37条の10第1項及び
・第37条の11第1項
の規定の適用については、政令で定めるところにより、

その年分の
第37条の10第1項に規定する一般株式等に係る譲渡所得等の金額又は
第37条の11第1項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等の金額
の計算上、

その年中にその払込みにより取得をした設立特定株式
(注3、控除対象設立特定株式)
の取得に要した金額の合計額(注4、控除限度額)を控除する。


(注1)設立特定株式
以下この項において「設立特定株式」という。

(注2)居住者等
当該株式会社の発起人であること
その他の政令で定める要件を満たすものに限る。

(注3)控除対象設立特定株式
その年12月31日において有するものとして政令で定めるものに限る。
以下この条において「控除対象設立特定株式」という。

(注4)控除限度額
・適用前の一般株式等に係る譲渡所得等の金額(注4-1)及び
・適用前の上場株式等に係る譲渡所得等の金額(注4‐2)
の合計額(注4-3、適用前の株式等に係る譲渡所得等の金額の合計額)が
当該取得に要した金額の合計額に満たない場合には、
当該適用前の株式等に係る譲渡所得等の金額の合計額に相当する金額

(注4-1)
この項の規定を適用しないで計算した場合における第37条の10第1項に規定する一般株式等に係る譲渡所得等の金額をいう。第3項において同じ。

(注4‐2)
この項の規定を適用しないで計算した場合における第37条の11第1項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等の金額をいう。第3項において同じ。

(注4-3)適用前の株式等に係る譲渡所得等の金額の合計額
以下この項において
「適用前の株式等に係る譲渡所得等の金額の合計額」という。


もう少しまとめてみましょう。

令和5年4月1日以後に、
設立特定株式を払込みにより取得をした居住者等が
その設立特定株式を払込みにより取得をした場合における
・第37条の10第1項(一般株式等の譲渡損益の計算)
・第37条の11第1項(上場株式等の譲渡損益の計算)
の規定の適用については、一定の方法により

その年分の
・第37条の10第1項に規定する一般株式等に係る譲渡所得等の金額又は
・第37条の11第1項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等の金額
の計算上、

控除対象設立特定株式の取得に要した金額の合計額
を控除する。


さらにまとめると

令和5年4月1日以後に、
居住者等が「設立特定株式」を取得した場合の
株式等の譲渡益の計算については、

「控除対象設立特定株式」の取得に要した金額の合計額
を控除できる規定です。

要件を満たす株式を取得した場合、
その株式の取得価額の合計額を
特例を適用する前の株式の譲渡益からマイナスできます。

概要については、下記サイトを確認してみましょう。
参考URL、経済産業省、起業特例の概要
https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/angeltax/startup.html

改正されたエンジェル税制の計算イメージ

A株を1億円で取得して、
5億円で売却すると4億円の株式譲渡益が発生します。
(所得税・住民税がかかります。)

手元資金の5億円を、要件を満たす会社の設立の出資に充てた場合、
4億円の売却益から投資額5億円(この場合は4億円)をマイナスできます。
結果、売却益が0円となります。
(4億円の売却益が0円となることを非課税と表現しています。)

適用できない場合

エンジェル税制は3種類あります。
・エンジェル税制(取得価額の控除)
・改正されたエンジェル税制(令和5年4月1日以後)
・エンジェル税制(寄附金控除)

投資した株式について改正されたエンジェル税制を利用する場合、
エンジェル税制は利用できません。


参考情報、規定をまとめたもの

・新しいエンジェル税制の規定の適用を受けた控除対象設立特定株式及び
・その控除対象設立特定株式と同一銘柄の株式で、その適用を受けた年中に払込みにより取得をしたもの
については、前条第1項(エンジェル税制)の規定は、適用できません。

エンジェル税制が適用できない場合

2 前項の規定の適用を受けた控除対象設立特定株式及び当該控除対象設立特定株式と同一銘柄の株式で、その適用を受けた年中に払込みにより取得をしたものについては、前条第一項の規定は、適用しない。

租税特別措置法、施行日令和5年10月1日
手続規定など

新しいエンジェル税制(第1項)の規定は、確定申告書に
・特例を適用する旨の記載
・計算明細書とその他の財務省令で定める書類の添付
がある場合に限り、適用可能です。
(やむを得ない事情がある場合の規定がないため注意しましょう。)

新しいエンジェル税制(第1項)の規定の適用を受けた金額が
20億円を超える場合の計算などについては、政令を確認する必要があります。

参考規定

手続規定

3 第一項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、控除対象設立特定株式の取得に要した金額、適用前の一般株式等に係る譲渡所得等の金額、適用前の上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び同項の控除の計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

租税特別措置法、施行日令和5年10月1日

政令委任規定

4 その年において第一項の規定の適用を受けた金額が二十億円を超える場合における控除対象設立特定株式と同一銘柄の株式の取得価額の計算の特例その他前三項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める

租税特別措置法、施行日令和5年10月1日

中小企業等経営強化法

(診断及び指導)
第六条 経済産業大臣は、新規中小企業者である会社であってその事業の将来における成長発展を図るために積極的に外部からの投資を受けて事業活動を行うことが特に必要かつ適切なものとして経済産業省令で定める要件に該当するもの(次条において「特定新規中小企業者」という。)に対して、その投資による資金調達の円滑な実施に必要な経営状況に関する情報の提供について診断及び指導を行うものとする。

中小企業等経営強化法

(課税の特例)
第七条 特定新規中小企業者により発行される株式を払込みにより個人が取得した場合(当該株式を取得したことについて経済産業省令で定めるところにより経済産業大臣の確認を受けた場合に限る。)で、当該株式について譲渡損失等が発生したときは、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、当該譲渡損失等について繰越控除等の課税の特例の適用があるものとする。

中小企業等経営強化法
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