特定新規設立法人の納税義務の免除の特例


今回は、消費税の納税義務の免除の特例の1つ、特定新規設立法人について確認します。

規定の目的

新設法人は原則として、消費税の納税義務がありません。事業年度開始日の資本金の額が1000万円以上であれば、新設法人の特例により納税義務が免除されませんが、わざと資本金の額を1000万円未満にして法人を設立すると、簡単に消費税の納税義務がなくなってしまいます。この仕組みを乱用した結果、特定新規設立法人の特例が新設され、資本金の額が1000万円未満であっても、一定の要件を満たした場合、消費税の納税義務が免除されなくなっています。

特定新規設立法人の納税義務の免除の概要

特定新規設立法人の納税義務の免除の特例の要件は、
簡単に説明すると次の4つです。

  • 事業年度の基準期間がないこと
    基準期間がない法人で一定のものを「新規設立法人」といいます。
  • その基準期間がない事業年度開始日において「特定要件」に該当すること
    この特定要件が難しい取扱いです。後日確認します。
  • 基準期間相当期間の課税売上高が5億円を超えること
    この金額が5億円を超える法人を「特定新規設立法人」といいます。
  • 他の規定により納税義務が免除されていないこと。

上記4つの要件を満たす場合は、基準期間がなく、事業年度開始日の資本金の額が1000万円未満であっても、消費税の納税義務は免除されません。

調整対象固定資産を取得した場合の3年縛り

新設法人の特例の調整対象固定資産の3年縛りと同様に、特定新規設立法人の特例についても、3年縛りがあります。調整対象固定資産を取得した場合は、課税事業者期間が原則として3年間強制されます。

似たような規定なので、新設法人の規定を読み替えます。

消費税法12条の2、新設法人の納税義務の免除の特例(元の規定)

2 前項の新設法人が、その基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間(第三十七条第一項の規定の適用を受ける課税期間を除く。)中に調整対象固定資産の仕入れ等を行つた場合には、当該新設法人の当該調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間から当該課税期間の初日以後三年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間(その基準期間における課税売上高が千万円を超える課税期間及び第九条第四項の規定による届出書の提出により、又は第九条の二第一項、第十一条第三項若しくは第四項、前条第一項から第三項まで若しくは前項の規定により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間を除く。)における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、第九条第一項本文の規定は、適用しない。

消費税法12条の2、新設法人の納税義務の免除の特例

消費税法12条の3、特定新規設立法人の納税義務の免除の特例(読み替え規定)

3 前条第二項及び第三項の規定は、特定新規設立法人がその基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間(第三十七条第一項の規定の適用を受ける課税期間を除く。)中に調整対象固定資産の仕入れ等を行つた場合について準用する。この場合において、前条第二項中「前項の新設法人」とあるのは「次条第一項の特定新規設立法人」と、「当該新設法人」とあるのは「当該特定新規設立法人」と、「若しくは前項」とあるのは「、この項若しくは次条第一項」と読み替えるものとする。

消費税法12条の3、特定新規設立法人の納税義務の免除の特例

読み替え後の規定

2 次条第一項の特定新規設立法人が、その基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間(第三十七条第一項の規定の適用を受ける課税期間を除く。)中に調整対象固定資産の仕入れ等を行つた場合には、当該特定新規設立法人の当該調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間から当該課税期間の初日以後三年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間(その基準期間における課税売上高が千万円を超える課税期間及び第九条第四項の規定による届出書の提出により、又は第九条の二第一項、第十一条第三項若しくは第四項、前条第一項から第三項まで、この項<12条の2第2項のこと>若しくは次条第一項<12条の3特定新規設立法人の納税義務の免除の特例>の規定により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間を除く。)における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、第九条第一項本文の規定は、適用しない。

消費税法12条の2、新設法人の納税義務の免除の特例

「第九条第一項本文の規定は、適用しない。」は、よく出てくるフレーズで、小規模事業者の納税義務の免除の規定は、適用しない=納税義務があるという意味となります。

3年縛りの意味

1つ税抜き100万円以上の固定資産を「調整対象固定資産」といいます。この調整対象固定資産については、取得時の消費税控除だけではなく、取得後3年間、一定の条件を満たした場合、消費税の調整規定が適用されます。この調整規定逃れを防止するために、課税事業者期間を3年間強制しています。

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