特定株主等によつて支配された欠損等法人の資産の譲渡等損失額


今回は、欠損等法人の資産の譲渡等損失額の損金不算入(法人税法60条の3)を確認します。通算制度の「特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入(法人税法64条の14)」と似た規定です。

欠損等法人の資産の譲渡等損失額の損金不算入

欠損等法人(注1)の適用事業年度(法人税法57条の2第1項)開始日から
同日以後3年を経過する日(注2)までの期間(注3、適用期間)において生ずる特定資産(注4)の譲渡等特定事由(注5)による譲渡等損失額(注6)は、
その欠損等法人の事業年度の損金不算入となります。

注1、法人税法57条の2第1項
特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用

注2、その経過日が支配日(法法57条の2①)以後
5年を経過する日「後」となる場合にあっては、その5年経過日。

→ 欠損等法人の制限期間は、原則として3年間。
→ ただし、支配日以後5年が期限となります。

注3、その期間に終了する各事業年度において、以下の適用を受ける場合には、その適用事業年度開始日からその適用を受ける事業年度終了日までの期間、以下この項・次項において「適用期間」という。

  1. 非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の有する資産の時価評価損益(法法62条の9①)
  2. 通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益(法法64条の11①)
  3. 通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益(法法64条の12①)
  4. 通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益(法法64条の13①1号限定)

→ 欠損等法人の制限期間は、原則として3年間。
→ ただし、制限期間中に時価評価する場合、時価評価事業年度終了までの期間
  (途中で制限が停止する。)

注4、特定資産の定義
その欠損等法人がその支配日事業年度開始日において有する資産・その欠損等法人がその適用事業年度開始日「以後」に行われる他の者(法法57条の2①)を分割法人若しくは現物出資法人とする適格分割若しくは適格現物出資「又は」関連者(法法57条の2①3号)を被合併法人、分割法人、現物出資法人若しくは現物分配法人とする「適格」組織再編成等(注4-2)により移転を受けた資産のうち、政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。

損金算入の規制を受ける資産は、次の2つです。

  1. 支配日事業年度開始日に欠損等法人自らが所有している含み損資産
  2. 支配日事業年度開始日以後、他の者・関係者から適格組織再編成等により取得した含み損資産

注4-2、適格組織再編成等の定義
適格合併若しくは非適格合併で完全支配関係がある法人間の取引の損益(法法61条の11①)の適用があるもの、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配をいう。以下この条において同じ。

→ 非適格合併であっても、グループ法人税制の適用があるものは対象です。

注5、譲渡等特定事由の定義
譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他の事由

注6、譲渡等損失額の定義
その譲渡等特定事由が生じた日の属する事業年度の適用期間において生ずる特定資産の譲渡、評価換えその他の事由による「利益の額」として政令で定める金額がある場合には、その「利益の額」をマイナスした金額。

→ 譲渡等損失額は、利益の額をマイナスした後の純額です。
→ 通算制度の規制と同じです。

適格組織再編成等があった場合のみなし欠損等法人

欠損等法人がその適用期間内に自己を
・被合併法人
・分割法人
・現物出資法人又は
・現物分配法人
とする適格組織再編成等によりその有する特定資産(注1)を
その適格組織再編成等に係る合併法人等(注2)に移転した場合には、
その合併法人等を欠損等法人(第1項)とみなして、
この損金不算入規定を適用します。

注1、特定資産の限定
評価損資産(法法57条の2①)に該当するものに限る。

注2、合併法人等の定義
合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人


含み損資産の損失が損金算入できない場合に、
適格組織再編成等で含み損を実現させずに含み損資産を移転させたときは、
移転先法人が欠損等法人とみなされて、損金算入の規制を受けます。

合併法人 ← 欠損等法人とみなされる。

↑ 適格組織再編成等による含み損資産の移転

被合併法人等(=欠損等法人)

参考規定

第十目 特定株主等によつて支配された欠損等法人の資産の譲渡等損失額

第六十条の三 第五十七条の二第一項(特定株主等によつて支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用)に規定する欠損等法人(以下この項及び次項において「欠損等法人」という。)の同条第一項に規定する適用事業年度(以下この項において「適用事業年度」という。)開始の日から同日以後三年を経過する日(その経過する日が同条第一項に規定する支配日以後五年を経過する日後となる場合にあつては、同日)までの期間(当該期間に終了する各事業年度において、第六十二条の九第一項(非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の有する資産の時価評価損益)、第六十四条の十一第一項(通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益)、第六十四条の十二第一項(通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益)又は第六十四条の十三第一項(第一号に係る部分に限る。)(通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益)の規定の適用を受ける場合には、当該適用事業年度開始の日からその適用を受ける事業年度終了の日までの期間。以下この項及び次項において「適用期間」という。)において生ずる特定資産(当該欠損等法人が当該支配日の属する事業年度開始の日において有する資産及び当該欠損等法人が当該適用事業年度開始の日以後に行われる第五十七条の二第一項に規定する他の者を分割法人若しくは現物出資法人とする適格分割若しくは適格現物出資又は同項第三号に規定する関連者を被合併法人、分割法人、現物出資法人若しくは現物分配法人とする適格組織再編成等(適格合併若しくは適格合併に該当しない合併で第六十一条の十一第一項(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)の規定の適用があるもの、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配をいう。以下この条において同じ。)により移転を受けた資産のうち、政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)の譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他の事由(以下この項において「譲渡等特定事由」という。)による損失の額として政令で定める金額(当該譲渡等特定事由が生じた日の属する事業年度の適用期間において生ずる特定資産の譲渡、評価換えその他の事由による利益の額として政令で定める金額がある場合には、当該金額を控除した金額。第三項において「譲渡等損失額」という。)は、当該欠損等法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2 欠損等法人がその適用期間内に自己を被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人とする適格組織再編成等によりその有する特定資産(第五十七条の二第一項に規定する評価損資産に該当するものに限る。)を当該適格組織再編成等に係る合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人(以下この条において「合併法人等」という。)に移転した場合には、当該合併法人等を前項の規定の適用を受ける欠損等法人とみなして、この条の規定を適用する。

法人税法60条の3、特定株主等によつて支配された欠損等法人の資産の譲渡等損失額
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