今回は、「特定税額控除規定の不適用」の所得金額の要件について確認します。
目次
内容
一定の要件を満たしたときに、法人税が少なくなる「特別控除」という制度があります。特定税額控除規定の不適用制度とは、特別控除の要件を満たす場合であっても、特定税額控除規定の不適用制度の要件を満たすときは、特別控除が使用できなくなる規定です。
別表の確認
別表を確認します。
法人税別表6(7)を使用します。
特定税額控除規定の適用可否の判定に関する明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/06(07).pdf
別表の上段3つが、判定部分です。
- 継続雇用者給与等支給額に係る要件
- 国内設備投資額に係る要件
- 所得金額に係る要件
別表の中段
継続雇用者給与等支給額に係る要件の詳細を記入します。
別表の下段
当期償却費総額の計算を記入します。
規定の内容
規定を簡単に確認します。
法人()が、平成30年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度()において特定税額控除規定()の適用を受けようとする場合において、当該対象年度において次に掲げる要件(1号、2号)のいずれにも該当しないとき(2つとも非該当)()は、当該特定税額控除規定は、適用しない。
次に掲げる要件の「いずれにも該当しないとき」とあるので、
何か1つでも該当する場合は、特別控除が使用できます。
1号は継続雇用者給与等支給額に係る要件が、
2号は国内設備投資額に係る要件が規定されています。
所得金額に係る要件は、本文(各号列記以外の部分)に規定されています。
今回は、「所得金額に係る要件」を確認します。
所得金額に係る要件(各号列記以外の部分)
この部分は規定が読みづらくなっています。
下記規定の本文中に、「次に掲げる要件(1号と2号)のいずれにも該当しないとき(~政令で定める場合を除く。)」とあります。
この「政令で定める場合」に「所得金額に係る要件」が規定されています。
「政令で定める場合=所得金額に係る要件」に該当する場合は、
「いずれにも該当しないとき」から除かれるため、
特定税額控除規定の不適用の対象外となり、
特定税額控除規定の使用が可能です。
内容 | 取扱い |
---|---|
次のいずれにも該当しないとき (政令で定める場合に該当する) | 除かれるため、特定税額控除規定の不適用の対象外となります。 (特定税額控除が使用できます。) |
次のいずれにも該当しないとき (政令で定める場合に該当しない) | 除かれないため、1号と2号の判定が必要です。 |
参考規定、特定税額控除規定の不適用の規定
5 法人(第四十二条の四第十九項第七号に規定する中小企業者(同項第八号に規定する適用除外事業者又は同項第八号の二に規定する通算適用除外事業者に該当するものを除く。)又は同項第九号に規定する農業協同組合等を除く。第一号及び第二号において同じ。)が、平成三十年四月一日から令和六年三月三十一日までの間に開始する各事業年度(以下この条において「対象年度」という。)において第一項第一号、第三号、第九号、第十六号又は第十七号に掲げる規定(以下この項及び第八項において「特定税額控除規定」という。)の適用を受けようとする場合において、当該対象年度において次に掲げる要件のいずれにも該当しないとき(当該対象年度が第四十二条の十二の五第三項第一号に規定する設立事業年度(第一号イ(2)及び次項において「設立事業年度」という。)及び合併等事業年度のいずれにも該当しない場合であつて、当該対象年度の所得の金額が当該対象年度の前事業年度の所得の金額以下である場合として政令で定める場合を除く。)は、当該特定税額控除規定は、適用しない。
措置法第42条の13、法人税の額から控除される特別控除額の特例
一 省略
二 省略
正確には、対象年度が「設立事業年度」及び「合併等事業年度」の
いずれにも該当しないことが前提です。
「設立事業年度」又は「合併等事業年度」に該当する場合は、
「いずれにも該当しない」から除かれないため、
継続雇用者給与等支給額に係る要件(1号)と
国内設備投資額に係る要件(2号)を確認する必要があります。
政令で定める場合を確認します。
「42条の13、5項各号列記以外の部分」に規定する政令で定める場合
6 法第四十二条の十三第五項各号列記以外の部分に規定する政令で定める場合は、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額以下である場合とする。
措置法施行令27条の13
一 法第四十二条の十三第五項に規定する対象年度(以下この条において「対象年度」という。)の基準所得等金額(当該対象年度開始の日前一年(当該対象年度が一年に満たない場合には、当該対象年度の期間。次号において同じ。)以内に終了した各事業年度(最初課税事業年度開始の日前に終了した各事業年度及び外国法人である人格のない社団等の第十三項第二号ニに規定する収益事業から生ずるものを有することとなつた日を含む事業年度開始の日からその有することとなつた日の前日までの期間を除く。次号において「前事業年度」という。)の月数を合計した数が当該対象年度の月数に満たない場合には、当該基準所得等金額を当該対象年度の月数で除し、これに当該合計した数を乗じて計算した金額)
二 前事業年度の基準所得等金額(対象年度開始の日から起算して一年前の日を含む前事業年度にあつては、当該前事業年度の基準所得等金額を当該前事業年度の月数で除し、これに当該一年前の日から当該前事業年度終了の日までの期間の月数を乗じて計算した金額)の合計額
1号(当期の所得)≦2号(前期の所得)の場合
1号、対象年度の基準所得等金額
2号、前事業年度の基準所得等金額
前期の所得1000≧当期の所得900のように、
当期の所得が前期の所得と比較して減少している場合は、
特定税額控除規定の不適用の対象外となり、
特定税額控除規定が使用することが可能となります。
継続雇用者給与等支給額に係る要件の政令で定める要件
継続雇用者給与等支給額に係る要件の中に「当該対象年度が設立事業年度及び合併等事業年度のいずれにも該当しない場合であつて当該対象年度の前事業年度の所得の金額が零を超える場合として政令で定める場合又は当該対象年度が設立事業年度若しくは合併等事業年度に該当する場合」という規定があります。
「政令で定める場合」とは、6項2号の金額>0となる場合です。
3 法第四十二条の十三第五項第一号イ(2)に規定する政令で定める場合は、第六項第二号に掲げる金額が零を超える場合とする。
措置法施行令27条の13
6項2号の金額は、前事業年度の基準所得等金額の合計額をいいます。
規定を分解します。
1、対象年度が「設立事業年度」にも「合併等事業年度」にも該当しない場合で、前期の所得>0となる場合
又は
2、対象年度が設立事業年度OR合併等事業年度となる場合
対象年度が設立事業年度・合併等事業年度の場合の比較
設立事業年度と合併等事業年度について、
所得金額に係る要件と継続雇用者給与等支給額に係る要件を比較します。
内容 | 所得金額に係る要件 (本文→政令) | 継続雇用者給与等支給額に係る要件(1号) |
---|---|---|
規定抜粋 | 当該対象年度において次に掲げる要件のいずれにも該当しないとき(当該対象年度が第四十二条の十二の五第三項第一号に規定する設立事業年度(第一号イ(2)及び次項において「設立事業年度」という。)及び合併等事業年度のいずれにも該当しない場合であつて、当該対象年度の所得の金額が当該対象年度の前事業年度の所得の金額以下である場合として政令で定める場合を除く。) | (2) 当該対象年度が設立事業年度及び合併等事業年度のいずれにも該当しない場合であつて当該対象年度の前事業年度の所得の金額が零を超える場合として政令で定める場合 又は 当該対象年度が設立事業年度若しくは合併等事業年度に該当する場合 |
設立事業年度・合併等事業年度のいずれにも該当しない場合(一般) | 設立事業年度・合併等事業年度のいずれにも該当しないことが判定の前提となります。前期所得≧当期所得(減っている場合)は、特定税額控除規定の不適用の対象外となり、特定税額控除規定が使用することが可能となります。 | 前年所得>0(黒字)が 要件となります。 |
設立事業年度OR合併等事業年度に該当する場合(特殊) | 上記前提に該当しない(所得金額に係る要件を満たさない)ため、1号と2号の判定を行う必要があります。 | 前年所得の要件は ありません。 |
対象年度が設立事業年度か合併等事業年度に該当する場合は、
所得要件を自動的に満たしませんが、
継続雇用者給与等支給額に係る要件については、検討する必要があります。
規定の要約、継続雇用者給与等支給額に係る要件(1号)
(1)対象年度終了時の資本金の額が10億円以上で、常時使用する従業員数が1000人以上
(2)政令で定める場合にOR対象年度が設立事業年度か合併等事業年度に該当する場合(政令で定める場合は別に確認します。)
上記2つに該当する場合の判定方法
継続雇用者給与等支給額-継続雇用者「比較」給与等支給額
---------------------------->1%
継続雇用者「比較」給与等支給額
(令和4年4月1日以後に開始する事業年度の場合は、0.5%以上)
(別表の4欄から8欄を使用します。)
参考規定
合併等事業年度
6 前項に規定する合併等事業年度とは、同項に規定する法人が、合併、分割若しくは現物出資(分割又は現物出資にあつては、事業を移転するものに限る。以下この項において「合併等」という。)に係る合併法人、分割法人若しくは分割承継法人若しくは現物出資法人若しくは被現物出資法人であり、事業の譲渡若しくは譲受け(以下この項において「譲渡等」という。)に係る当該事業の移転をした法人若しくは当該事業の譲受けをした法人であり、又は特別の法律に基づく承継に係る被承継法人若しくは承継法人である場合その他政令で定める場合における当該合併等の日、当該譲渡等の日又は当該承継の日を含む事業年度その他政令で定める日を含む事業年度(当該法人の設立事業年度を除く。)をいう。
措置法42条の13
政令で定める場合
8 法第四十二条の十三第六項に規定する政令で定める場合は、同項の法人に次の各号に掲げる事実のいずれかが生じた場合とし、同項に規定する政令で定める日は、当該各号に掲げる事実の区分に応じ当該各号に定める日とする。
措置法施行令27条の13
一 法人税法第六十四条の九第一項に規定する親法人である当該法人について同項の規定による承認の効力が生じたこと その承認の効力が生じた日
二 当該法人が通算親法人との間に通算完全支配関係を有することとなつたこと その有することとなつた日
三 当該法人が通算親法人(当該法人が通算親法人である場合には、他の通算法人の全て)との間に通算完全支配関係を有しなくなつたこと その有しなくなつた日
1、グループ通算制度の承認の効力が生じたこと
2、法人が通算親法人との間に通算完全支配関係を有することとなったこと
3、法人が通算親法人との間に通算完全支配関係を有しなくなったこと