今回は、通算制度の「特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入(法法64条の14)」を確認します。同じ名前で法人税法62条の7(適格組織再編時)に規定があります。
適格組織再編時時の規定は、適格組織再編により含み損がある資産を引き継いだとしても、一定の要件に該当する含み損が実現したときは、その損失の損金算入を認めない規定です。
今回の規定は、次の通算制度の損益通算を利用した
節税の防止を目的としています。
- 含み損を有する法人を支配して通算制度を利用する。損益通算が狙い。
- 継続支配要件を満たす場合、時価評価が不要となり含み損を承継する。
- 継続支配要件を満たすが、共同事業要件を満たさない事業を行って新たな事業を開始。
- 新事業の所得と実現させた損失を通算すると節税になります。
→ 要件を満たす損失については損金不算入として節税を防止。
損金不算入の概要
カッコ書きを外します。カッコを外しても長い規定です。
通算法人(注1)が通算承認効力発生日の5年前の日又はその通算法人設立日のうちいずれか遅い日からその通算承認効力発生日まで継続してその通算法人に係る通算親法人(注2)との間に支配関係がある場合として政令で定める場合に該当しない場合(注3)で、
かつ、
その通算法人について通算承認効力発生「後」にその通算法人と他の通算法人とが共同で事業を行う場合として政令で定める場合に該当しない場合において、その通算法人がその通算法人に係る通算親法人との間に最後に支配関係を有することとなった日(注4、支配関係発生日)以後新たな事業を開始したときは、
その通算法人の適用期間(注5)において生ずる特定資産譲渡等損失額は、その通算法人の各事業年度の損金不算入となります。
カッコ書き部分
注1、通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益(法法64条の11①各号)又は通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益(法法64条の12①各号)に掲げる法人に限る。以下この項において同じ。
→ 時価評価せずに含み損を承継する法人のこと。
注2、その通算法人が通算親法人である場合には、他の通算法人のいずれか
注3、その通算法人が通算子法人である場合において、その通算法人について通算承認効力発生日から同日の属するその通算法人に係る通算親法人の事業年度終了日までの間に通算制度の取りやめ等(法法64条の10⑤⑥)の規定によりその通算承認が効力を失ったとき(注3-2)を除く。
→ 1回目の通算前に離脱する場合は除外。通算制度を利用できない。
注3-2、その通算法人を被合併法人とする合併で他の通算法人を合併法人とするものが行われたこと又はその通算法人の残余財産が確定したことに基因してその効力を失った場合を除く。
→ ただし、グループ内合併、残余財産確定の場合は除外。
→ 除外されるものから除外される(=除外されない)。
注4、その通算法人が通算親法人である場合には、他の通算法人のうちその通算法人との間に最後に支配関係を有することとなった日が最も早いものとの間に最後に支配関係を有することとなった日。以下この項・次項1号において「支配関係発生日」といいます。
→ 通算親法人は複数の通算子法人と関係を持つため、最初に関係を持った通算子法人との間に支配関係が発生した日
注5、「その通算承認効力発生日とその事業を開始した日の属する事業年度開始日とのいずれか遅い日」から「その効力が生じた日以後3年を経過する日とその支配関係発生日以後5年を経過する日とのうちいずれか早い日」までの期間をいいます。
適用期間
開始・・・通算承認効力発生日、事業開始日 → 遅い日
終了・・・通算承認効力発生日以後3年、支配関係発生日以後5年 → 早い日
が、損金算入制限期間(適用期間)となります。
通算開始と事業開始が規制要件となるため、
両方を満たすタイミングとして「遅い日」
原則として、通算承認効力発生日以後3年間が規制対象、
支配関係発生日以後5年を限度とするため「早い日」
基本は通算承認効力発生日から3年間が制限期間、
ただし、支配関係発生日から5年目が期限です。
制限対象期間
5年前-----通算承認効力発生日---3年後
↑ 支配関係の判定期間 ↑ 損金算入の制限期間
期限
支配関係発生日-----5年が限度
まとめ
ポイントは4つ。
- 時価評価除外法人に該当する(含み損を引き継ぐ法人が対象)。
- 通算開始前の一定期間、継続して支配関係がある場合に該当しない。
- 通算開始後、共同事業要件を満たさない。
- 支配関係発生以後、新たな事業を開始した。
(2~4が、節税目的の損益通算の判定)
参考規定
(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)
法人税法64条の14、特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入
第六十四条の十四 通算法人(第六十四条の十一第一項各号(通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益)又は第六十四条の十二第一項各号(通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益)に掲げる法人に限る。以下この項において同じ。)が通算承認の効力が生じた日の五年前の日又は当該通算法人の設立の日のうちいずれか遅い日から当該通算承認の効力が生じた日まで継続して当該通算法人に係る通算親法人(当該通算法人が通算親法人である場合には、他の通算法人のいずれか)との間に支配関係がある場合として政令で定める場合に該当しない場合(当該通算法人が通算子法人である場合において、当該通算法人について通算承認の効力が生じた日から同日の属する当該通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日までの間に第六十四条の十第五項又は第六項(通算制度の取りやめ等)の規定により当該通算承認が効力を失つたとき(当該通算法人を被合併法人とする合併で他の通算法人を合併法人とするものが行われたこと又は当該通算法人の残余財産が確定したことに基因してその効力を失つた場合を除く。)を除く。)で、かつ、当該通算法人について通算承認の効力が生じた後に当該通算法人と他の通算法人とが共同で事業を行う場合として政令で定める場合に該当しない場合において、当該通算法人が当該通算法人に係る通算親法人との間に最後に支配関係を有することとなつた日(当該通算法人が通算親法人である場合には、他の通算法人のうち当該通算法人との間に最後に支配関係を有することとなつた日が最も早いものとの間に最後に支配関係を有することとなつた日。以下この項及び次項第一号において「支配関係発生日」という。)以後に新たな事業を開始したときは、当該通算法人の適用期間(当該通算承認の効力が生じた日と当該事業を開始した日の属する事業年度開始の日とのうちいずれか遅い日からその効力が生じた日以後三年を経過する日と当該支配関係発生日以後五年を経過する日とのうちいずれか早い日までの期間をいう。)において生ずる特定資産譲渡等損失額は、当該通算法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。