特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入_通算制度_その2


今回は、特定資産に係る譲渡等損失額の
損金不算入(通算制度の場合)のその他の部分を確認します。

特定資産譲渡等損失額の計算

特定資産譲渡等損失額=1号ー2号

1号
通算法人が有する資産(注1)で支配関係発生日の事業年度開始日「前」から有していたもの(注2、特定資産)の譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他の事由による損失の額として政令で定める金額の合計額

2号
特定資産の譲渡、評価換えその他の事由による利益の額として政令で定める金額の合計額

注1、棚卸資産、帳簿価額が少額であるものその他の政令で定めるものを除く。

注2、これに準ずるものとして政令で定めるものを含む。


1号が損失の合計、2号が利益の合計なので、
特定資産譲渡等損失額は純額です。

対象資産は支配関係発生日「前」ではなく、その事業年度開始日「前」に有していたもので、棚卸資産等を除きます(=特定資産と定義)。この含み損がある資産(特定資産)の損失が損金算入の制限となります。ただし、反対の利益については、損失と相殺できます。

参考規定

2 前項に規定する特定資産譲渡等損失額とは、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額をいう。
一 通算法人が有する資産(棚卸資産、帳簿価額が少額であるものその他の政令で定めるものを除く。)で支配関係発生日の属する事業年度開始の日前から有していたもの(これに準ずるものとして政令で定めるものを含む。次号において「特定資産」という。)の譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他の事由による損失の額として政令で定める金額の合計額
二 特定資産の譲渡、評価換えその他の事由による利益の額として政令で定める金額の合計額

法人税法64条の14、特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入
損金不算入とならない場合

通算法人(法法64条の14①)が欠損等法人(注1)であり、かつ、適用期間(法法60条の3①)内に通算承認の効力が生じたときは、その通算法人が有する資産については、その通算承認に係る特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入(法法64条の14①)の規定は、適用されません。

注1、欠損等法人(法法60条の3①)
特定株主等によって支配された欠損等法人の資産の譲渡等損失額


順番は、欠損等法人→通算制度スタートです。
この場合は、通算制度の規制がスタートしません。

時価評価の対象とならない通算制度の開始・加入法人が欠損等法人の場合に、欠損等法人の適用期間内に通算制度がスタートしたときは、欠損等法人の譲渡等損失額の損金不算入の制限が優先されるため、通算制度の損金不算入の規定は適用されません。

欠損等法人(法法60条の3)、通算制度の場合(法法64条の14①)が重複する場合、欠損等法人の規定が優先です。

参考規定

3 第一項に規定する通算法人が第六十条の三第一項(特定株主等によつて支配された欠損等法人の資産の譲渡等損失額)に規定する欠損等法人(次項において「欠損等法人」という。)であり、かつ、同条第一項に規定する適用期間内に通算承認の効力が生じたときは、当該通算法人が有する資産については、当該通算承認に係る第一項の規定は、適用しない。

法人税法64条の14、特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入
適用期間の終了、欠損等法人の場合

通算法人(法法64条の14①)が通算承認効力発生日「以後」に欠損等法人となり、かつ、適用期間(法法60条の3①)が開始したときは、適用期間(法法64条の14①)は、適用期間(法法60条の3①)開始日の前日に終了します。


3項と4項の違い
3項の規定は、欠損等法人→通算スタート(欠損等法人が優先)
4項の規定は、通算スタート→欠損等法人

適用期間という同じで定義があるため、
「〇〇に規定する」が追加されています。

欠損等法人になった場合に適用期間がスタートしたときは、
先にスタートしている通算制度の適用期間は、
欠損等法人の適用期間がスタートした日の前日に終了します。
欠損等法人の規定が優先となります。

通算制度スタート

通算制度の適用期間スタート

通算制度の適用期間は、前日に終了します。
欠損等法人の適用期間スタート

参考規定

4 第一項に規定する通算法人が通算承認の効力が生じた日以後に欠損等法人となり、かつ、第六十条の三第一項に規定する適用期間が開始したときは、第一項に規定する適用期間は、同条第一項に規定する適用期間開始の日の前日に終了するものとする。

法人税法64条の14、特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入
適用期間の終了、特定適格組織再編成等の場合

通算法人(法法64条の14①)について通算承認効力発生日「以後」にその通算法人と支配関係法人(注1)との間でその通算法人を合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人とする特定適格組織再編成等(法法62条の7①、特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)が行われ、かつ、対象期間(法法62条の7①)が開始したときは、適用期間(法法64条の14)は、対象期間(法法62条の7①)開始日の前日に終了します。

注1、その通算法人との間に支配関係(50%超)がある法人


上記の4項と似た規定です。

4項と5項の違い
4項の規定は、通算スタート→欠損等法人
5項の規定は、通算スタート→特定適格組織再編成等

特定適格組織再編成等があった場合に対象期間がスタートしたときは、
先にスタートしている通算制度の適用期間は、
特定適格組織再編成等の対象期間がスタートした日の前日に終了します。
特定適格組織再編成等の規定が優先となります。

通算制度スタート

通算制度の適用期間スタート

通算制度の適用期間は、前日に終了します。
特定適格組織再編成等の対象期間スタート

「支配関係」なので、完全支配関係がある場合の
適格組織再編成等に限定されません。

参考規定

5 第一項に規定する通算法人について通算承認の効力が生じた日以後に当該通算法人と支配関係法人(当該通算法人との間に支配関係がある法人をいう。)との間で当該通算法人を合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人とする第六十二条の七第一項(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)に規定する特定適格組織再編成等が行われ、かつ、同項に規定する対象期間が開始したときは、第一項に規定する適用期間は、同条第一項に規定する対象期間開始の日の前日に終了するものとする。

法人税法64条の14、特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入
まとめ
  1. 支配関係事業年度開始日「前」に有する資産の含み損が規制対象となる。
  2. 先に欠損等法人の規制があるときは、欠損等法人の規制が優先される。
  3. 後から欠損等法人や特定適格組織再編成等の規制があるときは、通算制度の規制が終了する。
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