特定非常災害があった場合の消費税の届出などの特例


今回は、「特定非常災害があった場合の消費税の特例」について確認します。

内容

消費税は特例の制限が多い法律です。この制限対象中などに特定非常災害(東日本大震災や熊本地震などの大規模な災害)が生じた場合、特例の制限が解除される規定が用意されています。

新型コロナ関係については「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」があるため、特定非常災害についても別の法律があると思っていましたが、こちらは「租税特別措置法」で規定されています。

全部で13個の特例があります。最後の政令委任規定を除くと12個、課税事業者選択に関するものが6個、簡易課税制度に関するものが6個です。

  • 課税事業者を選択する場合
  • 「課税事業者を選択した場合の制限」の不適用
  • 課税事業者の選択を止める場合
  • 「新設法人・特定新規設立法人が調整対象固定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例」の不適用
  • 「高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除の特例」の不適用
  • 「高額特定資産等に係る棚卸資産の調整を受けることとなつた場合」の不適用
  • 「新設法人・特定新規設立法人の簡易課税制度選択届出書の制限」の不適用
  • 「高額特定資産を取得した場合等の簡易課税制度選択届出書の制限」の不適用
  • 「高額特定資産等に係る棚卸資産の調整を受けることとなつた場合の簡易課税制度選択届出書の制限」の不適用
  • 簡易課税制度を選択する場合
  • 「簡易課税制度を選択した場合の制限」の不適用
  • 簡易課税制度の選択を止める場合
  • その他政令
特例のまとめ

課税事業者の選択関係と簡易課税制度の選択関係をまとめると次のとおりです。

課税事業者簡易課税制度
1、選択する場合10、選択する場合
2、2年縛りの不適用11、2年縛りの不適用
3、取りやめる場合12、取りやめる場合
4、「新設法人・特定新規設立法人の納税義務の免除の特例」の不適用
7、「新設法人・特定新規設立法人の簡易課税制度選択届出書の制限」の不適用
5、「高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除の特例」の不適用8、「高額特定資産を取得した場合等の簡易課税制度選択届出書の制限」の不適用
6、「高額特定資産等の棚卸資産の調整がある場合の納税義務の免除の特例」の不適用9、「高額特定資産等に係る棚卸資産の調整を受けることとなつた場合の簡易課税制度選択届出書の制限」の不適用
各特例の比較
届出書の遡及適用に関する特例

課税事業者の選択関係の1、3と
簡易課税制度の選択関係の10、12については、
届出書の遡及適用に関する特例です。

消費税の届出書は原則として前課税期間の末日までに提出する必要がありますが、特定非常災害の特例に該当する場合は、指定日までに届出書を提出すれば、届出書が前課税期間の末日まで遡って提出したものとみなされます。

選択届出書に関する特例

課税事業者の選択関係の2と
簡易課税制度の選択関係の11については、
選択届出書に関する特例です。

特例を選択した場合は2年縛り、調整対象固定資産を取得した場合は3年縛りとなりますが、特定非常災害の特例に該当する場合は、それぞれの制限が解除されます。

新設法人・特定新規設立法人に関する特例

課税事業者の選択関係の4と
簡易課税制度の選択関係の7については、
新設法人・特定新規設立法人に関する特例です。

調整対象固定資産を取得した場合は3年縛りとなりますが、
特定非常災害の特例に該当する場合は、3年縛りが解除されます。

高額特定資産に関する特例

課税事業者の選択関係の5、6と
簡易課税制度の選択関係の8、9については、
高額特定資産に関する特例です。

高額特定資産を取得すると3年縛りとなりますが、
特定非常災害の特例に該当する場合は、3年縛りが解除されます。

課税期間短縮に関する特例はありません。

参考規定

(納税義務の免除の規定の適用を受けない旨の届出等に関する特例)
第八十六条の五 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第二条第一項の規定により特定非常災害として指定された非常災害(以下この条において「特定非常災害」という。)の被災者である事業者(消費税法第二条第一項第四号に規定する事業者をいう。以下この条において同じ。)(以下この条において「被災事業者」という。)で被災日(事業者が被災事業者となつた日をいう。以下この条において同じ。)の属する課税期間以後の課税期間につき消費税法第九条第四項の規定の適用を受けようとする者が、同項の規定による届出書を国税庁長官が当該特定非常災害の状況及び当該特定非常災害に係る国税通則法第十一条の規定による申告に関する期限の延長の状況を勘案して別に定める日(以下この条において「指定日」という。)までにその納税地を所轄する税務署長に提出したときは、当該届出書を同項の規定の適用を受けようとする課税期間の初日の前日(当該課税期間が同項に規定する事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間であつて、かつ、当該届出書が当該課税期間の末日の翌日以後に提出された場合には、当該課税期間の末日)に当該税務署長に提出したものとみなして、同項の規定を適用する。

 消費税法第九条第四項の規定による届出書を提出した事業者が被災事業者となつた場合又は被災事業者が指定日までに当該届出書を提出した場合におけるこれらの事業者の被災日の属する課税期間以後の課税期間(当該届出書の提出により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間に限る。)に係る同条第五項の規定による届出書の提出については、同条第六項及び第七項の規定は、適用しない。

 被災事業者で被災日の属する課税期間以後の課税期間につき消費税法第九条第四項の規定の適用を受けることをやめようとする者が、同条第五項の規定による届出書を指定日までにその納税地を所轄する税務署長に提出したときは、当該届出書を同条第四項の規定の適用を受けることをやめようとする課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなして、同条第八項の規定を適用する。

 消費税法第十二条の二第一項に規定する新設法人又は同法第十二条の三第一項に規定する特定新規設立法人が被災事業者となつた場合(当該新設法人又は当該特定新規設立法人が特定非常災害に係る国税通則法第十一条の規定の適用を受けた者でない場合にあつては、この項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を消費税法第十二条の二第二項又は第十二条の三第三項に規定する基準期間がない事業年度のうち最後の事業年度終了の日と指定日とのいずれか遅い日までにその納税地を所轄する税務署長に提出した場合に限る。)における当該被災事業者に係る被災日の属する課税期間以後の課税期間については、同法第十二条の二第二項(同法第十二条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。

 被災事業者が、被災日前に高額特定資産の仕入れ等を行つた場合(消費税法第十二条の四第一項に規定する高額特定資産の仕入れ等を行つた場合をいう。以下この項及び第八項において同じ。)に該当していた場合(当該被災事業者が特定非常災害に係る国税通則法第十一条の規定の適用を受けた者でない場合にあつては、この項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を当該該当していた場合における高額特定資産の仕入れ等の日(消費税法第十二条の四第一項各号に掲げる区分に応じ当該各号に定める日をいう。以下この項において同じ。)の属する課税期間の末日と指定日とのいずれか遅い日までにその納税地を所轄する税務署長に提出した場合に限る。)又は被災日から指定日以後二年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に高額特定資産の仕入れ等を行つた場合に該当することとなつた場合(当該被災事業者が特定非常災害に係る国税通則法第十一条の規定の適用を受けた者でない場合にあつては、この項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を当該該当することとなつた場合における高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の末日と指定日とのいずれか遅い日までにその納税地を所轄する税務署長に提出した場合に限る。)における当該被災事業者の被災日の属する課税期間以後の課税期間(当該高額特定資産の仕入れ等を行つた場合に該当することにより消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間に限る。)については、消費税法第十二条の四第一項の規定は、適用しない。

 被災事業者が、被災日前に消費税法第十二条の四第一項に規定する高額特定資産である同法第二条第一項第十五号に規定する棚卸資産若しくは同項第十一号に規定する課税貨物又は同法第十二条の四第二項に規定する調整対象自己建設高額資産について同法第三十六条第一項又は第三項の規定の適用を受けることとなつた場合(以下この項及び第九項において「高額特定資産等に係る棚卸資産の調整を受けることとなつた場合」という。)(当該被災事業者が特定非常災害に係る国税通則法第十一条の規定の適用を受けた者でない場合にあつては、この項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を高額特定資産等に係る棚卸資産の調整を受けることとなつた場合に該当することとなつた日の属する課税期間の末日と指定日とのいずれか遅い日までにその納税地を所轄する税務署長に提出した場合に限る。)又は被災日から指定日以後二年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に高額特定資産等に係る棚卸資産の調整を受けることとなつた場合に該当することとなつた場合(当該被災事業者が特定非常災害に係る国税通則法第十一条の規定の適用を受けた者でない場合にあつては、この項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を当該該当することとなつた日の属する課税期間の末日と指定日とのいずれか遅い日までにその納税地を所轄する税務署長に提出した場合に限る。)における当該被災事業者の被災日の属する課税期間以後の課税期間(当該高額特定資産等に係る棚卸資産の調整を受けることとなつた場合に該当することにより消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間に限る。)については、消費税法第十二条の四第二項の規定は、適用しない。

 消費税法第十二条の二第一項に規定する新設法人又は同法第十二条の三第一項に規定する特定新規設立法人が被災事業者となつた場合における当該被災事業者の被災日の属する課税期間以後の課税期間に係る同法第三十七条第一項の規定による届出書の提出については、同条第三項(第二号に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。

 被災事業者が、被災日前に高額特定資産の仕入れ等を行つた場合に該当していた場合又は被災日から指定日以後二年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に高額特定資産の仕入れ等を行つた場合に該当することとなつた場合における当該被災事業者の被災日の属する課税期間以後の課税期間(当該高額特定資産の仕入れ等を行つた場合に該当することにより消費税法第三十七条第一項の規定の適用を受けることができないこととなる課税期間に限る。)に係る同項の規定による届出書の提出については、同条第三項(第三号に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。

 被災事業者が、被災日前に高額特定資産等に係る棚卸資産の調整を受けることとなつた場合に該当していた場合又は被災日から指定日以後二年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に高額特定資産等に係る棚卸資産の調整を受けることとなつた場合に該当することとなつた場合における当該被災事業者の被災日の属する課税期間以後の課税期間(当該高額特定資産等に係る棚卸資産の調整を受けることとなつた場合に該当することにより消費税法第三十七条第一項の規定の適用を受けることができないこととなる課税期間に限る。)に係る同項の規定による届出書の提出については、同条第三項(第四号に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。

10 被災事業者で被災日の属する課税期間以後の課税期間につき消費税法第三十七条第一項の規定の適用を受けようとする者が、同項の規定による届出書を指定日までにその納税地を所轄する税務署長に提出したときは、当該届出書を同項の規定の適用を受けようとする課税期間の初日の前日(当該課税期間が同項に規定する事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間であつて、かつ、当該届出書が当該課税期間の末日の翌日以後に提出された場合には、当該課税期間の末日)に当該税務署長に提出したものとみなして、同項の規定を適用する。

11 消費税法第三十七条第一項の規定による届出書を提出した事業者が被災事業者となつた場合又は被災事業者が指定日までに当該届出書を提出した場合におけるこれらの事業者の被災日の属する課税期間以後の課税期間(当該届出書の提出により同項の規定の適用を受けることとなる課税期間に限る。)に係る同条第五項の規定による届出書の提出については、同条第六項の規定は、適用しない。

12 被災事業者で被災日の属する課税期間以後の課税期間につき消費税法第三十七条第一項の規定の適用を受けることをやめようとする者が、同条第五項の規定による届出書を指定日までにその納税地を所轄する税務署長に提出したときは、当該届出書を同条第一項の規定の適用を受けることをやめようとする課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなして、同条第七項の規定を適用する。

13 第十項又は前項の届出書を提出した被災事業者がその提出前に消費税法第四十三条第一項各号に掲げる事項を記載した申告書を提出している場合におけるこれらの規定の適用その他前各項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

租税特別措置法

(特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定)
第二条 著しく異常かつ激甚な非常災害であって、当該非常災害の被害者の行政上の権利利益の保全等を図り、又は当該非常災害により債務超過となった法人の存立、当該非常災害により相続の承認若しくは放棄をすべきか否かの判断を的確に行うことが困難となった者の保護、当該非常災害に起因する民事に関する紛争の迅速かつ円滑な解決若しくは当該非常災害に係る応急仮設住宅の入居者の居住の安定に資するための措置を講ずることが特に必要と認められるものが発生した場合には、当該非常災害を特定非常災害として政令で指定するものとする。この場合において、当該政令には、当該特定非常災害が発生した日を特定非常災害発生日として定めるものとする。

特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律
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