特定非常災害に係る雑損失の繰越控除の特例


今回は、改正予定の「特定非常災害に係る雑損失の繰越控除の特例」を確認します。

内容

家財などが災害・盗難・横領により損失が生じた場合には、
その損失を損失が生じた年分の所得からマイナスすることが可能です。
「雑損控除」といいます。

マイナスしきれない損失については、
3年間の繰越しが可能です。「雑損失の繰越控除」といいます。

今回改正される内容は、特定非常災害の損失については、
雑損失の繰越控除の繰越期間を3年ではなく5年に延長するものです。

改正後の雑損失の繰越控除

過去3年間に生じた家財などの損失(雑損失の金額)で
一般の雑損失の金額(特定雑損失金額以外のもの)と
過去5年間に生じた特定雑損失金額は、
確定申告書を提出する年分の所得からマイナスが可能となります。

上記の特例を使用する場合は、
損失が生じた年分の確定申告書を提出し、
その後連続して確定申告書を提出する必要があります。
確定申告書を提出しないと使えません。

特定雑損失金額

雑損失の金額のうち、
本人・生計一親族の家財などの資産で、
特定非常災害による損失の金額特定非常災害関連支出-受け取った保険金等
を「特定雑損失金額」といいます。

考え方

雑損失が生じた年分の計算は、雑損控除(所得控除)で
損失が生じた年分の所得からマイナスします。

マイナスしきれた場合は、
一般の雑損失の金額も特定雑損失金額も生じません。

マイナスしきれない場合に、雑損失の金額が生じます。
この雑損失の金額うち、特定雑損失金額については3年ではなく、
5年繰越しとなります。

留意点

特定雑損失金額の方が繰越期間が長くなるため、計算順序としては、
雑損控除の計算で、一般分と特定分を分けて、
一般の雑損控除(3年繰越し)→特定の雑損控除(5年繰越し)の順で
計算するのでしょう。

雑損控除の計算イメージ
本年分の所得 2,000,000円、盗難による損失 100,000円、
特定非常災害による損失 4,900,000円の場合

1、損失の金額
 1、一般分 100,000円
 2、特定分 4,900,000円
 3、1+2=5,000,000円
2、負担額
 2,000,000円(所得)×10%=200,000円
3、雑損控除
1、一般分
2,000,000円(所得)-100,000円(一般雑損失)=1,900,000円(所得)
2、特定分
1,900,000円(所得)-4,900,000円(特定雑損失)=△3,000,000円(5年繰越し)

2023/6/6、上記の計算では負担額が考慮されていません。
特定分を多く残す場合は、次の計算となります。

一般分
損失の金額100,000円-負担額100,000円=損失の金額0円(3年繰越し)

特定分
損失の金額4,900,000円-(負担額200,000円-一般分100,000円=100,000円)
=損失の金額4,800,000円(5年繰越し)

参考規定、所得税法施行令206条第4項
同一年に、他の損失金額と特定非常災害により生じた損失の金額が発生した場合における雑損失の金額は、特定非常災害により生じた損失の金額から順次なるものとする。

参考法案

特定非常災害に係る雑損失の繰越控除の特例

第七十一条の二
確定申告書を提出する居住者が特定雑損失金額を有する場合には、当該特定雑損失金額の生じた年の翌年以後五年内の各年分における前条の規定の適用については、同条第一項中「雑損失の金額(」とあるのは「雑損失の金額で特定雑損失金額(次条第一項に規定する特定雑損失金額をいう。以下この項において同じ。)以外のもの(」と、「除く。)は」とあるのは「除く。)及び当該居住者のその年の前年以前五年内において生じた特定雑損失金額(この項又は同条第一項の規定により前年以前において控除されたものを除く。)は」とする。

所得税法の一部改正

特定雑損失金額の定義

第七十一条の二
2 前項に規定する特定雑損失金額とは、雑損失の金額のうち、居住者又はその者と生計を一にする配偶者その他の親族で政令で定めるものの有する次条第一項に規定する資産について特定非常災害により生じた損失の金額(当該特定非常災害に関連するその居住者によるやむを得ない支出で政令で定めるものの金額を含むものとし、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補塡される部分の金額を除く。)に係るものをいう。

所得税法の一部改正

読み替え規定

(雑損失の繰越控除)
第七十一条 確定申告書を提出する居住者のその年の前年以前三年内の各年において生じた雑損失の金額で特定雑損失金額(次条第一項に規定する特定雑損失金額をいう。以下この項において同じ。)以外のものこの項又は次条第一項の規定により前年以前において控除されたものを除く。)及び当該居住者のその年の前年以前五年内において生じた特定雑損失金額(この項又は同条第一項の規定により前年以前において控除されたものを除く。)、政令で定めるところにより、当該申告書に係る年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算上控除する。
2 前項の規定は、同項の居住者が雑損失の金額が生じた年分の所得税につき確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合に限り、適用する。
3 第一項の規定による控除は、雑損失の繰越控除という。

所得税法
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