独立企業間価格の定義を確認してみよう。


今回は、移転価格税制の独立企業間価格の定義を確認してみましょう。

規定の概要

今回確認する規定は、こちらです。

2 前項に規定する独立企業間価格とは、国外関連取引が次の各号に掲げる取引のいずれに該当するかに応じ当該各号に定める方法のうち、当該国外関連取引の内容及び当該国外関連取引の当事者が果たす機能その他の事情を勘案して、当該国外関連取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従つて行われるとした場合に当該国外関連取引につき支払われるべき対価の額を算定するための最も適切な方法により算定した金額をいう。
一 棚卸資産の販売又は購入 次に掲げる方法
イ 独立価格比準法(特殊の関係にない売手と買手が、国外関連取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階、取引数量その他が同様の状況の下で売買した取引の対価の額(当該同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階、取引数量その他に差異のある状況の下で売買した取引がある場合において、その差異により生ずる対価の額の差を調整できるときは、その調整を行つた後の対価の額を含む。)に相当する金額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法をいう。)
ロ 再販売価格基準法(国外関連取引に係る棚卸資産の買手が特殊の関係にない者に対して当該棚卸資産を販売した対価の額(以下この項において「再販売価格」という。)から通常の利潤の額(当該再販売価格に政令で定める通常の利益率を乗じて計算した金額をいう。)を控除して計算した金額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法をいう。)
ハ 原価基準法(国外関連取引に係る棚卸資産の売手の購入、製造その他の行為による取得の原価の額に通常の利潤の額(当該原価の額に政令で定める通常の利益率を乗じて計算した金額をいう。)を加算して計算した金額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法をいう。)
ニ イからハまでに掲げる方法に準ずる方法その他政令で定める方法
二 前号に掲げる取引以外の取引 同号イからニまでに掲げる方法と同等の方法

租税特別措置法第66条の4第2項、令和7年10月1日施行

箇条書きします。
・国外関連取引の内容や事情を勘案
・第3者間取引と仮定した場合の対価の額を算定
・算定方法は、複数あるため最も適切な方法を選択
した金額を「独立企業間価格」といいます。

大きく分けると次の2つです。
1、棚卸資産の販売・購入
2、1以外

1は、さらに次の4つに分かれます。
イ、独立価格比準法
ロ、再販売価格基準法
ハ、原価基準法
ニ、準ずる方法・政令で定める方法

2は、上記4つの方法と同等の方法です。

独立価格比準法

独立価格比準法の定義を見てみましょう。

イ 独立価格比準法(特殊の関係にない売手と買手が、国外関連取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階、取引数量その他が同様の状況の下で売買した取引の対価の額(当該同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階、取引数量その他に差異のある状況の下で売買した取引がある場合において、その差異により生ずる対価の額の差を調整できるときは、その調整を行つた後の対価の額を含む。)に相当する金額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法をいう。)

特殊の関係にない(50%以上の支配関係がない)売り手と買い手が、取引した場合の対価の額(通常の取引価格)と比べる方法です。

カッコ書きの内容
取引条件の差異が調整できる場合は、調整後の対価の額も含まれます。

再販売価格基準法

再販売価格基準法の定義を見てみましょう。

ロ 再販売価格基準法(国外関連取引に係る棚卸資産の買手が特殊の関係にない者に対して当該棚卸資産を販売した対価の額(以下この項において「再販売価格」という。)から通常の利潤の額(当該再販売価格に政令で定める通常の利益率を乗じて計算した金額をいう。)を控除して計算した金額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法をいう。)

「国外関連取引に係る棚卸資産の買手が」とありますので、買い手の立場から計算する方法です。

算式
・再販売価格-通常の利潤の額=国外関連取引の対価の額
・再販売価格×通常の利益率=通常の利潤の額

買い手が特殊の関係のない者(売り手)に棚卸資産を販売した対価の額を「再販売価格」といいます。

計算イメージ
・再販売価格 100
・通常の利益率 10%

1、再販売価格 100
2、通常の利潤の額 再販売価格(100)×通常の利益率(10%)=10
3、国外関連取引の対価の額 1-2=90

通常の利益率については、政令(法人税法施行令)に規定されています。

原価基準法

原価基準法の定義を見てみましょう。

ハ 原価基準法(国外関連取引に係る棚卸資産の売手の購入、製造その他の行為による取得の原価の額に通常の利潤の額(当該原価の額に政令で定める通常の利益率を乗じて計算した金額をいう。)を加算して計算した金額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法をいう。)

「国外関連取引に係る棚卸資産の売手の」とありますので、売り手の立場から計算する方法です。

算式
・原価の額+通常の利潤の額=国外関連取引の対価の額
・原価の額×通常の利益率=通常の利潤の額

計算イメージ
・原価の額 80
・通常の利益率 10%

1、原価の額 80
2、通常の利潤の額 原価の額(80)×通常の利益率(10%)=8
3、国外関連取引の対価の額 1+2=88

通常の利益率については、政令(法人税法施行令)に規定されています。
(再販売価格基準法の通常の利益率と別の規定です。)

準ずる方法・政令で定める方法

ニの「イからハまでに掲げる方法に準ずる方法」は、
イ、独立価格比準法
ロ、再販売価格基準法
ハ、原価基準法
に準ずる方法です。

政令(法人税法施行令)で定める方法は、第1号から第7号までの7つが規定されています。

参考情報

財務省の移転価格税制の概要を確認しますと、
1、取引単位営業利益法
2、利益分割法
2-1、比較利益分割法
2-2、寄与度利益分割法
2-3、残余利益分割法
3、ディスカウント・キャッシュ・フロー法
の6つが記載されています。

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