生計一親族に対する対価の取扱い


今回は、生計を一にする親族に給料や賃借料を
支払った場合の特例を確認します。

内容

例えば、父が第3者から1,000万円で事務所や土地を借りて、
子に1200万円で転貸した場合

1、父が第3者に支払った1000万円は、父の経費になるのでしょうか?
2、子が父に支払った1200万円は、子の経費になるのでしょうか?
3、父が子から受け取った1200万円は、父の収入になるのでしょうか?

父と子が生計を一(サイフが同じ、せいけいをいつ、と読みます。)
にする場合、次の4つの特例があります。

1、子の取扱い

A、子が父に支払った賃借料1200万円については、
子の必要経費になりません。

B、父が第3者に支払った賃借料1000万円については、
子の必要経費になります。

2、父の取扱い

A、父が第3者に支払った賃借料1000万円については、
父の必要経費になりません。

B、父が子から受け取った賃貸料1200万円については、
ないものとして扱われます。

まとめ

上記の特例をまとめると次のとおりです。

内容父の計算子の計算
総収入金額1200万円(2-B)
必要経費1000万円(2-A)1200万円(1-A)
→ 1000万円(1-B)
所得金額200万円△1200万円
→ △1000万円
必要経費の特例
消費税の取扱いについて

上記の特例はあくまでも所得税の特例ですので、
消費税の計算では生計一か生計別かに関係なく、そのままの金額で計算します。

仮に、父の収入1200万円が課税売上げに該当する場合、
消費税の納税義務が生じますので、インボイス登録の検討が必要です。

参考規定

(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)
第五十六条 居住者<子>と生計を一にする配偶者その他の親族<父>がその居住者<子>の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価<賃貸料>の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額<1,200万円>は、その居住者<子>の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族<父>のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額<1,000万円>は、その居住者<子>の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族<父>が支払を受けた対価の額<1,200万円>及びその親族<父>のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額<1,000万円>は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。

カッコは筆者追加

所得税法

上記の事例をあてはめてみると、

父が子から賃貸料を受け取る場合には、
子の賃借料1,200万円は子の必要経費に算入しないで、
父が支払った賃借料1,000万円は、子の必要経費に算入します。

この場合に、父が受け取った賃貸料1200万円と
父が支払った賃借料1000万円は、ないものとして取扱います。

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