留保金課税の留保金額の調整_通算法人から配当金を受け取った場合(法令139条の8第1項)


今回は、留保金課税の留保金額の調整のうち、
通算法人から配当金を受け取った場合(法人税法施行令139条の8第1項)を
確認します。

内容

規定(法令139条の8第1項)をまとめると

特定同族会社である通算法人が
その事業年度に配当等を他の通算法人から受ける場合には、
留保金額は、調整前の留保金額から
配当等のうち益金算入金額をマイナスします。

益金算入額をマイナス?
他の通算法人から受け取った配当金は、
要件を満たせば100%益金不算入になるような。

ということで、考えてみます。

検討

通算法人が他の通算法人から受け取った配当金100のみの場合

別表4、受取配当等の益金不算入を適用した場合

区分総額留保社外
当期利益1001000
受取配当等の益金不算入△100※100
課税所得0100※100
別表4、適用あり

受取配当金100が当期利益100となり、
益金不算入の調整で課税所得は0となります。
益金不算入の調整は留保ではなく※100(社外の反対100)となるため、
課税所得は0、留保金額は100となります。

次に留保金課税で計算する「所得等の金額」を計算します。
1、所得の金額(留保) 100
2、受取配当等の益金不算入により益金不算入となる金額 0
(通算法人の場合は、除外されるため100ではなく0)
1+2=100が所得等の金額(調整前の留保金額)となります。

調整前の留保金額100-通算法人から受け取った配当等100(益金算入相当額)
調整後の留保金額0となります。

整理すると

通算法人から受け取った配当金であっても、
所得の金額の計算上、益金算入額も留保金額も100です。

受取配当等の益金不算入の規定により益金不算入100となりますが、
要件を満たす必要があるため、必ず益金不算入となるものではありません。
(例えば、手続き要件を満たさない場合)

この場合、次の2つを考えます。
1、益金不算入となる場合は、益金算入していないためマイナスしない。
2、益金不算入とならない場合も、一度益金算入しているためマイナスする。

受取配当等の益金不算入は任意規定のため、
適用しなかった場合の別表4などを考えてみます。

別表4、受取配当等の益金不算入を適用しなかった場合

区分総額留保社外
当期利益1001000
受取配当等の益金不算入
課税所得1001000
別表4、適用なし

受取配当等の益金不算入を適用しても適用しなくても、留保金額は100です。

次に留保金課税で計算する「所得等の金額」を計算します。
1、所得の金額(留保) 100
2、受取配当等の益金不算入により益金不算入となる金額 0
(通算法人の場合は、除外されるため100ではなく0)
1+2=100が所得等の金額(調整前の留保金額)となります。

調整前の留保金額100-通算法人から受け取った配当等100(益金算入相当額)調整後の留保金額0となります。

「2、益金不算入とならない場合も、一度益金算入しているためマイナスする。」と読むのでしょう。

別表3(1)付表2
通算法人の留保金額又は所得基準額の調整計算に関する明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/03(01)-f2.pdf

8欄の「通算法人間配当等の当期受取額」に記入するのでしょう。

参考規定など

配当金に関する仕訳

P社S社
現金100 / 受取配当金100
      (益金算入)
→ 留保金額の計算上、マイナス
支払配当金100 / 現金100
(繰越利益剰余金)
配当金の仕訳

留保金額から控除する金額等

(留保金額から控除する金額等)
第百三十九条の八 法第六十七条第一項(特定同族会社の特別税率)に規定する特定同族会社(以下この条において「特定同族会社」という。)である通算法人が当該事業年度(当該通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限る。)において法第二十三条第一項(受取配当等の益金不算入)に規定する配当等の額(法第二十四条第一項第一号から第四号まで(配当等の額とみなす金額)(同号にあつては、解散による残余財産の分配に係る部分に限る。)に掲げる事由により法第二十三条第一項第一号に掲げる金額とみなされる金額を除く。以下この項及び次条において「配当等の額」という。)を他の通算法人(当該配当等の額に係る基準日等(第二十二条第二項第二号(関連法人株式等の範囲)に規定する基準日等をいう。第三項及び次条において同じ。)及び当該事業年度終了の日において当該通算法人との間に通算完全支配関係があるものに限る。)から受ける場合には、当該通算法人における当該事業年度の法第六十七条第三項に規定する留保金額は、同項に規定する合計額を控除した金額から当該配当等の額のうち当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される金額に相当する金額を控除した金額とする。

法人税法施行令139条の8
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