留保金課税の留保金額の調整_通算法人から配当金を受け取った場合(法人税法施行令139条の9)


今回は、特定同族会社の特別税率(留保金課税)のうち、
通算法人から配当金を受け取った場合(法人税法施行令139条の9)を
確認します。

内容

通算法人から配当金を受け取った場合、留保金額の調整とは別に、
留保控除額(所得等の金額)の調整も必要となります。

調整項目をまとめると次の3つです。
(他にもあると思いますがとりあえず)
1、留保金額の控除(法令139条の8第1項)
2、留保控除額の所得等の金額から除外する(法令139条の9)
3、配当金の期ズレの調整から除外する(法令140条)

今回は、2の所得等の金額の調整を確認します。

所得等の金額は、所得の金額に一定の加減算の調整します。
所得の金額には「受取配当等の益金不算入額」をプラスしますが、
通算法人から受け取った配当金については、プラスしません。

規定を確認します。

二 第二十三条(受取配当等の益金不算入)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されなかつた金額(特定同族会社が通算法人である場合には、他の通算法人から受ける同条第一項に規定する配当等の額に係るもののうち政令で定めるものを除く。)

法人税法67条3項2号

政令を確認します。

(他の通算法人から受ける配当等の額)
第百三十九条の九 法第六十七条第三項第二号(特定同族会社の特別税率)に規定する政令で定めるものは、同条第一項に規定する特定同族会社である通算法人が当該事業年度(当該通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限る。)において受ける配当等の額のうちその基準日等及び当該事業年度終了の日において当該通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人から受けるものに係るものとする。

法人税法施行令

規定をまとめると
特定同族会社である通算法人が
その事業年度において受ける配当等の額のうち、
その基準日等「及び」その事業年度終了日において
その通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人から受けるもの
については、所得等の金額に加算しません。

「及び」とあるため、その基準日等と事業年度終了日の「両方」で、
通算完全支配関係が要件となります。

別表の記載

別表3(1)付表1
特定同族会社の留保金額から控除する留保控除額の計算に関する明細書
を使用します。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/03(01)-f1.pdf

受取配当等の益金不算入額については、
11欄の「受取配当等の益金不算入額 に記載しますが、
通算法人から受け取った配当金については除外して記載します。

受取配当等の益金不算入を適用しなかった場合

留保金額の調整では、受取配当等の益金不算入の適用の有無に関係なく
調整前の留保金額からマイナスします。
今回の留保控除額の計算でも考察してみます。

前提
通算法人が他の通算法人から配当金1000を受け取った場合

受取配当等の益金不算入を適用した場合

別表4

内容1、総額2、留保3、社外
当期利益100010000
受取配当等の益金不算入額△10000※1000
課税所得01000※1000
別表4

留保金額の調整

受取配当金1000が留保金額1000に含まれているため、
留保金額からマイナスして0になります。

留保金額の計算

所得の金額については、受取配当等の益金不算入を適用しているため
課税所得は0になります。受取配当等の益金不算入を足し戻さないため、
所得等の金額は0になります。

留保金額の計算
(法令139条の9)
留保金額の調整
(法令139条の8第1項)
所得等の金額0=
所得の金額0+受取配当等の益金不算入額0(通算法人間配当等を除く)
留保金額0=
調整前の留保金額1000-益金算入額1000
規定の比較
受取配当等の益金不算入を適用しなかった場合

別表4

内容1、総額2、留保3、社外
当期利益100010000
受取配当等の益金不算入額000
課税所得100010000
別表4

留保金額の調整

受取配当金1000が留保金額1000に含まれているため、
留保金額からマイナスして0になります。

留保金額の計算

所得の金額については、受取配当等の益金不算入を適用していないため、
課税所得は1000になります。受取配当等の益金不算入を足し戻さないため、
所得等の金額も1000になります。

留保金額の計算
(法令139条の9)
留保金額の調整
(法令139条の8第1項)
所得等の金額1000=
所得の金額1000+受取配当等の益金不算入額0(通算法人間配当等を除く)
留保金額0=
調整前の留保金額1000-益金算入額1000
規定の比較

整理すると
受取配当等の益金不算入の有無で所得の金額(所得等の金額)は変わりますが、
留保した金額については変わらない(益金算入されている)ため、
調整した後の留保金額も変わらないということなのでしょうね。

内容益金不算入適用あり益金不算入適用なし
所得等の金額
1号~6号の合計額-7号
01000
所得等の金額のうち
留保した金額
1000(現金1000が手元にある)1000(現金1000が手元にある)
留保金額の調整1000-1000=01000-1000=0
まとめ
参考規定

留保金額の定義

3 第一項に規定する留保金額とは、所得等の金額(第一号から第六号までに掲げる金額の合計額から第七号に掲げる金額を減算した金額をいう。第五項において同じ。)のうち留保した金額から、当該事業年度の所得の金額につき前条第一項、第二項及び第六項並びに第六十九条第十九項の規定により計算した法人税の額と当該事業年度の地方法人税法第九条第二項(課税標準)に規定する課税標準法人税額(同法第六条第一号(基準法人税額)に定める基準法人税額に係るものに限る。)につき同法第十条(税率)及び第十二条第九項(外国税額の控除)(同条第十三項において準用する場合を含む。)の規定により計算した地方法人税の額とを合計した金額(次条から第七十条まで(税額控除)並びに同法第十二条第一項及び第八項(同条第十三項において準用する場合を含む。)並びに第十三条(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う地方法人税額の控除)の規定による控除をされるべき金額がある場合には、当該金額を控除した金額)並びに当該法人税の額に係る地方税法の規定による道府県民税及び市町村民税(都民税を含む。)の額として政令で定めるところにより計算した金額の合計額を控除した金額をいう。
一 当該事業年度の所得の金額(第六十二条第二項(合併及び分割による資産等の時価による譲渡)に規定する最後事業年度にあつては、同項に規定する資産及び負債の同項に規定する譲渡がないものとして計算した場合における所得の金額)
二 第二十三条(受取配当等の益金不算入)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されなかつた金額特定同族会社が通算法人である場合には、他の通算法人から受ける同条第一項に規定する配当等の額に係るもののうち政令で定めるものを除く。

法人税法67条

留保控除額の定義

5 第一項に規定する留保控除額とは、次に掲げる金額のうち最も多い金額をいう。
一 当該事業年度の所得等の金額(第六十四条の五第一項(損益通算)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額がある場合には当該金額を加算した金額とし、同条第三項の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される金額がある場合には当該金額を控除した金額とする。)の百分の四十に相当する金額
二 年二千万円
三 当該事業年度終了の時における利益積立金額(当該事業年度の所得等の金額に係る部分の金額を除く。)がその時における資本金の額又は出資金の額の百分の二十五に相当する金額に満たない場合におけるその満たない部分の金額に相当する金額

法人税法67条
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