留保金課税の留保金額の調整_通算法人に配当金を支払った場合(法令139条の8第2項)_その2


今回は、留保金課税の留保金額の調整のうち、
通算法人に配当金を支払った場合(法令139条の8第2項)のうち、
「通算外配当等流出配賦額」を確認します。

内容

留保金課税については各社で計算しますが、「通算外配当等流出配賦額」については通算グループ全体で計算します。通算外配当等流出配賦額は、「グループ通算外に支払った配当金の負担を配賦する」という意味なのでしょう。

通算外配当等流出配賦額の内容

以下、計算イメージを掴むための説明となります。

通算外配当等流出配賦額を計算する際、
配当金をグループ外に支払った法人(通常は親法人)
配当金をグループ内から受け取った法人(親法人・子法人)
配当金をグループ内に支払った法人(子法人)が登場します。

例えば、次の通算グループの場合

P社は、S1社の株式とS2社の株式を100%所有している。
S1社は、S3社の株式を40%所有している。
S2社は、S3社の株式を60%所有している。

P社(特定同族会社)
↓ 100%  ↓ 100%
S1社    S2社
↓ 40%   ↓ 60%
    S3社

配当金の状況

P社
P社株主に配当金25,000を支払った。
S1社から配当金3,000、S2社から配当金8,000を受け取った。

S1社
S3社から配当金4,000を受け取り、P社に配当金3,000を支払った。

S2社
S3社から配当金6,000を受け取り、P社に配当金8,000を支払った。

S3社
S1社に配当金4,000、S2社に配当金6,000を支払った。

内容P社S1社S2社S3社合計
外部に支払い25,00025,000
内部から受取り計 11,000
S1、3000
S2、8000
S3、4000S3、600021,000
内部に支払いP、3,000P、8,000計 10,000
S1、4000
S2、6000
21,000
支払配当金の状況

P社はグループ外に25,000支払っていますが、
グループ内から11,000受け取っています。
相殺すると14,000をグループ外に支払っています。

S1社のグループ外の支払いはありません。
グループ内に3000支払っていますが、
グループ内から4000受け取っています。
純額でグループ内から1000受け取っています。

S2社のグループ外の支払いはありません。
グループ内に8000支払っていますが、
グループ内から6000受け取っています。
純額でグループ内に2000支払っています。

S3社のグループ外の支払いはありません。
グループ内に10,000支払っています。
グループ内からの受取りはありません。
純額でグループ内に10,000支払っています。

純額を整理します。

内容P社S1社S2社S3社合計
純額△14,000+1,000△2,000△10,000△25,000
配当金の負担額

グループ全体の支払配当金は26,000ですが、
グループ外の支払配当金は25,000で、
1000(=26,000-25,000)がグループ内に残っているため、
配当金の負担額を調整する必要があるのでしょうね。

通算外配当等流出配賦額の計算

細かい計算過程は省略します。
実際には、「別表3(1)付表2、通算法人の留保金額又は所得基準額の調整計算に関する明細書」などを使用します。

P社
外部に支払った配当金25,000のうち、内部から受け取った11,000を
マイナスした14,000をP社が負担していますので14,000となります。

S1社
受け取った金額の方が多いので、0となります。

S2社
純額でグループ内に2,000支払っていますが、
一部S1に残っているため調整します。

外部に支払った配当金25,000のうち
P社が負担した14,000をマイナスすると11,000となります。

11,000をS2とS3が併せて12,000負担しているため、
それぞれの負担割合に応じて11,000を配賦します。

11,000×負担割合16.67%=1,833となります。

         S2 2,000    
負担割合16.67%=-------------
         S2 2,000 + S3 10,000

S3社
純額でグループ内に10,000支払っていますが、
一部S1社に残っているため調整します。

11,000×負担割合83.33%=9,167となります。

         S3 10,000   
負担割合83.33%=-------------
         S2 2,000 + S3 10,000

それぞれの通算外配当等流出配賦額を合計すると
P社14,000+S1社0+S2社1,833+S3社9,167=25,000となります。

規定と別表の関係

規定と別表の記入欄を確認します。

別表3(1)付表2
「通算法人の留保金額又は所得基準額の調整計算に関する明細書」を使用します。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/03(01)-f2.pdf

26欄、通算外配当等流出配賦額
=イの金額×負担割合+ニの金額
負担割合=ロの金額÷ハの金額


イの金額

各通算法人の通算外配当等流出額(外部支払い)のうち、各通算法人が発行済株式等を有する他の通算法人の通算内配当等の額(内部受取り)(注)に達するまでの金額
注、通算内配当等の額(内部支払い)がある場合はマイナス

18欄(内部受取り)-4欄(内部支払い)
=19欄、通算内配当等受取超過額(内部受取りが多い)

3欄(外部支払い)と19欄(内部純受取り)を比較して少ない金額が、
20欄の「調整」通算外配当等流出額となります。

21欄は、他社の20欄の合計です。
自社の20欄+他社合計の21欄でグループ全体の合計額となります。
26欄(通算外配当等流出配賦額)の計算で使用します。


ロの金額(割合の分子)

4欄、通算法人の通算内配当等の額(内部支払い)-
18欄、他の通算法人の通算内配当等の額(内部受取り)
=22欄、純通算内配当等の額(内部支払いが多い)

23欄は、他社の22欄の合計です。


ハの金額(割合の分母)

各通算法人の純通算内配当等の額の「合計額」
ロの金額を合計したものです。
ロ(22欄)÷ハ(22欄+23欄)=24欄の割合となります。


ニの金額(外部支払いが多い)

通算法人の通算外配当等流出額(外部支払い)のうち、その通算法人が発行済株式等を有する他の通算法人の通算内配当等の額(内部受取り)(注)を超える部分の金額
注、内部に支払った配当金はマイナスします。

3欄(外部支払い)-19欄、通算内配当等受取超過額(内部純受取り)
=25欄(通算外配当等流出超過額)となります。

参考規定

通算法人が配当金を支払った場合の留保金額の調整

 特定同族会社である通算法人が当該事業年度(当該通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限る。)において剰余金の配当若しくは利益の配当をし、又は特定同族会社である通算法人に当該事業年度(当該通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限る。)において法第二十四条第一項各号に掲げる事由が生じた場合には、これらの通算法人における当該事業年度の法第六十七条第三項に規定する留保金額は、同項に規定する合計額を控除した金額にこれらの通算法人の通算外配当等流出額及び通算内配当等の額を加算した金額からこれらの通算法人の通算外配当等流出配賦額を減算した金額とする。

法人税法施行令139条の8

通算外配当等流出配賦額の計算

3 前項及びこの項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
三 通算外配当等流出配賦額 イに掲げる金額にロに掲げる金額がハに掲げる金額のうちに占める割合を乗じて計算した金額とニに掲げる金額との合計額をいう。

イ 各通算法人(前項の通算法人及び同項の事業年度終了の日において当該通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人(以下この号において「他の通算法人」という。)に限る。イ及びハにおいて同じ。)の通算外配当等流出額のうち当該各通算法人が発行済株式又は出資を有する他の通算法人の通算内配当等の額(当該各通算法人が交付を受けた金銭その他の資産に係る部分の金額に限るものとし、当該各通算法人の通算内配当等の額がある場合には当該通算内配当等の額を控除した金額とする。)に達するまでの金額の合計額

ロ 前項の通算法人の通算内配当等の額(通算法人の通算内配当等の額から当該通算法人が発行済株式又は出資を有する他の通算法人の通算内配当等の額(当該通算法人が交付を受けた金銭その他の資産に係る部分の金額に限る。)を控除した金額をいう。ハにおいて同じ。)

ハ 各通算法人の純通算内配当等の額の合計額
ニ 前項の通算法人の通算外配当等流出額のうち当該通算法人が発行済株式又は出資を有する他の通算法人の通算内配当等の額(当該通算法人が交付を受けた金銭その他の資産に係る部分の金額に限るものとし、当該通算法人の通算内配当等の額がある場合には当該通算内配当等の額を控除した金額とする。)超える部分の金額

法人税法施行令139条の8
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