留保金課税の留保金額の調整_関連法人株式等の負債利子(再計算)がある場合等


今回は、特定同族会社の特別税率(留保金課税)のうち、関連法人株式等の負債利子(再計算)がある場合と有価証券の評価替え(租税回避防止)がある場合の2つを確認します。

内容

留保金額の調整規定を順にまとめます。

法人税法施行令139条の8(留保金額から控除する金額等)

  1. 通算法人から配当金を受け取った場合
  2. 通算法人が配当金を支払った場合
  3. 定義規定
  4. 法人課税信託(確認省略)
  5. 欠損金の通算(再計算がある場合)
  6. 通算法人の合併等があった場合の欠損金
  7. 関連法人株式等の負債利子(再計算がある場合) ← 今回確認
  8. 有価証券の評価替え(租税回避防止規定) ← 今回確認

留保金額などの調整は、「別表3(1)付表2、通算法人の留保金額又は所得基準額の調整計算に関する明細書」を使用します。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/03(01)-f2.pdf

通算法人の配当金の受け渡しについては計算方法が複雑でしたが、
その他の調整については他の別表から転記するものがほとんどでシンプルです。
(転記元の金額の計算については複雑なものもありますが)

関連法人株式等の負債利子(再計算)がある場合

関連法人株式等の負債利子(再計算)がある場合、「当初支払利子配賦額の控除不足額の益金算入額」について留保金額と留保控除額の2つを調整します。

留保金額の調整

「当初支払利子配賦額の控除不足額の益金算入額」については、
別表4の簡易版にはなくて、別表4付表の4欄に記載欄があります。
この益金算入額を調整前の留保金額からマイナスします。

留保金額=調整前の留保金額-別表4付表の4欄

留保金額に関する別表の記入欄を探してみましたが記載欄がありません。
「当初支払利子配賦額の控除不足額の益金算入額」については、
所得に加算されますが、留保金額として加算されていないたため、
留保金額に含まれていません。

最初から留保金額として加算されていないため、
別途記載欄が設けられていないと考えられます。

留保控除額の調整

留保控除額を計算するときの所得等の金額(法法67条5項1号と3号)については、調整前の所得等の金額から「当初支払利子配賦額の控除不足額の益金算入額」をマイナスします。

留保控除額の調整については、別表3(1)付表2、16欄(当初支払利子配賦額の控除不足額の益金算入額)が設けられています。

留保金額の調整と異なり、所得等の金額に
「当初支払利子配賦額の控除不足額の益金算入額」が含まれているため、
マイナスします。

租税回避防止に関する有価証券の評価替えがあった場合

「租税回避防止に関する有価証券の評価替え」については、
留保金額と留保控除額の2つを調整します。

留保金額の調整

「租税回避防止に関する有価証券の評価替え」があった場合には、
「有価証券の帳簿価額の減算金額」を調整前の留保金額からマイナスします。

留保金額=調整前の留保金額-帳簿価額の減算金額(法令119条の3第10項)

留保金額の調整については、「別表3(1)、特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書」の18欄が設けられています。

以下、推測です。
有価証券の帳簿価額のマイナスなので
--- ××× / 有価証券 ××× をイメージします。

有価証券の簿価を減らすと、譲渡時の譲渡損も減ります。
譲渡損が減ると所得が増えます。
有価証券の簿価を減らした結果、所得が増えるだけで、
留保金額は増えないため、留保金額を計算する際、
留保金額からマイナスします。
(留保金額の計算時点の留保金額には含まれていないと考えます。)

留保控除額の調整

留保控除額を計算するときの所得等の金額(法法67条5項1号と3号)については、調整前の所得等の金額から「有価証券の帳簿価額の減算金額」をマイナスします。

留保控除額の調整については、別表3(1)付表1、19欄(他の法人の株式又は出資の基準時の直前における帳簿価額から減算される金額)が設けられています。

以下、推測です。
留保控除額の計算時点の「所得の金額」には含まれていないと考えます。
含まれていないのにマイナスする理由は、
留保金額からマイナスして留保控除額からマイナスしない場合、
バランスが合わないからです。
他の理由は、特殊な規定による所得の増加なので、
留保控除額(所得基準額)には考慮させない意味のマイナスかもしれません。

まとめ
内容留保金額の調整留保控除額の調整
当初支払利子配賦額の控除不足額の益金算入額留保金額からマイナス
(留保金額に含まれていないためマイナス欄なし)
所得等の金額から
マイナス(16欄)
租税回避を防止するための有価証券の評価替えがあった場合留保金額からマイナス
(別表3(1)の18欄)
所得等の金額から
マイナス(19欄)
留保金額と留保控除額の調整
参考規定

当初支払利子配賦額の控除不足額の益金算入額がある場合の調整

 特定同族会社が当該事業年度において第十九条第六項(関連法人株式等に係る配当等の額から控除する利子の額)の規定の適用を受ける場合には、当該特定同族会社における当該事業年度の法第六十七条第三項に規定する留保金額は、同項に規定する合計額を控除した金額から第十九条第六項に規定する満たない部分の金額に相当する金額控除した金額とする。この場合において、法第六十七条第五項第一号及び第三号の所得等の金額は、当該所得等の金額から当該満たない部分の金額に相当する金額控除した金額とする。

法人税法施行令139条の8

当初支払利子配賦額の控除不足額の益金算入額

6 前項の通算法人の通算事業年度において受ける適用関連法人配当等の額の合計額が当該通算事業年度に係る第四項第一号に規定する支払利子配賦額(第一号に掲げる金額がある場合には当該金額を加算した金額とし、第二号に掲げる金額がある場合には当該金額を控除した金額とする。)の百分の十に相当する金額に満たない場合には、その満たない部分の金額に相当する金額は、当該通算事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。
一 当該通算事業年度に係る支払利子合計額が当初申告支払利子合計額を超える場合におけるその超える部分の金額
二 当該通算事業年度に係る支払利子合計額が当初申告支払利子合計額に満たない場合におけるその満たない部分の金額

法人税法施行令19条

租税回避防止に関する有価証券の評価替えがあった場合の調整

 特定同族会社が当該事業年度において第百十九条の三第十項(移動平均法を適用する有価証券について評価換え等があつた場合の一単位当たりの帳簿価額の算出の特例)又は第百十九条の四第一項(評価換え等があつた場合の総平均法の適用の特例)(第百十九条の三第十項に規定する対象配当等の額の受領があつた場合に限る。)の規定の適用を受ける場合には、当該特定同族会社における当該事業年度の法第六十七条第三項に規定する留保金額は、同項に規定する合計額を控除した金額から第百十九条の三第十項(第百十九条の四第一項後段においてその例による場合を含む。)の規定により第百十九条の三第十項に規定する他の法人の株式又は出資の同項に規定する基準時の直前における帳簿価額から減算される金額(法第六十二条の五第四項(現物分配による資産の譲渡)の規定により益金の額に算入されない金額に対応する部分の金額を除く。)控除した金額とする。この場合において、法第六十七条第五項第一号及び第三号の所得等の金額は、当該所得等の金額から当該減算される金額控除した金額とする。

法人税法施行令139条の8

第119条の3第10項の規定は、省略します。

PAGE TOP