留保金課税の配当金の調整


今回は、特定同族会社の特別税率(留保金課税)の
配当金の調整を確認します。

留保金課税の概要

配当金に関する調整の前に、留保金課税の概要を確認します。

留保金課税は、「留保金額」から「留保控除額」をマイナスした
「留保した所得」に対して、法人税を追加で課税する制度です。

留保金額については、税金計算上の所得を基準に、
一定の益金不算入となるものをプラス、法人税などをマイナスして計算します。

留保金課税の計算は、別表3(1)特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書を使用します。https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/03(01).pdf

別表の上段(1欄から8欄まで)で、追加される法人税を計算します。
留保所得金額(9欄)に、税金計算上の所得(別表4の最終値の留保)を
転記します。この留保所得金額に配当金に関する調整を行います。

配当金の調整

配当金に関する調整欄は、
10欄の前期末配当等の額、11欄の当期末配当等の額の2つです。

留保所得金額に10欄の前期末配当等をプラス、
11欄の当期末配当等をマイナスします。

加減算の理由は、留保所得金額の計算時期(期末)と
配当金の支払時期(翌期)に差異(期ズレ)があるからです。

3月決算の場合、留保所得金額の計算は4/1~3/31の利益を基準としますが、
翌期に配当金が確定するため期ズレが生じます。

配当金の調整の具体例

前期利益 1500
当期利益 1000
前期末配当金の支払い 100
当期末配当金の支払い 90

 3/31(基準日)           3/31(基準日) 
----|------×-----------|------×
  利益1500   配当金支払100     利益1000  配当金支払90

当期の留保所得金額の計算は、
留保所得金額900+前期末配当等100-当期末配当等90=910となります。
(留保所得金額900=当期利益1000-前期末配当等100)

前期末配当等100をプラスする理由

配当金については、法人税が計算された後の利益で支払うため、
当期利益1000の計算に関係ありません。
ただし、配当金を支払うと法人税が計算された後の利益
(利益積立金額=留保所得金額)が減少します。

前期末配当金の当期支払いの仕訳

借方貸方
繰越利益剰余金 100
利益積立金額のマイナス
現金 100
前期末配当金の仕訳

当期利益1000から前期末配当等100をマイナスすると当期の留保所得金額900となりますが、前期末配当等100は当期利益1000に関係しないため前期末配当等100を足し戻します。

当期末配当等90をマイナスする理由

当期の留保した所得1000の中に当期末配当等90が含まれています。
当期末配当等90は、近い将来、配当により留保した所得ではなくなるため、
当期の留保した所得1000から当期末配当等90をマイナスします。

当期末配当金の翌期支払いの仕訳

借方貸方
繰越利益剰余金 90
利益積立金額のマイナス
現金 90
当期末配当金の仕訳
まとめ

配当金の調整は、期ズレの調整です。

前期末配当等については、当期利益(留保した所得)と関係しないため、
当期の留保した所得にプラスします(足し戻し)。

当期末配当等については、当期の留保した所得に含まれています。
ただし、翌期の留保した所得を減らす効果があるため、
当期の留保した所得からマイナスします。

参考規定

留保した金額の調整計算

 特定同族会社の前項に規定する留保した金額の計算については、当該特定同族会社による次の各号に掲げる剰余金の配当、利益の配当又は金銭の分配(その決議の日が当該各号に定める日(以下この項において「基準日等」という。)の属する事業年度終了の日の翌日から当該基準日等の属する事業年度に係る決算の確定の日までの期間内にあるもの(当該特定同族会社が通算法人である場合には、他の通算法人に対する剰余金の配当又は利益の配当として政令で定めるものを除く。)限る。以下この項において「期末配当等」という。)により減少する利益積立金額に相当する金額(当該期末配当等が金銭以外の資産によるものである場合には、当該資産の価額が当該資産の当該基準日等の属する事業年度終了の時における帳簿価額(当該資産が当該基準日等の属する事業年度終了の日後に取得したものである場合にあつては、その取得価額)であるものとした場合における当該期末配当等により減少する利益積立金額に相当する金額)は、当該基準日等の属する事業年度の前項に規定する留保した金額から控除し、当該期末配当等がその効力を生ずる日(その効力を生ずる日の定めがない場合には、当該期末配当等をする日)の属する事業年度の同項に規定する留保した金額に加算するものとする。

 剰余金の配当で当該剰余金の配当を受ける者を定めるための会社法第百二十四条第一項(基準日)に規定する基準日(以下この項において「基準日」という。)の定めがあるもの 当該基準日

 利益の配当又は投資信託及び投資法人に関する法律第百三十七条(金銭の分配)の金銭の分配で、当該利益の配当又は金銭の分配を受ける者を定めるための基準日に準ずる日の定めがあるもの 同日

法人税法67条
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