留保金課税の配当金の調整_通算法人間配当等がある場合


今回は、特定同族会社の特別税率(留保金課税)の
配当金の調整のうち、通算法人間配当等の調整を確認します。

配当金の調整

留保金課税の留保金額を計算する際、
前期末配当等をマイナス、当期末配当等をプラスします。
留保金額の計算時期(期末)と配当金の支払時期に差が生じるからです。

ただし、通算法人間配当等については期ズレの調整が不要となります。
通算法人間の配当等については、
単なる資金の移動(寄附金・受贈益と同じ)と捉えるからだと考えます。

(参考情報)
別表3(1)、特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/03(01).pdf

期ズレの調整
10欄、前期末配当等の額(通算法人間配当等の額を除く。
11欄、当期末配当等の額(通算法人間配当等の額を除く。

通算法人間配当等については調整不要

留保金額の計算上、カッコ書きで配当金の調整から除くとあります。

 特定同族会社の前項に規定する留保した金額の計算については、当該特定同族会社による次の各号に掲げる剰余金の配当、利益の配当又は金銭の分配(その決議の日が当該各号に定める日(以下この項において「基準日等」という。)の属する事業年度終了の日の翌日から当該基準日等の属する事業年度に係る決算の確定の日までの期間内にあるもの(当該特定同族会社が通算法人である場合には、他の通算法人に対する剰余金の配当又は利益の配当として政令で定めるものを除く。)限る。以下この項において「期末配当等」という。)により減少する利益積立金額に相当する金額(省略)は、以下省略

法人税法67条4項

政令を確認します。

基準日等にしたものとされない剰余金の配当又は利益の配当)
第百四十条 法第六十七条第項(特定同族会社の特別税率)に規定する政令で定めるものは、同項に規定する基準日等に同条第一項に規定する特定同族会社との間に通算完全支配関係がある内国法人に対する剰余金の配当又は利益の配当とする。

法人税法施行令140条

「基準日等」に特定同族会社との間に通算100%支配関係がある内国法人に対する剰余金の配当等については、配当金の調整から除外されます。
(通算法人間配当等の定義はありません。)

情報を整理しますと

A社
 ↓ 通算100%
B社(特定同族会社)

上記の関係で、B社はA社に配当金を支払います。

このB社がA社に「支払う配当金」については、
原則として調整の対象となりますが、
基準日等に通算100%支配関係がある場合は、調整の対象外となります。

具体例

特定同族会社の状況(上記のB社)

前期3/31(基準日)         当期3/31(基準日)
----|------×-----------|------×----
  利益1500   配当金支払100    利益1000  配当金支払90

基準日等に通算100%支配関係がある場合は調整不要、
基準日等に通算100%支配関係がない場合は調整が必要です。

通算100%支配関係の有無と配当金の調整の有無を整理します。

前期
3/31
調整当期
3/31
調整当期の
留保金額
ありプラスなし
(配当なし)
ありマイナスなし
(配当なし)
900
ありプラスなし
(配当なし)
なし
(離脱等)
△90900-90=810
なし+100あり
(加入等)
マイナスなし
(配当なし)
900+100=
1000
なし+100なし△90900+100△90=910
まとめ
参考規定

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

十二の七の七 通算完全支配関係 通算親法人と通算子法人との間の完全支配関係(第六十四条の九第一項に規定する政令で定める関係に限る。以下この号において同じ。)又は通算親法人との間に完全支配関係がある通算子法人相互の関係をいう。

法人税法2条
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