今回は、相続などで財産を取得しなかった場合の相続時精算課税と債務控除のうち、相続税法施行令の取扱いを確認してみましょう。
施行令でも読み替えが必要
先に規定を確認してみましょう。
(相続時精算課税の適用のための読替え)
相続税法施行令第5条の4第1項
第五条の四 特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかつた相続時精算課税適用者及び当該特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した者に係る相続税の計算についての法第十三条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項中「又は第二号の規定に該当する者」とあるのは「若しくは第二号の規定に該当する者又は同項第五号の規定に該当する者(当該相続に係る被相続人の相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有する者に限る。)」と、同条第二項中「又は第四号の規定に該当する者」とあるのは「若しくは第四号の規定に該当する者又は同項第五号の規定に該当する者(当該相続に係る被相続人の相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有しない者に限る。)」とする。
対象となる人は、次の2つです。
1、特定贈与者(例、相続時精算課税を選択した子の親)から相続などにより財産を取得しなかつた相続時精算課税適用者(例、相続時精算課税を選択した子)
2、特定贈与者から相続などにより財産を取得した者(相続時精算課税を選択しなかった人)
相続時精算課税については、生前の贈与で取得した財産を相続で取得したものとして取り扱うため、規定の読み替えが必要となります。
主な読み替え規定は、2つあります。
・相続税法第21条の15、相続などで財産を取得した場合
・相続税法第21条の16、相続などで財産を取得しなかった場合
今回確認する規定で「特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかつた」とありますので、「相続税法第21条の16、相続などで財産を取得しなかった場合」に関するものだと確認できます。
規定の続きを確認してみましょう
相続税の計算についての法第十三条第一項及び第二項の規定の適用
法第13条は、債務控除(マイナスの財産)に関する規定です。プラスの財産からマイナスの財産を差し引くことができます。
気になったのは、債務控除の読替規定は、「相続税法第21条の16、相続などで財産を取得しなかった場合」にもあるところです。
読替規定により、相続などで取得した財産だけではなく、相続時精算課税を選択した贈与により取得した財産も計算に追加することになります。
では、今回の読替規定は何なのでしょうか?
読み替える後の規定
実際に読み替えてみましょう。
第十三条 相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第一条の三第一項第一号若しくは第二号の規定に該当する者又は同項第五号の規定に該当する者(当該相続に係る被相続人の相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有する者に限る。)である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用
読み替えると
同項第五号の規定に該当する者(当該相続に係る被相続人の相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有する者に限る。)
が追加されます。
同項第5号は、相続税法第1条の3第1項第5号のことで、
・相続などで財産を受け取らず、
・相続時精算課税の贈与で財産を受け取った
人を指しています。
カッコ書きにより、亡くなった人(被相続人)の相続が始まったタイミングで日本国内(法律の施行地)に住所があるものに限って、債務控除が可能となります。
この取り扱いは、相続税法21条の16の障がい者控除の読替規定と同じ内容です。
整理しますと
・相続税法の読替規定(財産に関するもの)
・相続税法施行令の読替規定(対象者に関するもの)
この2つの読み替えを一緒にする必要があります。
課税される財産に制限がある人
課税される財産に制限がある人を「制限納税義務者」といいます。
制限納税義務者については、相続税の課税が国内にある財産に制限されますので、債務控除(マイナスの財産)についても制限がかかります。
読み替えた後の規定を確認してみましょう。
2 相続又は遺贈により財産を取得した者が第一条の三第一項第三号若しくは第四号の規定に該当する者又は同項第五号の規定に該当する者(当該相続に係る被相続人の相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有しない者に限る。)である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産でこの法律の施行地にあるものについては、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人の債務で次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
以下省略
読み替えると
同項第五号の規定に該当する者(当該相続に係る被相続人の相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有しない者に限る。)
が追加されます。
同項第5号は、相続税法第1条の3第1項第5号のことで、
・相続などで財産を受け取らず、
・相続時精算課税の贈与で財産を受け取った
人を指しています。
この部分は、先ほど確認した内容と同じです。
カッコ書きも先ほど確認した内容と似ていますが、取扱いは反対になります。
カッコ書きにより、亡くなった人(被相続人)の相続が始まったタイミングで日本国内(法律の施行地)に住所がないものに限って、債務控除が可能となります。
まとめ
・相続のタイミングで国内に住所がある場合は、範囲が広い債務控除(第1項)
・相続のタイミングで国内に住所がない場合は、範囲が狭い債務控除(第2項)
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