今回は、相続により取得した有価証券等の取得費の額に変更があつた場合等の修正申告の特例を確認してみましょう。
修正申告の特例は複数ある。
国外転出時課税には、修正申告の特例が複数あります。
所得税法第151条の2
国外転出をした者が帰国をした場合等の修正申告の特例
所得税法第151条の3
非居住者である受贈者等が帰国をした場合等の修正申告の特例
今回は、所得税法第151条の4、相続により取得した有価証券等の取得費の額に変更があつた場合等の修正申告の特例を確認してみましょう。
要件
今回確認する規定は非常に長い規定ですので、規定を区切って確認します。
要件1
「居住者が相続又は遺贈により取得した第六十条の二第一項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)に規定する有価証券等の譲渡をした場合において、」
日本に住んでいる人が相続等で取得した株式を売却したことが要件です。
要件2
「当該譲渡の日以後に当該相続又は遺贈に係る被相続人の当該相続の開始の日の属する年分の所得税につき、
同条第六項本文(同条第七項の規定により適用する場合を含む。次項において同じ。)若しくは第六十条の三第六項前段(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例)(同条第七項の規定により適用する場合を含む。次項において同じ。)の規定の適用があつたこと又は
第百五十一条の六第一項(遺産分割等があつた場合の修正申告の特例)の規定による修正申告書の提出若しくは第百五十三条の五(遺産分割等があつた場合の更正の請求の特例)の規定による更正の請求に基づく更正(当該請求に対する処分に係る不服申立て又は訴えについての決定若しくは裁決又は判決を含む。以下この項、次項及び第百五十三条の四(相続により取得した有価証券等の取得費の額に変更があつた場合等の更正の請求の特例)において同じ。)があつたことにより、」
A若しくはB
又は
C若しくはD
があったことにより、という規定です。
Aは、第60条の2第6項本文です。国外転出した人が5年以内に帰国する場合に、国外転出時課税の計算を取り消す特例が規定されています。
Bは、第60条の3第6項前段です。株式を受け取った非居住者が帰国する場合に、国外転出時課税の計算を取り消す特例が規定されています。
Cは、第151条の6第1項です。遺産分割があった場合に修正申告する義務が規定されています。
Dは、第153条の5です。遺産分割があった場合に更正の請求ができることが規定されています。
「次の各号に掲げる場合に該当し」については、省略します。
別の記事で確認したいと思います。
要件3
「かつ、当該居住者の当該譲渡の日の属する年分の所得税につき国税通則法第十九条第一項各号又は第二項各号(修正申告)の事由が生じた場合には、」
所得税などを過少に計算していた場合や赤字を過大に計算していた場合は、確定申告の修正が可能です。修正申告といいます。
まとめ
A~Dがあったことにより、修正申告の事由が生じた場合が要件です。
4月以内に修正申告が必要
要件を満たした場合の規定を確認してみましょう。
「当該居住者(その相続人を含む。)は、それぞれ次の各号に定める日から四月以内に、当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し、かつ、当該期限内に当該申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければならない。」
相続等で取得した株式を売却した人やその相続人は、一定の日から4月以内に修正申告をして、4月以内に所得税を納付する必要があります。
一般的な修正申告については任意規定ですが、今回確認している修正申告の特例については、義務規定です。
「一定の日」については、省略します。別の記事で確認したいと思います。
まとめ
1、国外転出時課税の取り消しは、修正申告の選択が可能
2、修正申告を選択した場合は、株式の売却損益が変わるため修正申告が必要
3、遺産分割で修正申告や更正があった場合も、修正申告が必要
参考規定
相続により取得した有価証券等の取得費の額に変更があつた場合等の修正申告の特例
第百五十一条の四 居住者が相続又は遺贈により取得した第六十条の二第一項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)に規定する有価証券等の譲渡をした場合において、当該譲渡の日以後に当該相続又は遺贈に係る被相続人の当該相続の開始の日の属する年分の所得税につき、同条第六項本文(同条第七項の規定により適用する場合を含む。次項において同じ。)若しくは第六十条の三第六項前段(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例)(同条第七項の規定により適用する場合を含む。次項において同じ。)の規定の適用があつたこと又は第百五十一条の六第一項(遺産分割等があつた場合の修正申告の特例)の規定による修正申告書の提出若しくは第百五十三条の五(遺産分割等があつた場合の更正の請求の特例)の規定による更正の請求に基づく更正(当該請求に対する処分に係る不服申立て又は訴えについての決定若しくは裁決又は判決を含む。以下この項、次項及び第百五十三条の四(相続により取得した有価証券等の取得費の額に変更があつた場合等の更正の請求の特例)において同じ。)があつたことにより、次の各号に掲げる場合に該当し、かつ、当該居住者の当該譲渡の日の属する年分の所得税につき国税通則法第十九条第一項各号又は第二項各号(修正申告)の事由が生じた場合には、当該居住者(その相続人を含む。)は、それぞれ次の各号に定める日から四月以内に、当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し、かつ、当該期限内に当該申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければならない。
所得税法第151条の4第1項、施行日令和7年1月1日
一 第六十条の二第四項ただし書の規定の適用により当該有価証券等の譲渡による事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費又は取得費として控除すべき金額が減少した場合 当該被相続人の所得税につき第百五十一条の二第一項(国外転出をした者が帰国をした場合等の修正申告の特例)の規定による修正申告書を提出した日又は第百五十三条の二第一項(国外転出をした者が帰国をした場合等の更正の請求の特例)の規定による更正の請求に基づく更正があつた日
二 第六十条の三第四項ただし書の規定の適用があつたこと又は同項本文の規定が適用されないこととなつたことにより、当該有価証券等の譲渡による事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費又は取得費として控除すべき金額が減少した場合 当該被相続人の所得税につき前条第一項若しくは第百五十一条の六第一項の規定による修正申告書を提出した日又は第百五十三条の三第一項(非居住者である受贈者等が帰国をした場合等の更正の請求の特例)若しくは第百五十三条の五の規定による更正の請求に基づく更正があつた日