相続人の繰戻し還付


今回は、相続人の繰戻し還付を確認してみましょう。

相続人の繰戻し還付

繰戻し還付は、前年の黒字に対する所得税のうち、
本年の赤字に相当する所得税を還付請求できる特例です。

原則として還付請求できる人は本人に限りますが、
本人が亡くなった場合は、相続人が還付請求できます。

規定を確認してみましょう。

(相続人等の純損失の繰戻しによる還付の請求)
第百四十一条 第百二十五条第一項、第三項又は第五項(年の中途で死亡した場合の確定申告)の規定に該当してこれらの規定に規定する申告書(青色申告書に限る。)を提出する者は、当該申告書に記載すべきその年において生じた純損失の金額がある場合には、政令で定めるところにより、当該申告書の提出と同時に、当該申告書に係る所得税の納税地の所轄税務署長に対し、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額に相当する所得税の還付を請求することができる。
一 第百二十五条第一項又は第三項に規定する死亡をした居住者のその年の前年分の課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額につき第三章第一節(税率)の規定を適用して計算した所得税の額
二 前号に規定する死亡をした居住者のその年の前年分の課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額から当該純損失の金額の全部又は一部を控除した金額につき第三章第一節の規定に準じて計算した所得税の額

所得税法第141条第1項、施行日令和6年4月1日

通常の繰戻し還付の取扱いとほとんど同じです。
異なる部分だけ確認してみましょう。

還付請求できる人は、
「年の中途で亡くなった場合の確定申告の規定」に該当して、
確定申告書を提出する人(相続人)です。

具体的には次の3つ。
・第125条第1項_年の中途で亡くなった場合の確定所得申告
・第125条第3項_年の中途で亡くなった場合の確定損失申告
・第125条第5項_相続人が亡くなった場合

還付請求できる相続人が亡くなった場合は、
亡くなった人の相続人が還付請求できます。

還付請求の上限など

還付請求額>実際の所得税となる場合は、
実際の所得税(定額減税を控除した後)を上限に還付請求できます。
相続人の繰戻し還付についても同じです。

参考規定

2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。

所得税法第141条第2項、施行日令和6年4月1日

第3項の規定は、平均課税という特殊な計算がある場合の
計算方法に関するものです。

手続き

繰戻し還付については、
・前年分は青色申告書の提出
・本年分は青色申告書を提出期限までに提出
する必要があります。

還付請求はいずれも本人が行いますが、本人が亡くなっているため、
相続人の繰戻し還付の請求については、
・相続人が青色申告書を提出期限までに提出
する必要があります。

参考規定

3 第一項の規定は、同項第一号に規定する死亡をした居住者がその年の前年分の所得税につき青色申告書を提出している場合であつて、同項に規定する申告書を提出する者が当該申告書をその提出期限までに提出した場合(税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合には、当該申告書をその提出期限後に提出した場合を含む。)に限り、適用する。

所得税法第141条第3項、施行日令和6年4月1日
繰戻し還付の特例

繰戻し還付は、原則として前年の黒字と本年の赤字を通算して、
所得税を還付請求する特例です。

事業の全部の譲渡・廃止をした場合は、
2年前に遡って所得税の還付請求が可能です。

本人が亡くなった場合は、亡くなった時点で
本年の赤字を翌年以後に繰り越しできないため、
事業の全部の譲渡・廃止と同様に、
2年前に遡って所得税の還付請求が可能となります。

この場合、2年前も青色申告書を提出している必要があります。

参考規定、亡くなった場合の繰戻し還付の特例

4 居住者が死亡した場合において、その死亡の日の属する年の前年において生じたその者に係る純損失の金額(第七十条第一項(純損失の繰越控除)の規定により同日の属する年において控除されたもの及び次条第二項の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。)があるときは、その相続人は、その居住者の同日の属する年の前年分及び前前年分の所得税につき青色申告書が提出されている場合に限り、政令で定めるところにより、その居住者の同日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、当該所得税の納税地の所轄税務署長に対し、当該純損失の金額につき第一項及び第二項の規定に準じて計算した金額に相当する所得税の還付を請求することができる。

所得税法第141条第4項、施行日令和6年4月1日


新しいこと
・とあるカレーうどん(少し辛め)

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