今回は、相続時精算課税と相続税の20%加算を確認してみましょう。
相続税の20%加算
亡くなった方(被相続人)の財産は、孫やひ孫が相続することができます。
ただし、孫やひ孫が財産を相続した場合、相続した人の相続税が20%増えます。
参考規定
(相続税額の加算)
相続税法第18条、令和7年6月1日施行
第十八条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、前条の規定にかかわらず、同条の規定により算出した金額にその百分の二十に相当する金額を加算した金額とする。
2 省略
相続時精算課税との関係
贈与税を相続のときに精算する方法(相続時精算課税)を選択した場合、
・贈与した財産の金額
・贈与税など
が相続税の計算に追加されます。
この追加される規定(読替規定)に、相続税の20%加算があります。
読替規定のうち、相続税の20%加算に関する部分を確認してみましょう。
第十八条第一項中「とする」とあるのは「とする。ただし、贈与により財産を取得した時において当該被相続人の当該一親等の血族であつた場合には、当該被相続人から取得した当該財産に対応する相続税額として政令で定めるものについては、この限りでない」と、
実際に読み替えてみましょう。
(相続税額の加算)
第十八条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、前条の規定にかかわらず、同条の規定により算出した金額にその百分の二十に相当する金額を加算した金額とする。ただし、贈与により財産を取得した時において当該被相続人の当該一親等の血族であつた場合には、当該被相続人から取得した当該財産に対応する相続税額として政令で定めるものについては、この限りでない。
ただし書きが追加されます。
贈与により財産を取得したタイミングで、亡くなった方(被相続人)の一親等の血族(例、子)の場合は、一定の相続税については、この限りでない。となります。20%加算の対象から外れるという意味です。
相続税の20%加算は、相続などのタイミングで一親等の血族に該当すれば対象から外れます。反対に、一親等の血族に該当しなければ相続税の20%加算の対象となります。判定のタイミングは、被相続人が亡くなったときです。
相続時精算課税の贈与については、贈与のタイミングで判定します。
そのため、
・一親等の血族に該当する贈与
・一親等の血族以外に該当する贈与
の2つに分かれます。
贈与のタイミングで一親等の血族に該当する場合は、相続税の20%加算の対象から外れることになります。
計算規定
贈与のタイミングで一親等の血族に該当する場合の計算方法を確認してみましょう。
(相続税額の加算の対象とならない相続税額)
相続税法施行令第5条の2の2第1項、令和7年4月1日施行
第五条の二の二 法第二十一条の十五第二項又は第二十一条の十六第二項の規定により読み替えて適用される法第十八条第一項に規定する相続税額として政令で定めるものは、特定贈与者の死亡に係る相続税の計算において相続時精算課税適用者の法第十七条の規定により算出した相続税額に当該相続時精算課税適用者の法第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産で当該特定贈与者の法第十八条第一項に規定する一親等の血族であつた期間内に当該特定贈与者から取得したもの(以下この条において「一親等時贈与財産」という。)の価額から当該期間内の各年分の贈与税について法第二十一条の十一の二第一項の規定による控除をした残額(当該特定贈与者から一親等時贈与財産と一親等時贈与財産以外の法第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産(次項において「一親等時贈与財産以外の財産」という。)とを取得した年分については、当該年分における一親等時贈与財産の価額から調整控除額を控除した残額)の合計額が当該相続時精算課税適用者に係る特定贈与者の死亡に係る相続税の法第二十一条の十五第二項又は第二十一条の十六第二項の規定により読み替えて適用される法第十九条及び第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定により計算された課税価格に算入された財産の価額のうちに占める割合を乗じて得た額とする。
相続税の20%加算の対象者(孫など)の相続税に、一定の割合をかけたものが
相続税の20%加算の対象から外れる金額です。
算式
相続税法第17条の相続税額(各相続人等の相続税額)
×一定の割合(一親等時贈与財産の割合)
相続税法第17条の相続税額(各相続人等の相続税額)の中には、
1、一親等の血族に該当する贈与の財産に関する相続税(加算しない)
2、一親等の血族に該当しない贈与の財産の財産に関する相続税(加算する)
が含まれています。
上記の規定は、加算しない部分の相続税を「一親等の血族に該当する贈与の財産」の割合で計算するものです。
調整控除額
控除をした残額のカッコ書きを確認してみましょう。
控除をした残額(当該特定贈与者から一親等時贈与財産と一親等時贈与財産以外の法第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産(次項において「一親等時贈与財産以外の財産」という。)とを取得した年分については、当該年分における一親等時贈与財産の価額から調整控除額を控除した残額)
同じ年に
・一親等時贈与財産(加算しない)
・一親等時贈与財産以外の財産(加算する)
を贈与で受け取った場合、相続時精算課税の基礎控除額(110万円)を按分計算する必要があります。
参考規定
2 前項に規定する調整控除額とは、その年分において同項の特定贈与者から取得した財産の価額から法第二十一条の十一の二第一項の規定により控除した金額に当該年分における第一号に掲げる価額が当該年分における第二号に掲げる金額のうちに占める割合を乗じて計算した金額をいう。
相続税法施行令第5条の2の2第2項、令和7年4月1日施行
一 一親等時贈与財産の価額
二 一親等時贈与財産の価額と一親等時贈与財産以外の財産の価額との合計額
計算例
・一親等時贈与財産(加算しない) 330万円
・一親等時贈与財産以外の財産(加算する) 330万円
・合計 330万円+330万円=660万円
1、亡くなったから受け取った財産の価額 660万円
2、相続時精算課税の基礎控除 60万円→110万円
3、1<2のため、マイナスした金額は110万円
A、一親等時贈与財産の価額(加算しない)
330万円
B、一親等時贈与財産の価額と一親等時贈与財産以外の財産の価額との合計額(全体)
330万円+330万円=660万円
一親等時贈与財産の価額(加算しない)の割合
A÷B=330万円÷660万円=50%
調整控除額(一親等時贈与財産に対する基礎控除額)
マイナスした金額(110万円)×加算しない部分の割合(50%)=55万円
一親等時贈与財産の価額(330万円)から調整控除額(55万円)を控除した残額(330万円-55万円=275万円)が分子の一部となります。
参考情報
一定の割合(一親等時贈与財産の割合)
分子
一親等時贈与財産の価額-相続時精算課税の基礎控除(110万円)の各年分の合計
分母
・相続税法第21条の15第2項
・相続税法第21条の16第2項
の規定により読み替えて適用される
・第19条、相続開始前7年以内に贈与があつた場合の相続税額
・第21条の14、相続時精算課税に係る相続税額
・第21条の15
・第21条の16
・第21条の17、相続時精算課税に係る相続税の納付義務の承継等
・第21条の18
の規定により計算された課税価格に算入された財産の価額
相続税法基本通達18-5、相続税額の加算の対象とならない相続税額
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/05.htm#a-18_5
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