今回は、相続時精算課税を選択した場合に支払った贈与税の取扱いを確認してみましょう。
相続などで財産を取得した場合
・財産を贈与で受け取ったときに支払う贈与税
・財産を相続で受け取ったときに支払う相続税
上記2つは別々に計算しますが、相続時精算課税を選択した場合は、支払った贈与税を相続税の計算でマイナスが可能となります。
例えば、次の場合
・相続時精算課税の贈与で支払った贈与税 100万円
・相続税 300万円
相続税(300万円)-贈与税(100万円)=支払う相続税(200万円)
となります。
将来支払う相続税を贈与税で前払いしているということです。
相続時精算課税を選択しない贈与については、原則として贈与税を相続税の計算で精算できません。
参考となる規定を確認してみましょう。
(後半に記載しています。)
「第1項」は、相続や遺贈で財産を受け取った場合について規定されています。
「第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産」は、相続時精算課税を選択した贈与により取得した財産のことです。
この財産について贈与税がかかっている場合は、相続税から贈与税をマイナスすることが可能です。
カッコ書きの「第21条の8の規定による控除前の税額」は、
・在外財産に対する贈与税額の控除
をマイナスする前の金額をいいます。
在外財産に対する贈与税額の控除は、贈与で受け取った財産について
・日本の贈与税
・外国の贈与税
上記2つの贈与税がかかった場合は、
「日本の贈与税」から「外国の贈与税」をマイナスできる規定です。
(贈与税が2重にかかってしまうからです。)
下記の税金については、相続税からマイナスができません。
・延滞税(期限に遅れたときの税金)
・利子税(期限に遅れたときの税金)
・過少申告加算税(贈与税を少なく申告したときの税金)
・無申告加算税(贈与税を申告しなかったときの税金)
・重加算税(隠ぺいや仮装したときの税金)
相続などで財産を取得しなかった場合
相続時精算課税を選択した人が、相続や遺贈で財産を受け取らなかった場合は、相続や遺贈で財産を取得したものとして取り扱われます。
相続時精算課税で支払った贈与税を相続税の計算で精算する必要があるからです。
参考となる規定を確認してみましょう。
(後半に記載しています。)
「第1項」は、相続や遺贈で財産を受け取らなかった場合について規定されています。
支払った贈与税の取扱いについては、相続や遺贈で財産を受け取った場合の取扱いと同じです。
参考規定
相続や遺贈で財産を受け取った場合の贈与税の精算
3 第一項の場合において、第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産につき課せられた贈与税があるときは、相続税額から当該贈与税の税額(第二十一条の八の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除く。)に相当する金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。
相続税法第21条の15第3項、令和7年6月1日施行
相続や遺贈で財産を受け取らなかった場合の贈与税の精算
4 第一項の場合において、第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産につき課せられた贈与税があるときは、相続税額から当該贈与税の税額(第二十一条の八の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除く。)に相当する金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。
相続税法第21条の16第4項、令和7年6月1日施行