今回は、相続税と贈与税に関する更正の請求の特則のうち、更正の請求ができる事由を確認してみましょう。
更正の請求の特則
税金の計算をやり直す手続は、2つあります。
・税金が増える場合は、修正申告
・税金が減る場合は、更正の請求
といいます。
更正の請求については、
・一般的な取扱いは、国税通則法
・相続税や贈与税特有の取扱いは、相続税法
に規定されています。
相続税法に規定されている更正の請求の特則については、更正の請求ができる事由が全部で10個あります。以前、2つ確認しましたので、今回は4つ確認してみましょう。
参考リンク
・相続税と贈与税に関する更正の請求の特則
遺留分の侵害があった場合
更正の請求ができる3つ目の事由は、遺留分の侵害によりお金を支払う場合です。
三 遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したこと。
親や子など(兄弟姉妹以外の相続人)については、最低限の取り分(遺留分)が保障されていますが、最低限の取り分が足りない場合があります。足りない場合は、財産を受け取っている人(受遺者や受贈者)に対して、お金を請求することができます。
参考情報、裁判所、遺留分侵害額の請求調停
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/lkazi_07_26/index.html
参考規定、民法
(遺留分の帰属及びその割合)
民法第1042条、令和7年6月6日施行
第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
(遺留分侵害額の請求)
民法1046条第1項、令和7年6月6日施行
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
遺言書の発見と遺言の放棄
4つ目は、遺言書が発見された場合や遺贈の放棄があった場合です。
四 遺贈に係る遺言書が発見され、又は遺贈の放棄があつたこと。
例えば、遺産分割や相続税の申告を済ませた後に遺言書が発見された場合です。
参考規定、民法
(遺贈の放棄)
民法第986条、令和7年6月6日施行
第九百八十六条 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
2 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
物納した財産の価値が下がった。
5つ目は、物納関係です。
五 第四十二条第三十項(第四十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定により条件を付して物納の許可がされた場合(第四十八条第二項の規定により当該許可が取り消され、又は取り消されることとなる場合に限る。)において、当該条件に係る物納に充てた財産の性質その他の事情に関し政令で定めるものが生じたこと。
条件を付けて物納の許可がされた場合に、一定の事由が生じると更正の請求が可能となります。
一定の事由は、2つです。
1、物納した土地が有害物質により汚染されていることがわかったこと。
2、物納した土地の地下に廃棄物等が埋められていることがわかったこと。
参考規定、更正の請求の対象となる事由
第八条 法第三十二条第一項第五号に規定する政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
相続税法施行令第8条第1項、令和7年4月1日施行
一 物納に充てた財産が土地である場合において、当該土地の土壌が土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第二条第一項(定義)に規定する特定有害物質その他これに類する有害物質により汚染されていることが判明したこと。
二 物納に充てた財産が土地である場合において、当該土地の地下に廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第二条第一項(定義)に規定する廃棄物その他の物で除去しなければ当該土地の通常の使用ができないものがあることが判明したこと。
その他
6つ目は、相続税法施行令を確認してみましょう。
六 前各号に規定する事由に準ずるものとして政令で定める事由が生じたこと。
更正の請求の対象となる事由は、3つです。
1、相続・遺贈・贈与により取得した財産の帰属に関する判決があったこと。
例えば、亡くなった方や贈与した人の財産だと思っていたが、違っていた場合です。
2、民法第778条の4、民法第910条による支払額が確定したこと。
例えば、相続人が遺産分割や相続税の申告を済ませた後に、推定された子や認知された人からお金の支払いを請求された場合です。
3、条件が付いている遺贈の条件が満たされたこと。
参考規定、更正の請求の対象となる事由
2 法第三十二条第一項第六号に規定する政令で定める事由は、次に掲げる事由とする。
相続税法施行令第8条第2項、令和7年4月1日施行
一 相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決があつたこと。
二 民法第七百七十八条の四(相続の開始後に新たに子と推定された者の価額の支払請求権)又は第九百十条(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)の規定による請求があつたことにより弁済すべき額が確定したこと。
三 条件付の遺贈について、条件が成就したこと。
参考規定、民法、相続の開始後に新たに子と推定された者の価額の支払請求権)
第七百七十八条の四 相続の開始後、第七百七十四条の規定により否認権が行使され、第七百七十二条第四項の規定により読み替えられた同条第三項の規定により新たに被相続人がその父と定められた者が相続人として遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしていたときは、当該相続人の遺産分割の請求は、価額のみによる支払の請求により行うものとする。
民法第778条の4、令和7年6月6日施行
参考規定、民法、相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権
第九百十条 相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
民法第910条、令和7年6月6日施行
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特則関係のまとめ
第30条、期限後申告の特則
・第1項、相続税、任意
・第2項、贈与税、任意
第31条、修正申告の特則
・第1項、相続税、任意
・第2項、相続税、申告義務あり
・第3項、相続税、期限前の更正により第2項不適用
・第4項、贈与税、任意
第32条、更正の請求の特則
・第1項、相続税・贈与税、任意 ← 今回確認した内容
・第2項、更正の請求の期間、5年→6年
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