今回は、相続税の総額と相続した人が負担する相続税を確認してみましょう。
規定の確認と計算
亡くなった方から総額で1億円の財産を受け取ったらいくら相続税がかかるのでしょうか? 規定を確認しながら計算してみましょう。
今回確認する規定は、こちら↓
(相続税の総額)
相続税法第16条、令和7年6月1日施行
第十六条 相続税の総額は、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格に相当する金額の合計額からその遺産に係る基礎控除額を控除した残額を当該被相続人の前条第二項に規定する相続人の数に応じた相続人が民法第九百条(法定相続分)及び第九百一条(代襲相続人の相続分)の規定による相続分に応じて取得したものとした場合におけるその各取得金額(当該相続人が、一人である場合又はない場合には、当該控除した残額)につきそれぞれその金額を次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる税率を乗じて計算した金額を合計した金額とする。
以下省略
分けて確認してみましょう。
1、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格に相当する金額の合計額
まず、相続や遺贈で財産を受け取った人の財産の金額を合計します。
例えば、亡くなった方の財産が現金1億円あり、相続で
・子1が現金3000万円
・子2が現金7000万円
を受け取ったとします。
相続や遺贈で財産を受け取った人の財産の金額を合計しますと
3000万円+7000万円=1億円となります。
2、その遺産に係る基礎控除額
遺産に係る基礎控除額は、原則として
・3000万円+600万円×法定相続人
で計算します。
法定相続人は2人なので、遺産に係る基礎控除額は、
3000万円+600万円×2人=4200万円となります。
3、1-2=控除した残額
1から2をマイナスしますと
1億円-4200万円=控除した残額は、5800万円となります。
4、控除した残額を当該被相続人の前条第二項に規定する相続人の数に応じた相続人が民法第九百条(法定相続分)及び第九百一条(代襲相続人の相続分)の規定による相続分に応じて取得したものとした場合におけるその各取得金額(当該相続人が、一人である場合又はない場合には、当該控除した残額)
実際に取得した財産の割合は、
・子1が3000万円、30%
・子2が7000万円、70%
ですが、相続税の総額(全体)を計算する場合は、控除した残額(A、5800万円)を法定相続分で取得したものとして計算します。
子1と子2の法定相続分は、それぞれ1/2ですので、
・子1 5800万円×法定相続分1/2=2900万円
・子2 5800万円×法定相続分1/2=2900万円
を取得したと仮定します。
相続税の総額
受け取った財産が計算できましたら、税率を使って相続税の総額を計算します。
5、それぞれその金額を次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる税率を乗じて計算した金額を合計した金額とする。
相続税の税率は、財産の金額に応じて上がります。
相続税の税率
・1000万円以下の金額、10%
・1000万円を超え3000万円以下の金額、15%
・3000千万円を超え5000万円以下の金額、20%
・5000千万円を超え1億円以下の金額、30%
・1億円を超え2億円以下の金額、40%
・2億円を超え3億円以下の金額、45%
・3億円を超え6億円以下の金額、50%
・6億円を超える金額、55%
今回は、子1と子2がそれぞれ2900万円取得していますので、
・1000万円以下の金額、10%
・1000万円を超え3000万円以下の金額、15%
を使って、相続税の総額を計算します。
2900万円×15%=435万円と計算しないで、
・1000万円以下の金額
・1000万円を超え3000万円以下の金額
に分けて計算する必要がありますので注意しましょう。
子1の相続税
1、1000万円×10%=100万円
2、2900万円-1000万円=1900万円×15%=285万円
3、1+2=385万円
子2の相続税、子1の計算と同じなので385万円
それぞれの相続税を計算して、最後に合計します。
子1の相続税(385万円)+子2の相続税(385万円)=770万円
となります。
相続税の割合を計算してみると770万円÷1億円=7.7%となります。
相続税の負担額
1億円に対して770万円の相続税がかかることがわかりました。
財産を受け取った子1と子2は、いくら相続税を負担するのでしょうか?
規定を確認してみましょう。
(各相続人等の相続税額)
相続税法第16条、令和7年6月1日施行
第十七条 相続又は遺贈により財産を取得した者に係る相続税額は、その被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者に係る相続税の総額に、それぞれこれらの事由により財産を取得した者に係る相続税の課税価格が当該財産を取得したすべての者に係る課税価格の合計額のうちに占める割合を乗じて算出した金額とする。
相続税の総額に実際に取得した財産の割合をかけます。
子1が取得した財産の割合は30%ですので、
相続税の総額(770万円)×30%=231万円
子2が取得した財産の割合は70%ですので、
相続税の総額(770万円)×70%=539万円
となります。
相続税は原則として現金で支払う必要がありますので、相続税が支払えるかどうかも確認してみましょう。