今回は、相続税を納付する必要がある人のうち、居住無制限納税義務者を確認してみましょう。
相続税の納税義務者の種類は、5つ
相続税の納税義務者の種類は、5つあります。
・財産を受け取った人の住所が日本か外国か
・財産の場所が制限されるか制限されないか
の組み合わせで4種類です。
1、居住無制限納税義務者
相続等で財産を受け取った人の住所が日本で、財産の場所に制限がありません。
2、非居住無制限納税義務者
相続等で財産を受け取った人の住所が外国で、財産の場所に制限がありません。
3、居住制限納税義務者
相続等で財産を受け取った人の住所が日本で、日本国内の財産に制限されます。
4、非居住制限納税義務者
相続等で財産を受け取った人の住所が外国で、日本国内の財産に制限されます。
5、相続時精算課税適用者
贈与等で財産を受け取った人が相続時精算課税を選択した人です。
今回は、1の居住無制限納税義務者を確認してみましょう。
(相続税の納税義務者)
相続税法第1条の3第1項第1号、令和7年6月1日施行
第一条の三 次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
一 相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの
イ 一時居住者でない個人
ロ 一時居住者である個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
次の3つにあてはまる人は、居住無制限納税義務者に該当します。
・相続などにより財産を取得した人
・一時居住者でない個人(長く日本に住んでいる人)
・相続のタイミングで日本に住所がある。
一時居住者
日本に一時的に住んでいる人を「一時居住者」といいます。
一時居住者の定義を確認してみましょう。
3 第一項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
相続税法第1条の3第3項第1号、令和7年6月1日施行
一 一時居住者 相続開始の時において在留資格(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)別表第一(在留資格)の上欄の在留資格をいう。次号及び次条第三項において同じ。)を有する者であつて当該相続の開始前十五年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が十年以下であるものをいう。
・相続のタイミングで在留資格あり
・過去15年以内で日本に住所があった期間が10年以下
2つの要件を満たせば、一時居住者に該当します。
在留資格の規定(出入国管理及び難民認定法)を確認してみましょう。
「(在留資格及び在留期間)第二条の二 本邦に在留する外国人は、」で始まっています。
外国人の定義を確認してみましょう。
(定義)
出入国管理及び難民認定法第2条第1号、令和7年6月1日施行
第二条 出入国管理及び難民認定法及びこれに基づく命令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 外国人 日本の国籍を有しない者をいう。
出入国管理及び難民認定法では、日本の国籍がない人を外国人と定義しています。
相続した人が一時居住者でない場合(イ)は、他の制限がないため、相続税の納税義務者となります。
相続した人が一時居住者である場合(ロ)は、カッコ書きで制限があります。
(当該相続又は遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
相続した人(相続人)ではなく、亡くなった方(被相続人)が
・外国人被相続人
・非居住被相続人
に該当する場合は、一時居住者である個人から除く必要があります。
外国人被相続人
外国人被相続人の定義を確認してみましょう。
3 第一項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
相続税法第1条の3第3項第2号、令和7年6月1日施行
一 省略
二 外国人被相続人 相続開始の時において、在留資格を有し、かつ、この法律の施行地に住所を有していた当該相続に係る被相続人をいう。
相続のタイミングで、
・在留資格あり
・日本に住所あり
に該当する人を「外国人被相続人」といいます。
非居住被相続人
非居住被相続人の定義を確認してみましょう。
3 第一項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
相続税法第1条の3第3項第3号、令和7年6月1日施行
一 省略
二 省略
三 非居住被相続人 相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有していなかつた当該相続に係る被相続人であつて、当該相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもののうちそのいずれの時においても日本国籍を有していなかつたもの又は当該相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないものをいう。
1つ目の要件は、相続のタイミングで日本に住所がないことです。
2つ目の要件は、2つに分かれます。
2-1、過去10年以内で日本に住所はあったが、日本国籍はなかった。
2-2、過去10年以内で日本に住所がなかった。
・1つ目の要件と2-1の要件を満たす場合
・1つ目の要件と2-2の要件を満たす場合
に該当する人を「非居住被相続人」といいます。
まとめ
先に相続人(財産を受け取った人)の判定が必要です。
相続人(財産を受け取った人)の判定
・日本住所〇、一時居住者×(イ) → 居住無制限納税義務者
・日本住所〇、一時居住者〇(ロ)
被相続人、外国人被相続人・非居住被相続人〇(ロのカッコ書き)
被相続人、外国人被相続人・非居住被相続人× → 居住無制限納税義務者
相続で財産を受け取った人は日本との関係性が弱かった(一時居住者に該当)が亡くなった方は日本との関係性が強かった(外国人被相続人・非居住被相続人に該当しない)ため、居住無制限納税義務者に該当します。
一時居住者(一時的に日本に住んでいる、日本との関係性が弱い)
相続時点(亡くなった時点)の判定
・日本国籍がない外国人、在留資格〇
・過去15年以内で日本住所期間が10年以下
被相続人(亡くなった方)の判定
相続時点(亡くなった時点)の判定
・日本住所〇、在留資格〇 → 外国人被相続人
・日本住所× → 過去10年以内の判定へ
過去10年以内の判定
・日本住所〇、日本国籍× → 非居住被相続人
・日本住所× → 非居住被相続人
参考情報、国税庁、タックスアンサー、No.4138 相続人が外国に居住しているとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4138.htm