今回は、相続税を納付する必要がある人のうち、「相続時精算課税適用者」を確認してみましょう。
相続税の納税義務者は、2種類ある。
相続税の納税義務者は、2種類に分けることができます。
1、相続・遺贈により財産を取得した個人
・1、居住無制限納税義務者
・2、非居住無制限納税義務者
・3、居住制限納税義務者
・4、非居住制限納税義務者
2、贈与により財産を取得した個人
今回は、2の贈与により財産を取得した個人の規定を確認してみましょう。
(相続税の納税義務者)
相続税法第1条の3第1項、令和7年6月1日施行
第一条の三 次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
一 省略
二 省略
三 省略
四 省略
五 贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産を取得した個人(前各号に掲げる者を除く。)
「贈与(省略)により第21条の9第3項の適用を受ける財産を取得した個人」と規定されています。
第21条の9は、相続時精算課税に関する規定です。第3項を確認してみましょう。
3 前項の届出書に係る贈与をした者からの贈与により取得する財産については、当該届出書に係る年分以後、前節及びこの節の規定により、贈与税額を計算する。
相続税法第21条の9第3項、令和7年6月1日施行
相続時精算課税(贈与税を相続時に精算できる制度)は選択制度です。選択するためには届出書の提出が必要となります。
相続時精算課税の対象となる財産を贈与により取得した個人については、相続の時に支払った贈与税を精算する必要があるため、相続・遺贈により受け取った財産がなかったとしても、相続税の納税義務者として取り扱われます。
亡くなったときに効力が発生する贈与
贈与のカッコ書きを確認してみましょう。
贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)
贈与から、亡くなったときに効力が発生する贈与が外れます。
民法の規定を確認してみましょう。
(死因贈与)
民法第554条、令和7年6月1日施行
第五百五十四条 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
亡くなったときに効力が発生する贈与は、遺贈(遺言)と似たような取扱いとなります。
そのため、相続税の計算でも、遺贈と似たような取扱いとなります。
居住無制限納税義務者の定義で規定されています。
(相続税の納税義務者)
第一条の三 次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
一 相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの
贈与を2つに分けますと
・亡くなったときに効力が発生する贈与 → 遺贈
・上記以外の贈与(通常の贈与) → 贈与
前各号に掲げる者を除く。
2つ目のカッコ書きに(前各号に掲げる者を除く。)とあります。
前各号は、次の4つです。
第1号、居住無制限納税義務者(日本住所あり、財産の場所を問わず課税)
第2号、非居住無制限納税義務者(日本住所なし、財産の場所を問わず課税)
第3号、居住制限納税義務者(日本住所あり、日本国内の財産に課税)
第4号、非居住制限納税義務者(日本住所なし、日本国内の財産に課税)
第1号から第4号までの規定が該当する人(相続や遺贈により財産を取得した個人)が第5号の規定(相続時精算課税適用者)にも該当する場合は、第1号から第4号までの規定が優先されます。
第1号(相続など)と第5号(贈与)に該当 → 第1号の納税義務者に該当
第2号(相続など)と第5号(贈与)に該当 → 第2号の納税義務者に該当
第3号(相続など)と第5号(贈与)に該当 → 第3号の納税義務者に該当
第4号(相続など)と第5号(贈与)に該当 → 第4号の納税義務者に該当