今回は、社会福祉法などに関する取引の消費税の非課税を確認してみましょう。
社会福祉法などのサービス
・社会福祉法第2条に規定する社会福祉事業
・更生保護事業法第2条第1項に規定する更生保護事業
として行われる資産の譲渡等(資産の販売・資産の貸付け・サービス提供)については、消費税が非課税となります。
社会福祉法第2条を確認してみましょう。
(定義)
社会福祉法第2条第1項、令和7年6月1日施行
第二条 この法律において「社会福祉事業」とは、第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業をいう。
第2項に第一種社会福祉事業(全部で7個)、第3項に第二種社会福祉事業(全部で16個)、第4項に社会福祉事業に含まれないものが規定されています。
社会福祉事業に含まれないものの中に「更生保護事業法に規定する更生保護事業」があります。社会福祉法からみると社会福祉事業に含まれないため、消費税の課税対象となりそうですが、更生保護事業法に規定する更生保護事業については、別に非課税の規定が設けられています。
更生保護事業法第2条第1項を確認してみましょう。
(定義)
更生保護事業法第2条第1項、令和7年6月1日施行
第二条 この法律において「更生保護事業」とは、宿泊型保護事業、通所・訪問型保護事業及び地域連携・助成事業をいう。
・宿泊型保護事業(第2項)
・通所・訪問型保護事業(第3項)
・地域連携・助成事業(第4項)
の3つについては、消費税が非課税となります。
消費税が課税されるもの
社会福祉事業や更生保護事業であっても消費税が課税されるものがあります。
規定を分けてみましょう。
(後半に掲載しています。)
—
A
・社会福祉法第2条第2項第4号に規定する障害者支援施設を経営する事業
・社会福祉法第2条第2項第7号に規定する授産施設を経営する事業
B
同条(社会福祉法第2条)第3項第1号の2に規定する
認定生活困窮者就労訓練事業
C
同項(社会福祉法第2条第3項)第4号の2に規定する
地域活動支援センターを経営する事業
D
同号(社会福祉法第2条第3項第4号の2)に規定する障害福祉サービス事業
(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第五条第七項、第十三項又は第十四項(定義)に規定する生活介護、就労移行支援又は就労継続支援を行う事業に限る。)
において生産活動としての作業に基づき行われるもの
及び
政令で定めるもの
を除く。
—
・生産活動としての作業に基づき行われるもの
・政令で定めるもの
の2つが消費税の非課税から除外されます。
生産活動
生産活動については、消費税法基本通達6-7-6(生産活動等の意義)を確認してみましょう。
1が生産活動の定義、2が生産活動が行われる事業の定義です。
生産活動とは、要援護者の
・自立
・自活
・社会復帰
のための訓練、職業供与などの活動において行われる資産の譲渡等(例、物品の販売やサービス提供)をいいます。
ただし、
・要援護者に対する養護や援護
・要援護者に対する給食や入浴等など
については、生産活動に該当しないため留意しましょう。
生産活動が行われる事業
要援護者に対して、就労や技能の習得に必要な訓練の提供や職業の供与などを行い、要援護者の自立を助長し、自活を目的とする次の事業を「生産活動が行われる事業」といいます。
次の事業は、7つです。
社会福祉法第2条第2項
・第4号、障害者支援施設を経営する事業
・第7号、授産施設を経営する事業
社会福祉法第2条第3項第1号の2
・認定生活困窮者就労訓練事業
社会福祉法第2条第3項第4号の2
・地域活動支援センターを経営する事業
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律
・第5条第7項、生活介護を行う事業
・第5条第13項、就労移行支援を行う事業
・第5条第14項、就労継続支援を行う事業
ただし、就労や技能の習得に必要な訓練などで製作される物品の販売などについては、消費税の非課税から除外されるため、消費税が課税されます。
理由は、買い手が消費税の控除をできるようにするためです。
政令で定めるものについても消費税の非課税から除外されています。規定を確認してみましょう。
4 法別表第二第七号ロに規定する政令で定めるものは、同号イの規定に該当する資産の譲渡等とする。
消費税法第14条の2第4項、令和7年4月1日施行
同号イは、消費税法別表第2第7号イのことです。
イ 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の規定に基づく居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス(訪問介護、訪問入浴介護その他の政令で定めるものに限る。)、施設介護サービス費の支給に係る施設サービス(政令で定めるものを除く。)その他これらに類するものとして政令で定めるもの
消費税法別表第2第7号イ、令和7年6月20日施行
ロのカッコ書きで消費税の非課税から除外されている理由は、イの介護保険サービスなどの非課税が優先されるからです。
参考情報
今回確認した規定は、こちら↓
ロ 社会福祉法第二条(定義)に規定する社会福祉事業及び更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)第二条第一項(定義)に規定する更生保護事業として行われる資産の譲渡等(社会福祉法第二条第二項第四号若しくは第七号に規定する障害者支援施設若しくは授産施設を経営する事業、同条第三項第一号の二に規定する認定生活困窮者就労訓練事業、同項第四号の二に規定する地域活動支援センターを経営する事業又は同号に規定する障害福祉サービス事業(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第五条第七項、第十三項又は第十四項(定義)に規定する生活介護、就労移行支援又は就労継続支援を行う事業に限る。)において生産活動としての作業に基づき行われるもの及び政令で定めるものを除く。)
消費税法別表第2第7号ロ、令和7年6月20日施行
消費税法基本通達6-7-6、生産活動等の意義
6-7-6 法別表第二第7号ロかっこ書《社会福祉事業等に係る資産の譲渡等》に規定する「生産活動」及び当該「生産活動」が行われる事業の意義は次のとおりである。(平12課消2-10により改正及び条変更(旧6-7-2)、平18課消1-43、平24課消1-7、平25課消1-34、平27課消1-9、令5課消2-9により改正)
(1) 生産活動とは、(2)に掲げる事業において行われる身体上若しくは精神上又は世帯の事情等により、就業能力の限られている者(以下6-7-6において「要援護者」という。)の「自立」、「自活」及び「社会復帰」のための訓練、職業供与等の活動において行われる物品の販売、サービスの提供その他の資産の譲渡等をいう。
なお、(2)に掲げる事業では、このような生産活動のほか、要援護者に対する養護又は援護及び要援護者に対する給食又は入浴等の便宜供与等も行われているが、当該便宜供与等は生産活動には該当しないのであるから留意する。
(2) 「生産活動」が行われる事業とは、要援護者に対して、就労又は技能の習得のために必要な訓練の提供や職業の供与等を行い、要援護者の自立を助長し、自活させることを目的とする次に掲げる事業及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第7項、第13項又は第14項《定義》に規定する生活介護、就労移行支援又は就労継続支援を行う事業をいう。
イ 社会福祉法第2条第2項第4号又は第7号《定義》に規定する障害者支援施設又は授産施設を経営する事業
ロ 社会福祉法第2条第3項第1号の2《定義》に規定する認定生活困窮者就労訓練事業
ハ 社会福祉法第2条第3項第4号の2《定義》に規定する地域活動支援センターを経営する事業
(注) 上記事業において行われる就労又は技能の習得のために必要な訓練等の過程において製作等される物品の販売その他の資産の譲渡等は、法別表第二第7号ロかっこ書の規定により課税されることとなる。
社会福祉法、令和7年6月1日施行
第五条 この法律において「障害福祉サービス」とは、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、短期入所、重度障害者等包括支援、施設入所支援、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、自立生活援助及び共同生活援助をいい、「障害福祉サービス事業」とは、障害福祉サービス(障害者支援施設、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法(平成十四年法律第百六十七号)第十一条第一号の規定により独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園が設置する施設(以下「のぞみの園」という。)その他主務省令で定める施設において行われる施設障害福祉サービス(施設入所支援及び主務省令で定める障害福祉サービスをいう。以下同じ。)を除く。)を行う事業をいう。
7 この法律において「生活介護」とは、常時介護を要する障害者として主務省令で定める者につき、主として昼間において、障害者支援施設その他の主務省令で定める施設において行われる入浴、排せつ又は食事の介護、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。
13 この法律において「就労移行支援」とは、就労を希望する障害者及び通常の事業所に雇用されている障害者であって主務省令で定める事由により当該事業所での就労に必要な知識及び能力の向上のための支援を一時的に必要とするものにつき、主務省令で定める期間にわたり、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。
14 この法律において「就労継続支援」とは、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者及び通常の事業所に雇用されている障害者であって主務省令で定める事由により当該事業所での就労に必要な知識及び能力の向上のための支援を一時的に必要とするものにつき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。