移転価格税制のローカルファイル


今回は、移転価格税制のローカルファイルに関する規定を確認してみましょう。

ローカルファイル

移転価格税制が適用されると、実際の取引金額が独立企業間価格に修正され法人税が計算されます。この独立企業間価格を計算するための書類を「ローカルファイル」といいます。

参考情報、国税庁、令和2年6月、
独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類
(ローカルファイル)作成に当たっての例示集
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/takokuseki_00.pdf

根拠規定は、こちら↓です。

6 法人が、当該事業年度において、当該法人に係る国外関連者との間で国外関連取引を行つた場合には、当該国外関連取引に係る第一項に規定する独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類として財務省令で定める書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この条において同じ。)の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む。)を、当該事業年度の法人税法第七十四条第一項又は第百四十四条の六第一項若しくは第二項の規定による申告書の提出期限までに作成し、又は取得し、財務省令で定めるところにより保存しなければならない。

租税特別措置法第66条の4第6項、令和7年10月1日施行

財務省令で定める書類(ローカルファイル)を
・法人税法第74条第1項
・第144条の6第1項若しくは第2項
の規定による申告書の提出期限までに作成し、又は取得し、財務省令で定めるところにより保存しなければならない。

とあります。

ローカルファイルを確定申告書の提出期限までに
・作成
・取得
・保存
する必要があります。

ローカルファイルに関する規定は、租税特別措置法施行規則第22条の10第6項です。長い規定ですので、一部を確認します。

6 法第六十六条の四第六項に規定する財務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。
一 法第六十六条の四第一項に規定する国外関連取引(以下この項及び第十四項第一号において「国外関連取引」という。)の内容を記載した書類として次に掲げる書類

第1号、国外関連取引の内容を記載した書類として、9つ列挙されています。

二 法第六十六条の四第一項の法人が国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するための書類として次に掲げる書類

第2号、独立企業間価格を算定するための書類として、7つ列挙されています。

ローカルファイルは、全て作成する必要があるのでしょうか?

ローカルファイルの作成等の例外

ローカルファイルの作成等の義務は、第6項に規定されています。次の第7項に第6項の例外規定があります。

7 法人が当該事業年度の前事業年度において当該法人に係る一の国外関連者との間で行つた国外関連取引(前事業年度がない場合その他の政令で定める場合には、当該事業年度において当該法人と当該一の国外関連者との間で行つた国外関連取引)が次のいずれにも該当する場合又は当該法人が前事業年度において当該一の国外関連者との間で行つた国外関連取引がない場合として政令で定める場合には、当該法人が当該事業年度において当該一の国外関連者との間で行つた国外関連取引に係る第一項に規定する独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類については、前項の規定は、適用しない。
一 一の国外関連者との間で行つた国外関連取引につき、当該一の国外関連者から支払を受ける対価の額及び当該一の国外関連者に支払う対価の額の合計額が五十億円未満であること。
二 一の国外関連者との間で行つた国外関連取引(無形資産(有形資産及び金融資産以外の資産として政令で定めるものをいう。以下この号及び次項において同じ。)の譲渡若しくは貸付け(無形資産に係る権利の設定その他他の者に無形資産を使用させる一切の行為を含む。)又はこれらに類似する取引に限る。)につき、当該一の国外関連者から支払を受ける対価の額及び当該一の国外関連者に支払う対価の額の合計額が三億円未満であること。

租税特別措置法第66条の4第7項、令和7年10月1日施行

「前項の規定は、適用しない。」とあります。前項は、第6項のローカルファイルの作成等の義務規定です。

何か要件を満たせば、作成等の義務規定が適用されないと確認できます。

要件を見てみましょう。

A、法人が当該事業年度の前事業年度において当該法人に係る一の国外関連者との間で行つた国外関連取引(省略)が次のいずれにも該当する場合

又は

B、当該法人が前事業年度において当該一の国外関連者との間で行つた国外関連取引がない場合として政令で定める場合

A又はBが、要件です。
AもBも、前事業年度で判定します。

Aの「次のいずれにも」は、第1号と第2号を指しています。

一 一の国外関連者との間で行つた国外関連取引につき、当該一の国外関連者から支払を受ける対価の額及び当該一の国外関連者に支払う対価の額の合計額が五十億円未満であること。

取引価格の合計額<50億円の場合です。
1つの国外関連者で判定します。

二 一の国外関連者との間で行つた国外関連取引(無形資産(有形資産及び金融資産以外の資産として政令で定めるものをいう。以下この号及び次項において同じ。)の譲渡若しくは貸付け(無形資産に係る権利の設定その他他の者に無形資産を使用させる一切の行為を含む。)又はこれらに類似する取引に限る。)につき、当該一の国外関連者から支払を受ける対価の額及び当該一の国外関連者に支払う対価の額の合計額が三億円未満であること。

取引価格の合計額<3億円未満の場合です。
こちらも1つの国外関連者で判定します。

第1号と異なり、国外関連取引が限定されています。

無形資産(有形資産及び金融資産以外の資産として政令で定めるものをいう。以下この号及び次項において同じ。)の譲渡若しくは貸付け(無形資産に係る権利の設定その他他の者に無形資産を使用させる一切の行為を含む。)又はこれらに類似する取引に限る。

・無形資産の譲渡
・無形資産の貸付け
・これらに類似する取引
に限定されています。

・第1号は、一般的な取引、50億円未満
・第2号は、無形資産の取引、3億円未満
いずれにも該当する場合とありますので、両方を満たす必要があります。

Bは、政令を確認する必要があります。

要件を満たした場合、

当該法人が当該事業年度において当該一の国外関連者との間で行つた国外関連取引に係る第一項に規定する独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類については、前項の規定は、適用しない。

とありますので、第1項に規定する独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)については、作成等の義務が免除されています。

参考情報

おまけ

取引先第1号、一般的な取引、
50億円未満
第2号、無形資産の取引、3億円未満判定
国外関連者A義務免除
国外関連者B×義務あり
国外関連者C×義務あり
国外関連者D××義務あり

国税庁、移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/itenkakakuzeisei/index.htm

PAGE TOP