空き家を譲渡した場合の3000万円の特別控除


今回は、空き家を譲渡した場合の3000万円の特別控除を確認します。

特別控除を認めている理由

空き家を譲渡した場合の3000万円の特別控除は、
「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除」に追加された規定です。

居住用財産の特別控除については、
「実際に住んでいる自宅等」と「過去住んでいた自宅等」が対象です。

空き家の特別控除については、
自宅等ではなく「一定の要件を満たす空き家」の譲渡が対象となります。

空き家が特例対象となる理由は、
空き家のまま放置すると倒壊等のリスクがあるからです。

国としては、空き家を耐震改修するか取り壊して欲しいわけですね。

そこで、空き家を耐震改修するか取り壊した上で
譲渡する場合の特別控除の規定が用意されました。

居住用家屋ではない空き家の譲渡に特別控除を認めているため、
要件が細かくなっており、
実際には要件を満たさないまま譲渡するケースもあるようです。

控除額が3000万円と大きいため、
特例が使用できるのであれば使用したいですね。

内容

1、対象者
相続又は遺贈(死因贈与を含む)による被相続人居住用家屋と
被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人(包括受遺者を含む)です。

2、譲渡時期
平成28年4月1日から令和5年12月31日まで
(改正により4年延長)

3、対象となる資産
被相続人居住用家屋とその土地等

4、要件
対象譲渡をした場合

対象となる資産(耐震改修する場合)

対象となる資産は「被相続人居住用家屋」とその土地です。
譲渡した本人の自宅かどうかは関係ありません。
被相続人居住用家屋は要件が細かいため、別途確認します。

被相続人居住用家屋は、相続後の増築、改築(注)、修繕又は
模様替えに係る部分を含み、一定の要件を満たすものに限ります。

注、被相続人居住用家屋の全部の取壊し又は除却をした後にする改築や
その全部が滅失した後にする改築を除きます。

空き家を取り壊して建て替えてしまうと
倒壊等のリスクがなくなるため、
空き家の特別控除は使用できなくなります。

一定の要件は次の2つです。
イ、相続時から譲渡時まで、事業・貸付・居住の用に供さないこと
ロ、譲渡時に一定の耐震基準を満たすもの

被相続人死亡                譲渡時
--|--------------------|
  相続---空き家--------耐震改修済×
  相続---空き家の土地----------×

対象となる資産(全部を取り壊す場合)

空き家を全部取り壊す場合は、被相続人居住用家屋に使用していた土地等が
特別控除の対象となります。こちらも一定の要件を満たす必要があります。

一定の要件は次の3つです。
イ、相続時から取壊し・除却・滅失時まで事業・貸付・居住の用に供さないこと
ロ、相続時から譲渡時まで事業・貸付・居住の用に供さないこと
ハ、取壊し・除却・滅失時から譲渡時まで、土地の上に建物又は構築物の建てないこと

イは建物、ロとハは土地です。

被相続人死亡     取壊し時       譲渡時
--|---------|----------|
  相続--空き家---×
  相続--空き家の土地----更地-----×

対象譲渡

対象譲渡とは、その相続開始日から相続開始日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にしたものをいいます。この期間は、居住用財産の特別控除と同じです。

例えば、2022年12月1日に相続等により取得した場合は、
2023年(1年目)、2024年(2年目)、2025年(3年目)とカウントして、
2025年12月31日までに空き家などを売却する必要があります。

ただし、次の場合は特別控除が使用できません。
・相続税額の取得費加算(措法39条)を使用する場合
・譲渡対価が1億円を超える場合
また、同じ相続人が空き家の特別控除を2度使用することもできません。

特別控除が使用できる被相続人居住用家屋(居住用割合)
(政令で定める部分)

政令で定める部分は、
被相続人居住用家屋の譲渡対価の額×居住用割合で計算します。

計算パターンは2つです。
1つ目が相続開始「直前」の居住用割合を用いる場合と
2つ目が特定事由「直前」の居住用割合を用いる場合です。

相続開始「直前」において被相続人の居住用に供されていた被相続人居住用家屋の場合

その相続開始「直前」における被相続人居住用家屋の床面積のうちにその相続開始「直前」におけるその被相続人の居住用に供されていた部分の床面積の占める割合

例えば、空き家と土地を3,000万円で譲渡した場合に、使用割合が居住用70%、居住用以外が30%ある場合

譲渡対価3,000万円×70%=2,100万円が特別控除の対象となります。

対象従前居住用に供されていた被相続人居住用家屋の場合

特定事由により被相続人居住用家屋が被相続人の居住用に供されなくなる「直前」におけるその被相続人居住用家屋の床面積のうちにその居住用に供されなくなる「直前」におけるその被相続人の居住用に供されていた部分の床面積の占める割合

計算方法は1と同じです。居住割合のタイミングが異なります。

特別控除は、相続直前に被相続人が居住していることが要件となります。例外として、相続直前に被相続人が居住していなくても特別控除が使用できる場合があり、「特定事由」といいます。

被相続人の
家屋-----居住×(特定事由)------死亡
            |
   居住していた ← | → 居住しなくなる。
   居住用割合で計算 |

特定事由の場合については、
特定事由「直前」の居住用の使用割合で計算します。
1の相続開始「直前」の使用割合は0%だからです。

参考規定

3 相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下第五項までにおいて同じ。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人(包括受遺者を含む。以下この項において同じ。)が、平成二十八年四月一日から令和五年十二月三十一日までの間に、次に掲げる譲渡(当該相続の開始があつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間にしたものに限るものとし、第三十九条の規定の適用を受けるもの及びその譲渡の対価の額が一億円を超えるものを除く。以下この条において「対象譲渡」という。)をした場合(当該相続人が既に当該相続又は遺贈に係る当該被相続人居住用家屋又は当該被相続人居住用家屋の敷地等の対象譲渡についてこの項の規定の適用を受けている場合を除く。)には、第一項に規定する居住用財産を譲渡した場合に該当するものとみなして、同項の規定を適用する。

一 <耐震改修する場合>
当該相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋(当該相続の時後に当該被相続人居住用家屋につき行われた増築、改築(当該被相続人居住用家屋の全部の取壊し又は除却をした後にするもの及びその全部が滅失をした後にするものを除く。)、修繕又は模様替に係る部分を含むものとし、次に掲げる要件を満たすものに限る。以下この号において同じ。)政令で定める部分の譲渡又は当該被相続人居住用家屋とともにする当該相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(イに掲げる要件を満たすものに限る。)政令で定める部分の譲渡
イ 当該相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
ロ 当該譲渡の時において地震に対する安全性に係る規定又は基準として政令で定めるものに適合するものであること。

二 <取り壊す場合>
当該相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋(イに掲げる要件を満たすものに限る。)の全部の取壊し若しくは除却をした後又はその全部が滅失をした後
における当該相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(ロ及びハに掲げる要件を満たすものに限る。)政令で定める部分の譲渡
イ 当該相続の時から当該取壊し、除却又は滅失の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
ロ 当該相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
ハ 当該取壊し、除却又は滅失の時から当該譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。

租税特別措置法35条
PAGE TOP