簡易課税の事後選択と受託事業者


今回は、簡易課税の事後選択と受託事業者を確認してみましょう。

後から簡易課税が選択できる場合

消費税については、簡易課税(売上から支払った消費税を計算する方法)の選択が可能です。選択した後に止めることも可能です。

選択する場合も止める場合も、原則として事前の手続きが必要ですが、一定の場合は、事後の手続きも可能です。

一定の場合は、次の2つです。
・事業を開始した場合など
・やむを得ない事情がある。

法人課税信託は、
・固有事業者
・受託事業者
をそれぞれ別の人として取り扱う必要がありますが、受託事業者の簡易課税については、固有事業者の取扱いに連動する特例が設けられています。

参考規定はこちら↓

8 受託事業者のその課税期間の初日において、当該受託事業者に係る法人課税信託の固有事業者が、当該初日の属する当該固有事業者の課税期間につき第三十七条第一項の規定の適用を受ける事業者である場合に限り、当該受託事業者の当該初日の属する課税期間については、同項の規定を適用する。この場合において、同項中「事業者(」とあるのは「受託事業者(第十五条第三項に規定する受託事業者をいい、第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)のその課税期間の初日において、当該受託事業者に係る法人課税信託(第十五条第一項に規定する法人課税信託をいう。)の固有事業者(同条第四項に規定する固有事業者をいい、」と、「その納税地を所轄する税務署長にその」とあるのは「その」と、「この項の規定の適用を受ける旨を記載した届出書を提出した場合には、当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間(当該届出書を提出した日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、当該課税期間)以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が五千万円を超える課税期間及び分割等に係る課税期間を除く。)」とあるのは「この項の規定の適用を受ける事業者である場合には、当該初日の属する当該受託事業者の課税期間」と、同項各号中「当該事業者」とあるのは「当該受託事業者」とする。

消費税法第15条第8項、施行日令和6年4月9日

要件を満たす場合、自動的に受託事業者は簡易課税の計算となります。固有事業者が事後の手続きをした場合、受託事業者にも影響が生じるのでしょうか?

簡易課税を選択する場合

規定を確認してみましょう。

4 固有事業者の法第十五条第八項に規定する初日の属する課税期間(以下この項において「固有課税期間」という。)が第五十六条第一項各号に掲げる課税期間のいずれかである場合又は固有事業者が固有課税期間につき第五十七条の二第一項又は第二項の規定の適用を受けた場合における法第十五条第八項の規定の適用については、次に定めるところによる。

消費税法施行令第28条第4項柱書き、施行日令和6年4月1日

固有事業者の消費税法第15条第8項に規定する
・初日の属する課税期間
を「固有課税期間」といいます。

この初日は、受託事業者の課税期間の初日を指しています。受託事業者の課税期間の初日の属する固有事業者の課税期間を「固有課税期間」といいます。

固有課税期間が
・事業を開始した日の属する課税期間など(施行令第56条第1項各号)
・後から簡易課税を選択する場合(施行令第57条の2第1項)
・後から簡易課税の選択を止める場合(施行令第57条の2第2項)
に該当するときは、次に定めるところによる、と規定されています。

続きを確認してみましょう。
・1号は、簡易課税を選択する場合
・2号は、簡易課税の選択を止める場合
が規定されています。

1号を確認してみましょう。

一 固有課税期間が第五十六条第一項各号に掲げる課税期間のいずれかである場合において、固有事業者が当該固有課税期間につき法第三十七条第一項の規定の適用を受けるため同項の規定による届出書を当該固有課税期間中に提出した場合(当該固有課税期間の末日前に法第十五条第八項に規定する初日の属する同項の受託事業者の課税期間が終了する場合には、当該課税期間の末日までに提出した場合に限る。)又は固有課税期間が固有事業者の法第三十七条第一項の規定の適用を受けようとする課税期間である場合において、当該固有事業者が第五十七条の二第一項に規定するやむを得ない事情があるため当該固有課税期間につき同項の承認を受けたときは、法第十五条第八項に規定する初日において、これらの固有事業者は法第三十七条第一項の規定の適用を受ける事業者であつたものとみなす。

消費税法施行令第28条第4項第1号、施行日令和6年4月1日

2つ規定されています。

考え方は、課税事業者を選択する場合と同じです。固有事業者の事後手続きが認められる場合は、受託事業者についても自動的に簡易課税となります。

簡易課税の選択を止める場合

規定の続きを確認してみましょう。

二 固有課税期間が固有事業者の法第三十七条第一項の規定の適用を受けることをやめようとする課税期間である場合において、当該固有事業者が第五十七条の二第二項に規定するやむを得ない事情があるため当該固有課税期間につき同項の承認を受けたときは、法第十五条第八項に規定する初日において、当該固有事業者は法第三十七条第一項の規定の適用を受ける事業者でなかつたものとみなす。

消費税法施行令第28条第4項第2号、施行日令和6年4月1日

考え方は、課税事業者の選択を止める場合と同じです。固有事業者が承認された場合は、受託事業者についても自動的に原則の計算(受け取った消費税から支払った消費税をマイナス)となります。

受託事業者の制限の違い

制限の違いについても、課税事業者の選択などの取扱いと同じです。

事業を開始した日の属する課税期間などについては、受託事業者の課税期間の末日制限がありますが、やむを得ない事情による承認については、末日制限がありません。

やむを得ない事情の場合は、申請期限や承認が受託事業者の課税期間の末日を超えることがあるからです。

参考規定

事業を開始した日の属する課税期間等の範囲

第五十六条 法第三十七条第一項に規定する事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間は、次に掲げる課税期間とする。
一 事業者が国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間
二 個人事業者が相続により法第三十七条第一項の規定の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合における当該相続のあつた日の属する課税期間(法第十条第一項の規定により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間に限る。)
三 法人が合併(合併により法人を設立する場合を除く。)により法第三十七条第一項の規定の適用を受けていた被合併法人の事業を承継した場合における当該合併があつた日の属する課税期間(法第十一条第一項の規定により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間に限る。)
四 法人が吸収分割により法第三十七条第一項の規定の適用を受けていた分割法人の事業を承継した場合における当該吸収分割があつた日の属する課税期間(法第十二条第五項の規定により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間に限る。)

消費税法施行令第56条第1項、施行日令和6年4月1日

中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例の適用を受ける旨の届出等に関する特例

第五十七条の二 法第三十七条第一項の規定の適用を受けようとする事業者が、やむを得ない事情があるため同項の規定による届出書(以下この条において「簡易課税制度選択適用届出書」という。)を同項の規定の適用を受けようとする課税期間の初日の前日(当該課税期間が第五十六条第一項に規定する課税期間である場合には、当該課税期間の末日。以下この項、第三項及び第四項において同じ。)までに提出できなかつた場合において、当該課税期間以後の課税期間につき法第三十七条第一項の規定の適用を受けることについてその納税地を所轄する税務署長の承認を受けたときは、当該事業者は簡易課税制度選択適用届出書を当該適用を受けようとする課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなす。
2 法第三十七条第一項の規定の適用を受けることをやめようとする事業者が、やむを得ない事情があるため同条第五項の規定による届出書(事業を廃止した旨を記載した届出書を除く。以下この条において「簡易課税制度選択不適用届出書」という。)を法第三十七条第一項の規定の適用を受けることをやめようとする課税期間の初日の前日までに提出できなかつた場合において、当該課税期間以後の課税期間につき同項の規定の適用を受けることをやめることについてその納税地を所轄する税務署長の承認を受けたときは、当該事業者は簡易課税制度選択不適用届出書を当該適用を受けることをやめようとする課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなす。

消費税法施行令第57条の2第1項、第2項、施行日令和6年4月1日

PAGE TOP