簡易課税制度の手続きと注意点


売上にみなし仕入率をかけて、控除する消費税を計算する簡易課税制度については、一定の手続きがあります。今回は手続きについて説明します。

簡易課税制度を選択するための手続き

ポイントは次の3つです。

  • 課税事業者であること。
  • 2年前(基準期間)の課税売上高が5000万円以下であること。
  • 「簡易課税制度を選択するための届出書」を税務署長に提出すること。

1、課税事業者であること。

免税事業者は簡易課税制度を選択できません。

免税事業者が簡易課税制度を選択するためには、
別の手続きで課税事業者を選択する必要があります。

免税事業者が自ら課税事業者を選択して、
簡易課税制度を選択することは通常ありません。

2、基準期間(2年前)の課税売上高が5000万円以下であること。

令和3年分の判定をする場合は、令和1年分の課税売上高で判定します。
仮に令和1年分の課税売上高が5000万円を超えていると、
簡易課税制度を使えないため、実額で消費税を集計する必要があります。

3、簡易課税制度を選択するための「届出書」を税務署長に提出すること。

手続きなしに簡易課税制度を選択できません。
利用した年度が始まる「前」に届出書を提出する必要があります。

例えば、R4/4/1-R5/3/31の消費税計算の場合、
R4/3/31までに届出書を提出する必要があります。

簡易課税制度の注意点

簡易課税制度の注意点は次の3つです。

  • 簡易課税制度の要件を満たした場合は、必ず簡易課税制度で計算。
  • 簡易課税制度は一定期間継続しないと止められない。
  • 簡易課税制度を止める場合は、取り止めの届出書が必要。

1、要件を満たした場合は必ず簡易課税制度

簡易課税制度の計算が強制されます。
たとえ、設備投資を行って実額で支払った消費税の方が
多かったとしても実額計算を選択できません。

2、簡易課税制度は一定期間継続しないと止められない。

簡易課税制度は「2年縛り」があります。
2年間継続しないと簡易課税は止められません。

例えば、R3/3/31に簡易課税制度の選択届出書を提出した場合
R5/3月期(1年目)については、簡易課税制度となります。
R6/3月期(2年目)についても、強制で簡易課税制度となります。

3、簡易課税制度を止める場合は、取り止めの届出書が必要。

R7/3月期(3年目)から簡易課税制度を止める場合は、
事前に取り止めの届出書の提出が必要です。
上記の例の場合、R6/3/31までに提出が必要です。

事前の試算・計画が大事

簡易課税制度は要件を満たした場合、必ず簡易計算となります。
設備投資が予定されている場合は、
「実際に支払った消費税」と「簡易計算した消費税」を比較して
どちらが有利か事前にシミュレーションをする必要があります。

簡易課税制度は2年目も強制されますので、2年目も試算も必要です。

届出状況の管理が大事

簡易課税制度は、利用する場合も止める場合も、
事前に手続きを行う必要があります。
手続きをしない限り、過去の手続きが有効ですので、
届出書の提出の有無を確認しておきましょう。

例えば、免税事業者が設備投資を行う予定があり、
課税事業者を自ら選択して、消費税の還付申告を行ったところ、
以前に簡易課税制度選択届出書が提出されており、
消費税の還付を受けられないことがあります。

以前に提出された簡易課税制度選択届出書は、
取り止めの届出書を提出しない限り有効です。

簡易課税制度選択届出書を提出したことを忘れたまま、
課税事業者を選択してしまうと、強制的に簡易課税制度となり、
設備投資に支払った消費税は控除できなくなります。

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