試験研究費の特別控除_欠損金増加合計額がある場合の控除上限額の加算特例


今回は、試験研究費の特別控除のうち
「欠損金増加合計額がある場合の控除上限額の加算特例」を確認します。

規定の目的

規定の目的を整理します。

1、再計算により損金算入額が増加する。
2、損益通算の遮断措置により調整前法人税額が変わらず、
 過大に特別控除されているため、特別控除額を減額する。
 (非特定欠損金の増加)
3、特別控除額が減額しきれないため、追加の法人税額が発生する。
———-
4、非特定欠損金額が実際に欠損金の通算により損金算入されると
 調整前法人税額が減少する。
5、調整前法人税額が減少すると控除上限額が減少し、
 特別控除額が減少する可能性がある。
6、控除上限額について、欠損金の通算がなかったものとして加算調整する。

過去に考慮できなかった控除上限額の計算について、
進行期で増加欠損金額を所得とみなして法人税額と控除上限額を計算して、
当期の控除上限額に反映(加算)させることが目的です。

欠損金増加合計額がある場合の控除上限額の加算(措置法42条の4第11項)

規定を整理します。

通算法人等が第1項又は第4項の規定の適用を受ける
これらの規定に規定する事業年度(対象事業年度)において、
通算法人等及び他の通算法人の過去適用等事業年度(注1)における
欠損金増加合計額(注2)がある場合には、
その通算法人等のその対象事業年度の取扱いは一定の方法によります。

欠損金増加合計額

1、過去適用等事業年度の非特定欠損金額
2、当初申告の過去適用等事業年度の非特定欠損金額(当初非特定欠損金額)
3、1>2の場合の超える部分の金額を「各欠損金増加額」といいます。

「各欠損金増加額」の合計額を「欠損金増加合計額」といいます。

別表6(15)、欠損金増加合計額に係る法人税額相当額の計算に関する明細書

1欄、当初非特定欠損金額
2欄、非特定欠損金額(再計算)
3欄、各欠損金増加額(2-1=増加部分の計算)
4欄、既加算対象額(計算済みの部分)
5欄、差引各欠損金増加額(3-4=今回、みなし所得)
6欄、欠損金増加合計額
 通算法人の場合は、5の計を消して合計額を転記します。
 通算法人以外の場合は、5の計を転記します。

通算法人の場合(一定の方法)

1号、第8項第3号の通算法人
税額控除可能額の計算については、
第8項第3号ロの金額(調整前法人税額の合計額×25%)に、
欠損金増加合計額を所得の金額とみなして計算した法人税の額として
政令金額×25%(イ、ロに該当する場合は一定金額を加算)加算します。
(控除上限額の上乗せ)
イ、第8項第9号イの場合(控除上限額の特例)
ロ、第8項第9号ロの場合(中小企業者等控除上限額の特例)

第8項第3号、全体計算
イ、試験研究費の額の合計額×一定割合(上限10%、中小企業者等12%)
ロ、調整前法人税額の合計額×25%
ハ、調整前法人税額の合計額

政令金額

通算親法人が普通法人の場合(1号)と
普通法人以外の場合(2号)に分かれます。

1号、通算親法人が普通法人(特定の医療法人を除く)の場合
(税率が同じ場合)

イ、ロ以外の法人
ロ、中小通算法人
軽減対象所得金額は800万円(月数按分あり)とします。


2号、1号以外の場合
(税率が異なる場合)

イの金額÷ロの数

イ、欠損金増加合計額を所得とみなして
通算親法人の法人税額を(1)(2)に応じて計算+
通算子法人の法人税額を1号イ、ロに応じて計算×「他の通算法人の数」
(1)、協同組合等
(2)、特定の医療法人

ロ、他の通算法人の数+1


通算親法人の税率と通算子法人の税率が異なるため、
通算親法人の法人税額と通算子法人の法人税額を合計して
法人数で割って法人税額の平均を求めています。

計算イメージ、P社、S1社、S2社の場合
欠損金増加合計額10,000

通算親法人の法人税額10,000×19%=1,900
通算子法人の法人税額10,000×23.2%=2,320×2社(他の通算法人の数)=4,640
1,900+4,640=6,540÷3社(他の通算法人の数2社+1社)=2,180
(法人税率21.8%で計算したことと同じ。)

法人税額基準額はあくまでも全体計算なので、
全社同じ金額を加算するための計算です。

別表の記載

別表6(15)、欠損金増加合計額に係る法人税額相当額の計算に関する明細書

7欄、当該法人の法人税額相当額
8欄、通算親法人又は通算子法人としての法人税額相当額

9欄、法人税額相当額
(7)又は
(((7)+(8)×他の通算法人の数)又は((7)×他の通算法人の数+(8))
÷(他の通算法人の数+1)

一般的なケース

「当該法人の法人税額相当額7」の欄「通算親法人又は通算子法人としての法人税額相当額8」の欄「法人税額相当額9」の欄
通算親法人と通算子法人の税率が同じ場合に記載に記載イ ロに掲げる法人以外の法人
記載しません。

(ロは、通算親法人が協同組合等、特定の医療法人である場合)
イ ⑶イに掲げる法人
「又は((⑺+⑻×他の通算法人の数)又は(⑺×他の通算法人の数+⑻)÷(他の通算法人の数+1))」を消します。

消すと(7)当該法人の法人税額相当額だけが残ります。
記載方法

以下、計算イメージなので正確な金額ではありません。

税率が同じ場合の記載方法

6欄、欠損金増加合計額10,000
7欄、欠損金増加合計額10,000×23.2%=2,320
8欄、記載なし
9欄、7欄の金額 2,320

税率が異なる場合の記載方法

自己が通算親法人の場合
7欄、通算親法人の法人税額1,900
8欄、通算子法人の法人税額2,320

9欄、法人税額相当額
7欄(親)+8欄(子)×他の通算法人の数=合計額÷(他の通算法人の数+1)
1,900+2,320×2社=6,540÷3社=2,180

自己が通算子法人の場合
7欄、通算子法人の法人税額2,320
8欄、通算親法人の法人税額1,900

9欄、法人税額相当額
7欄(子)×他の通算法人の数+8欄(親)=合計額÷(他の通算法人の数+1)
2,320×2社+1,900=6,540÷3社=2,180

同じ金額2,180を加算します。

通算法人以外の場合(一定の方法、離脱法人)

2号、1号法人以外の法人(離脱法人、政令規定なし)
控除上限額、中小企業者等控除上限額の計算については、
調整前法人税額に、欠損金額合計額のうちその通算法人等に係る各欠損金増加額をその通算法人等の所得の金額として計算した法人税の額加算します。
(控除上限額の上乗せ)

調整前法人税額=
調整前法人税額+各欠損金増加額(離脱法人のみなし所得)×法人税率

離脱した場合であっても控除上限額の加算特例が適用できます。

参考規定など

財務省、連結納税制度の見直しに関する法人税法等の改正、P1030-1031等
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2020/explanation/pdf/p820-1177.pdf

別表6(15)、欠損金増加合計額に係る法人税額相当額の計算に関する明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2023/pdf/06(15).pdf

別表6(15)の記載の仕方
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2023/pdf/06(15)-ki.pdf

租税特別措置法施行令27条の4、控除上限額の加算

 法第四十二条の四第十一項第一号に規定する政令で定める金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。この場合において、法人税法第六十六条第七項に規定する軽減対象所得金額は八百万円(法第四十二条の四第十一項第一号の通算法人等の第一号及び第二号イの対象事業年度終了の日に終了する当該通算法人等に係る通算親法人の事業年度が一年に満たない場合には、八百万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額)と、通算子法人である法第四十二条の四第十一項第一号の通算法人等の第一号及び第二号イの対象事業年度の月数は当該対象事業年度終了の日に終了する当該通算法人等に係る通算親法人の事業年度の月数として、当該各号に定める金額を計算するものとする。

 法第四十二条の四第十一項第一号の通算法人等に係る通算親法人が普通法人(法第六十七条の二第一項の規定による承認を受けている同項に規定する医療法人(次号イ(2)において「特定の医療法人」という。)を除く。)である場合 法第四十二条の四第十一項第一号の欠損金増加合計額を同号の対象事業年度の所得の金額とみなして、当該所得の金額につき当該対象事業年度終了の時において当該通算法人等が次に掲げる法人のいずれに該当するかに応じそれぞれ次に定める規定を適用するものとした場合に計算される法人税の額に相当する金額

 ロに掲げる法人以外の法人 法人税法第六十六条第一項

 法人税法第六十六条第六項に規定する中小通算法人 同条第一項及び第六項

 前号に掲げる場合以外の場合 イに掲げる金額をロに掲げる数で除して計算した金額

 法第四十二条の四第十一項第一号の欠損金増加合計額を同号の対象事業年度の所得の金額とみなして、当該所得の金額につき当該対象事業年度終了の時において同号の通算法人等に係る通算親法人が次に掲げる法人のいずれに該当するかに応じそれぞれ次に定める規定を適用するものとした場合に計算される法人税の額に相当する金額に、当該所得の金額につき当該対象事業年度終了の時において当該通算法人等に係る通算子法人が前号イ又はロに掲げる法人のいずれに該当するかに応じそれぞれ同号イ又はロに定める規定を適用するものとした場合に計算される法人税の額に相当する金額に当該対象事業年度終了の日において当該通算法人等との間に通算完全支配関係がある他の通算法人(ロにおいて「他の通算法人」という。)の数を乗じて計算した金額を加算した金額

(1) 協同組合等 法人税法第六十六条第三項(法第六十八条第一項に規定する協同組合等にあつては、同項(法第四十二条の三の二第三項第二号の規定により読み替えられた同条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により読み替えられた法人税法第六十六条第三項)

(2) 特定の医療法人 法第六十七条の二第一項

 他の通算法人の数に一を加算した数

租税特別措置法施行令27条の4

税率が異なる場合の計算方法の説明

一方で、通算親法人の用いる税率が通算子法人の用いる税率と異なる場合には、上記Bにより計算することとされています。この場合には、自己が通算親法人とした場合に計算される(通算親法人の場合には通算親法人として計算した)法人税額相当額に、自己が通算子法人とした場合に計算される(通算子法人の場合には通算子法人として計算した)法人税額相当額に自己以外の通算法人の数(通算親法人については通算子法人の数、通算子法人については通算親法人と他の通算子法人の数)を乗じて計算した金額を加算した金額(=各通算法人の法人税額相当額の合計額)を各通算法人の数で除して計算することとされています。

財務省、連結納税制度の見直しに関する法人税法等の改正、P1029
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