試験研究費の特別控除_調整対象金額が当初申告税額控除可能額を超える場合の控除


今回は、試験研究費の特別控除のうち
「調整対象金額が当初申告税額控除可能額を超える場合の控除」を確認します。

調整対象金額>当初申告税額控除可能額の場合の控除(措置法42条の4第13項)

規定を確認します。

青色申告書を提出する内国法人の各事業年度(各対象事業年度)終了時において、その内国法人又は他の内国法人(省略)の過去適用事業年度又は同日に終了する事業年度(以下、過去適用事業年度等)における第1項又は第4項の適用については、

要件1
第8項6号(税額控除可能額<当初申告税額控除可能額、法人税額加算)又は
第8項7号(調整後税額控除可能額<当初申告税額控除可能額、法人税額加算)の
適用があった場合において、

要件2
調整税額控除可能額(注2)と既取戻税額控除超過額(注3)との合計額(注4、調整対象金額)が当初申告税額控除可能額(省略)を超えるときは、

取扱い
その内国法人の
各対象事業年度の所得に対する調整前法人税額(一定の金額除く)から
一定の金額を控除します。

一定の金額
調整対象金額-当初申告税額控除可能額
(その金額>既取戻税額控除超過額は、既取戻税額控除超過額)に
その内国法人のその過去適用事業年度の「控除分配割合」を乗じて計算した金額


算式
要件1、法人税額加算額の適用があった場合(特別控除の制限を受けた場合)
要件2、調整対象金額>当初申告税額控除可能額
算式、調整前法人税額-(調整対象金額-当初申告税額控除可能額、既取戻税額控除超過額が限度)×控除分配割合


試験研究費の特別控除の再計算については、
他の法人の金額を固定して、自社の金額で再計算します。
この場合、固定して計算した金額の合計額>固定せずに計算した金額の合計額となる場合(過度に制限する場合)があるため、進行期に再調整(法人税額から控除)する規定です。

下記資料のP1034の金額を使って、規定を確認します。

財務省、連結納税制度の見直しに関する法人税法等の改正、P1031-1034
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2020/explanation/pdf/p820-1177.pdf

調整税額控除可能額(注2)

税額控除可能額を再計算します。

次の金額のうちいずれか少ない金額
1、過去適用事業年度における8項3号イの金額
2、過去適用事業年度の8項3号ロの金額-過去適用事業年度の8項7号の法人税額加算額


第8項第3号、全体計算(当初申告)
イ、試験研究費の額の合計額×一定割合(上限10%、中小企業者等12%)
ロ、調整前法人税額の合計額×25%
ハ、調整前法人税額の合計額


計算資料②
A社の試験研究費が300減少したことにより、
税額控除限度額が60から18に減少しています。

計算資料③
当初申告の控除上限額 50
C社の所得が170減少したことにより、
控除上限額が50から40に減少しています。

計算資料④
再計算後の税額控除可能額は、少ない金額の18となります。


別表6(16)
1欄、試験研究費基準額(全体の税額控除限度額)18
2欄、法人税額基準額(全体の控除上限額)50
3欄、法人税額加算額(C社)10
(A社の法人税額加算額17も合計すると27ですが次の計算は変わりません。)
4欄、調整税額控除可能額
18<50-10=40、少ない金額18
(当初申告税額控除可能額50と比較すると制限は32)

既取戻税額控除超過額(注3)

内国法人又は他の適用内国法人のその過去適用事業年度等の
8項6号の適用がある場合の8項6号イの税額控除超過額+
8項7号の法人税額加算額


実際に制限された金額を計算しています。

別表6(16)
3欄、A社の法人税額加算額17+C社の法人税額加算額10=27
5欄、A社の税額控除超過額15
実際には別表18(2)で集計して合計転記します。

再計算時に他の法人の金額を固定して計算した金額の合計額
(実際に制限された金額の合計額)は、42となります。

6欄、既取戻税額控除超過額
27+15=42

調整対象金額(注4)

調整対象金額=調整税額控除可能額(注2)+既取戻税額控除超過額(注3)

再計算した税額控除可能額18+実際に制限された金額42
(実際に制限された金額42が適正な制限額とした場合の税額控除可能額)

別表6(16)
8欄、調整対象金額、18+42=60

控除対象額

別表6(16)、10欄、控除対象額
6欄、8欄-9欄の少ない金額

6欄、既取戻税額控除超過額(実際に制限された金額) 42
8欄、調整対象金額 60
9欄、当初申告税額控除可能額(1回目に計算した特別控除額) 50
(6欄の実際に制限された金額を限度として、8欄-9欄の控除が可能です。)

42>60-50=10、少ない金額10が控除対象額となります。
10はC社の10という意味ではなく、
全体の金額のため控除分配割合(調整前法人税額の比)で按分します。

参考規定など

租税特別措置法42条の3第13項

別表6(16)、調整対象金額が当初申告税額控除可能額を超える場合の法人税額の特別控除に関する明細書https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2023/pdf/06(16).pdf

別表六(十六)の記載の仕方
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2023/pdf/06(16)-ki.pdf

計算メモ
1、試験研究費基準額 60 → 18
2、法人税額基準額 50 → 40
3、税額控除可能額 50 → 18

別々に計算した場合の制限は、A社32+C社10=42
全体再計算した場合は18と40の比較により18の控除(制限32)
実際制限額42とあるべき制限額32との差額10を
進行期で調整しているのでしょうね。
(計算順序を変えると結果が変わる可能性があります。)

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