課税事業者の事後選択と受託事業者


今回は、課税事業者の事後選択と受託事業者を確認してみましょう。

後から課税事業者が選択できる場合

消費税については、課税事業者(消費税を納める必要がある事業者)の選択が可能です。選択した後に止めることも可能です。

選択する場合も止める場合も、原則として事前の手続きが必要ですが、一定の場合は、事後の手続きも可能です。

一定の場合は、次の2つです。
・事業を開始した場合など
・やむを得ない事情がある。

法人課税信託は、
・固有事業者
・受託事業者
をそれぞれ別の人として取り扱う必要がありますが、受託事業者の納税義務については、固有事業者の納税義務に連動する特例が設けられています。

参考規定はこちら↓

6 受託事業者のその課税期間の初日において、当該受託事業者に係る法人課税信託の固有事業者が、当該初日の属する当該固有事業者の課税期間(その基準期間における課税売上高が千万円以下である課税期間に限る。)の初日において適格請求書発行事業者である場合又は当該課税期間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき第九条第四項の規定による届出書の提出により、若しくは第十条から第十二条の四までの規定により消費税を納める義務が免除されない事業者である場合には、当該受託事業者の当該初日の属する課税期間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、第九条第一項本文の規定は、適用しない。

消費税法第15条第6項、施行日令和6年4月9日

要件を満たす場合、自動的に受託事業者は課税事業者となります。固有事業者が事後の手続きをした場合、受託事業者にも影響が生じるのでしょうか?

課税事業者を選択する場合

規定を確認してみましょう。

2 固有事業者(法第十五条第四項に規定する固有事業者をいう。以下この条において同じ。)の法第十五条第六項に規定する初日の属する課税期間(以下この項において「固有課税期間」という。)が第二十条各号に掲げる課税期間のいずれかである場合又は固有事業者が固有課税期間につき第二十条の二第一項又は第二項の規定の適用を受けた場合における法第十五条第六項の規定の適用については、次に定めるところによる。

消費税法施行令第28条第2項柱書き、施行日令和6年4月1日

固有事業者の消費税法第15条第6項に規定する
・初日の属する課税期間
を「固有課税期間」といいます。

この初日は、受託事業者の課税期間の初日を指しています。受託事業者の課税期間の初日の属する固有事業者の課税期間を「固有課税期間」といいます。

固有課税期間が
・事業を開始した日の属する課税期間など(施行令第20条各号)
・後から課税事業者を選択する場合(施行令第20条の2第1項)
・後から課税事業者の選択を止める場合(施行令第20条の2第2項)
に該当するときは、次に定めるところによる、と規定されています。

続きを確認してみましょう。
・1号は、課税事業者を選択する場合
・2号は、課税事業者の選択を止める場合
が規定されています。

1号を確認してみましょう。

一 固有課税期間が第二十条各号に掲げる課税期間のいずれかである場合において、固有事業者が当該固有課税期間につき法第九条第四項の規定の適用を受けるため同項の規定による届出書を当該固有課税期間中に提出した場合(当該固有課税期間の末日前に法第十五条第六項に規定する初日の属する同項の受託事業者の課税期間が終了する場合には、当該課税期間の末日までに提出した場合に限る。)又は固有課税期間が固有事業者の法第九条第四項の規定の適用を受けようとする課税期間である場合において、当該固有事業者が第二十条の二第一項に規定するやむを得ない事情があるため当該固有課税期間につき同項の承認を受けたときは、法第十五条第六項に規定する初日において、これらの固有事業者は法第九条第四項の規定による届出書の提出により消費税を納める義務が免除されない事業者であつたものとみなす。

消費税法施行令第28条第2項第1号、施行日令和6年4月1日

2つ規定されています。

1つ目
固有課税期間が「事業を開始した日の属する課税期間等」に該当し、後から課税事業者を固有課税期間中に選択した場合(注1)には、初日において固有事業者は課税事業者として取り扱われます。

注1、カッコ書きで要件が追加されています。受託事業者の課税期間が先に終了する場合は、受託事業者の課税期間が終わる前に、固有事業者の手続きを済ませる必要があります。

固有事業者の事後手続きが認められる場合は、受託事業者についても自動的に課税事業者となります。

2つ目
固有課税期間が課税事業者を選択しようとする課税期間である場合に、やむを得ない事業に関する承認を受けたときは、初日において固有事業者は課税事業者として取り扱われます。

固有事業者が承認された場合は、受託事業者についても自動的に課税事業者となります。

課税事業者の選択を止める場合

規定の続きを確認してみましょう。

二 固有課税期間が固有事業者の法第九条第四項の規定の適用を受けることをやめようとする課税期間である場合において、当該固有事業者が第二十条の二第二項に規定するやむを得ない事情があるため当該固有課税期間につき同項の承認を受けたときは、法第十五条第六項に規定する初日において、当該固有事業者は法第九条第四項の規定による届出書の提出により消費税を納める義務が免除されない事業者でなかつたものとみなす。

消費税法施行令第28条第2項第2号、施行日令和6年4月1日

固有課税期間が課税事業者の選択を止めようとする課税期間である場合に、やむを得ない事業に関する承認を受けたときは、初日において固有事業者は免税事業者として取り扱われます。

固有事業者が承認された場合は、受託事業者についても自動的に免税事業者となります。

受託事業者の制限の違い

事業を開始した日の属する課税期間などについては、受託事業者の課税期間の末日制限がありますが、やむを得ない事情による承認については、末日制限がありません。

やむを得ない事情の場合は、申請期限や承認が受託事業者の課税期間の末日を超えることがあるからです。


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