課税仕入れの返品等があった場合の控除しきれない消費税の計算


今回は、課税仕入れの返品等があった場合の
控除しきれない消費税の計算を確認してみましょう。

内容

課税仕入れの返品等があった場合、
支払った消費税から、返品等の消費税をマイナスします。

マイナスしきれない金額については、
受け取った消費税にプラスします。

プラスする金額の計算は、次の2つに分かれます。
1号、全額控除方式、一括比例配分方式
2号、個別対応方式

1号の全額控除方式や一括比例配分方式の場合
マイナスしきれない金額が1つのため、
この金額を受け取った消費税にプラスします。

2号の個別対応方式の場合、
3パターンに分かれます。

個別対応方式の場合、
用途区分(課税売上対応、共通対応、非課税売上対応の3区分)を分けて
支払った消費税を修正するため、
プラスの残とマイナスの残が発生する場合があるからです。

具体例

具体的に見ていきましょう。

1つ目
・課税売上対応の修正後 +100
・共通対応の修正後 △120
の場合

課税売上対応100-共通対応120=△20
→ 20を売上消費税にプラスします。

2つ目
・課税売上対応の修正後 △150
・共通対応の修正後 100

共通対応100-課税売上対応150=△50
→ 50を売上消費税にプラスします。

3つ目
・課税売上対応の修正後 △150
・共通対応の修正後 △120

課税売上対応△150+共通対応△120=△270
→ 270を売上消費税にプラスします。

課税仕入れ等の税額の合計額の修正

先に確認した規定は、マイナスしきれない場合の取扱いです。
個別対応方式で通算した後、マイナスしきれない金額は、
売上消費税にプラスします。

通算した後、プラスになった場合
課税仕入れ等の税額の合計額を修正します。

例えば、
・課税売上対応の修正後 +150
・共通対応の修正後 △120
の場合

課税売上対応150-共通対応120
=課税売上対応を30に修正します。

課税貨物の場合

課税貨物の引取りについても、
国内の課税仕入れの場合と同様に計算します。

参考規定

仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の
仕入れに係る消費税額の控除の特例

第五十二条の二 法第三十二条第一項の規定により仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額の合計額を当該仕入れに係る対価の返還等を受けた日の属する課税期間における同項各号に規定する課税仕入れ等の税額の合計額から控除して控除しきれない金額があるときは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額を同条第二項に規定する課税標準額に対する消費税額に加算する。
一 当該仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額の計算につき法第三十二条第一項第一号又は第三号の規定の適用がある場合 これらの規定による控除をして控除しきれない金額
二 当該仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額の計算につき法第三十二条第一項第二号の規定の適用がある場合において、イからハまでに掲げる場合に該当するとき。 それぞれイからハまでに定める金額
イ 法第三十二条第一項第二号イに掲げる残額があり、かつ、同号ロの規定による控除をして控除しきれない金額がある場合 当該残額から当該控除しきれない金額を控除して控除しきれない金額
ロ 法第三十二条第一項第二号ロに掲げる残額があり、かつ、同号イの規定による控除をして控除しきれない金額がある場合 当該残額から当該控除しきれない金額を控除して控除しきれない金額
ハ 法第三十二条第一項第二号イの規定による控除及び同号ロの規定による控除をしていずれも控除しきれない金額がある場合 当該控除しきれない金額の合計額

消費税法施行令第52条の2第1項、施行日令和5年10月1日

規定をまとめてみましょう。


消費税法第32条第1項の規定により
仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額の合計額を
その仕入れに係る対価の返還等を受けた日の属する課税期間における
同項(第1項)各号に規定する課税仕入れ等の税額の合計額から
控除して控除しきれない金額があるときは、

次の各号に掲げる場合の区分に応じ
その各号に定める金額を
同条(第32条)第2項に規定する
課税標準額に対する消費税額に加算する。

1号、全額控除方式、一括比例配分方式の場合
法第32条第1項第1号又は
第3号の規定の適用がある場合

これらの規定による控除をして控除しきれない金額

2号、個別対応方式の場合
法第32条第1項第2号の規定の適用がある場合において、
イからハまでに掲げる場合に該当するとき。
それぞれイからハまでに定める金額

次の各号に掲げる場合当該各号に定める金額
イ、法第32条第1項第2号イに掲げる残額があり、かつ、同号ロの規定による控除をして控除しきれない金額がある場合当該残額から当該控除しきれない金額を控除して控除しきれない金額
ロ、法第32条第1項第2号ロに掲げる残額があり、かつ、同号イの規定による控除をして控除しきれない金額がある場合当該残額から当該控除しきれない金額を控除して控除しきれない金額
ハ、法第32条第1項第2号イの規定による控除及び同号ロの規定による控除をしていずれも控除しきれない金額がある場合当該控除しきれない金額の合計額
まとめ

課税仕入れ等の税額の合計額を修正する場合

2 法第三十二条第一項第二号に掲げる場合に該当する場合において、同号イに掲げる金額から同号ロの規定による控除をして控除しきれない金額を控除した残額があるとき、又は同号ロに掲げる金額から同号イの規定による控除をして控除しきれない金額を控除した残額があるときは、これらの残額を同項に規定する仕入れに係る対価の返還等を受けた日の属する課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額とみなす。

消費税法施行令第52条の2第2項、施行日令和5年10月1日

規定をまとめてみましょう。


消費税法第32条第1項第2号に掲げる場合に該当する場合において、
・同号(第2号)イに掲げる金額から
同号(第2号)ロの規定による控除をして控除しきれない金額を
控除した残額があるとき、又は

・同号(第2号)ロに掲げる金額から
同号(第2号)イの規定による控除をして控除しきれない金額を
控除した残額があるときは、

これらの残額を同項(第1項)に規定する仕入れに係る対価の返還等を受けた日の属する課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額とみなす。


課税貨物の場合

3 法第三十二条第四項の規定により同項に規定する還付を受ける消費税額の合計額を当該還付を受ける日の属する課税期間における同項各号に規定する課税仕入れ等の税額の合計額から控除して控除しきれない金額があるときは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額を同条第五項に規定する課税標準額に対する消費税額に加算する。
一 当該還付を受ける消費税額の計算につき法第三十二条第四項第一号又は第三号の規定の適用がある場合 これらの規定による控除をして控除しきれない金額
二 当該還付を受ける消費税額の計算につき法第三十二条第四項第二号の規定の適用がある場合において、イからハまでに掲げる場合に該当するとき。 それぞれイからハまでに定める金額
イ 法第三十二条第四項第二号イに掲げる残額があり、かつ、同号ロの規定による控除をして控除しきれない金額がある場合 当該残額から当該控除しきれない金額を控除して控除しきれない金額
ロ 法第三十二条第四項第二号ロに掲げる残額があり、かつ、同号イの規定による控除をして控除しきれない金額がある場合 当該残額から当該控除しきれない金額を控除して控除しきれない金額
ハ 法第三十二条第四項第二号イの規定による控除及び同号ロの規定による控除をしていずれも控除しきれない金額がある場合 当該控除しきれない金額の合計額

消費税法施行令第52条の2第3項、施行日令和5年10月1日

課税貨物の場合の準用

4 第二項の規定は、保税地域からの引取りに係る課税貨物につき法第三十二条第四項に規定する還付を受ける消費税額について準用する。この場合において、第二項中「法第三十二条第一項第二号」とあるのは「法第三十二条第四項第二号」と、「仕入れに係る対価の返還等を受けた」とあるのは「還付を受ける」と読み替えるものとする。

消費税法施行令第52条の2第4項、施行日令和5年10月1日

読替後の規定

2 法第三十二条第四項第二号に掲げる場合に該当する場合において、
同号イに掲げる金額から同号ロの規定による控除をして
控除しきれない金額を控除した残額があるとき、又は
同号ロに掲げる金額から同号イの規定による控除をして
控除しきれない金額を控除した残額があるときは、
これらの残額を同項に規定する還付を受ける日の属する課税期間における
課税仕入れ等の税額の合計額とみなす。

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