通算制度直前事業年度の繰り延べた譲渡損益の戻入れ


今回は、通算制度直前事業年度の繰り延べた譲渡損益の戻入れを
確認してみましょう。

内容

規定を整理したものを確認してみましょう。


第64条の11第1項(注1)
(通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益)に規定する内国法人、
第64条の12第1項(注2)
(通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益)に規定する他の内国法人又は
第64条の13第1項(注3)
(通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益)に規定する通算法人が

時価評価事業年度(注4)以前の各事業年度において
譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき
第1項の規定の適用を受けた法人である場合には、

当該譲渡損益調整資産に係る
譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額(注5)は、

譲渡損益調整資産のうち譲渡損益調整額が少額であるもの
その他の政令で定めるものに係る譲渡損益調整額(注6)を除き、

注6、除外されるもの
同条(第64条の13)第1項に規定する通算法人のうち
同項(第64条の13第1項)第2号に掲げる要件に該当するものにあつては、
・当該政令で定めるものに係る譲渡損益調整額及び
・次に掲げる要件のいずれかに該当しない譲渡損益調整額

当該時価評価事業年度の所得の金額の計算上、
益金の額又は損金の額に算入する。


次に掲げる要件

1号、10億円を超えること。
2号、譲渡損失額に係るものであること。
3号、当該譲渡損益調整資産に係る譲受法人において
当該譲渡損益調整資産の譲渡、評価換え、貸倒れ、除却
その他の政令で定める事由が生ずることが見込まれていること又は
当該通算法人が当該譲渡損益調整資産に係る譲受法人との間に
完全支配関係を有しないこととなること(注7)が見込まれていること。


カッコ書き

注4、時価評価事業年度
・第64条の11第1項に規定する通算開始直前事業年度、
・第64条の12第1項に規定する通算加入直前事業年度又は
・第64条の13第1項に規定する通算終了直前事業年度
をいう。以下この項において同じ。

注5、当該時価評価事業年度前の各事業年度の
所得の金額の計算上益金の額又は損金の額に算入された金額を除く。
以下この項において「譲渡損益調整額」という。

注7、前項(第3項)各号に掲げる事由に基因して
完全支配関係を有しないこととなることを除く。


対象となる法人は、次の3つです。
1、「通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益」に規定する内国法人
2、「通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益」に規定する他の内国法人
3、「通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益」に規定する通算法人

上記の法人が時価評価事業年度以前に
譲渡損益調整資産の譲渡損益を繰り延べている場合、
「譲渡損益調整額」を時価評価事業年度に戻し入れます。

時価評価事業年度は、次の3つです。
1、通算開始直前事業年度(通算制度が始まる直前の事業年度)
2、通算加入直前事業年度(通算制度に加入する直前の事業年度)
3、通算終了直前事業年度(通算制度から離脱する直前の事業年度)

繰り延べた譲渡損益のうち、既に戻し入れた金額は除外されます。
除外後の金額を「譲渡損益調整額」といいます。

適用除外

譲渡損益の戻入れ額が少ないもの等については、
戻入れから除外されます。

除外されるものは、次の3つです。

1、まだ戻し入れてない金額が1,000万円未満の譲渡損益調整資産

戻し入れてない金額=
譲渡損益調整資産の譲渡利益額(譲渡損失額)-戻入れ済の金額(調整済額)


2-イ、通算開始に関する内国法人(親法人を除く。)

第131条の13第2項第2号ロ(時価評価資産等の範囲)に掲げる
譲渡損益調整額の譲渡損益調整資産

参考規定、第131条の13第2項第2号ロ(時価評価資産等の範囲)

ロ 法第六十四条の九第二項に規定する他の内国法人(ロにおいて「他の内国法人」という。)で同条第一項に規定する親法人(当該他の内国法人との間に完全支配関係(同項に規定する政令で定める関係に限る。ロ及び次項第二号ロにおいて同じ。)があるものに限る。)の法第二編第一章第一節第十一款第一目(損益通算及び欠損金の通算)の規定の適用を受けようとする最初の事業年度(ロにおいて「最初通算事業年度」という。)終了の日までに当該親法人との間に当該親法人による完全支配関係を有しなくなるもの(当該最初通算事業年度開始の日以後二月以内に法第六十四条の十第六項第五号又は第六号(通算制度の取りやめ等)に掲げる事実が生ずることにより当該完全支配関係を有しなくなるものに限るものとし、当該親法人若しくは当該親法人との間に完全支配関係がある他の内国法人を合併法人とする合併又は残余財産の確定により当該親法人による完全支配関係を有しなくなるものを除く。次号ロ及び第四号ロにおいて「初年度離脱開始子法人」という。)の有する譲渡損益調整額

法人税法施行令第131条の13第2項第2号ロ、施行日令和5年10月1日

初年度離脱開始子法人の有する譲渡損益調整額を指しています。


2-ロ、通算加入に関する他の内国法人

第131条の13第3項第2号ロ(時価評価資産等の範囲)に掲げる
譲渡損益調整額の譲渡損益調整資産

ロ 法第六十四条の九第一項に規定する親法人との間に完全支配関係を有することとなつた同条第二項に規定する他の内国法人で当該親法人による完全支配関係を有することとなつた日(法第十四条第八項(第一号に係る部分に限る。)(事業年度の特例)の規定の適用を受ける場合には、同項に規定する加入日の前日の属する同号に規定する特例決算期間の末日の翌日。ロにおいて「関係発生日」という。)の属する当該親法人の事業年度終了の日までに当該完全支配関係を有しなくなるもの(当該関係発生日以後二月以内に法第六十四条の十第六項第五号又は第六号に掲げる事実が生ずることにより当該完全支配関係を有しなくなるものに限るものとし、当該親法人若しくは当該親法人との間に完全支配関係がある法第六十四条の九第二項に規定する他の内国法人を合併法人とする合併又は残余財産の確定により当該親法人による完全支配関係を有しなくなるものを除く。次号ロ及び第四号ロにおいて「初年度離脱加入子法人」という。)の有する譲渡損益調整額

法人税法施行令第131条の13第3項第2号ロ、施行日令和5年10月1日

初年度離脱加入子法人の有する譲渡損益調整資産を指しています。

離脱等の時価評価事由が一定の場合

離脱等の時価評価の事由が、次の下線部分の場合、
適用除外の対象となるものが1つ増えます。

二 当該通算法人の株式又は出資を有する他の通算法人において当該通算終了直前事業年度終了の時後に当該株式又は出資の譲渡又は評価換えによる損失の額として政令で定める金額が生ずることが見込まれていること(前号に掲げる要件に該当する場合を除く。) 当該通算法人が当該通算終了直前事業年度終了の時に有する同号に定める資産(その時における帳簿価額として政令で定める金額が十億円を超えるものに限る。)のうちその時後に譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他の政令で定める事由が生ずること(その事由が生ずることにより損金の額に算入される金額がない場合又はその事由が生ずることにより損金の額に算入される金額がその事由が生ずることにより益金の額に算入される金額以下である場合を除く。)が見込まれているもの

法人税法第64条の13第1項第2号、施行日令和5年6月7日

適用除外の対象となるもの
次に掲げる要件のいずれかに該当しない譲渡損益調整額

1号、10億円を超えること。
2号、譲渡損失額に係るものであること。
3号、当該譲渡損益調整資産に係る譲受法人において
当該譲渡損益調整資産の譲渡、評価換え、貸倒れ、除却
その他の政令で定める事由が生ずることが見込まれていること又は
当該通算法人が当該譲渡損益調整資産に係る譲受法人との間に
完全支配関係を有しないこととなること(注7)が見込まれていること。

「いずれかに該当しない」は、
1号、2号、3号のどれかに該当しない(どれか1つでも×)という意味で、
どれか1つでも満たさない場合は、適用除外となり
時価評価の戻入れは不要となります。

反対に、1号、2号、3号の全てを満たすもの(3つとも〇)は、
適用除外から外れますので、時価評価の戻入れの対象となります。

参考規定

通算制度開始等に伴う譲渡損益調整資産の譲渡損益の戻入れ

4 第六十四条の十一第一項(通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益)に規定する内国法人、第六十四条の十二第一項(通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益)に規定する他の内国法人又は第六十四条の十三第一項(通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益)に規定する通算法人が時価評価事業年度(第六十四条の十一第一項に規定する通算開始直前事業年度、第六十四条の十二第一項に規定する通算加入直前事業年度又は第六十四条の十三第一項に規定する通算終了直前事業年度をいう。以下この項において同じ。)以前の各事業年度において譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額につき第一項の規定の適用を受けた法人である場合には、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額(当該時価評価事業年度前の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額又は損金の額に算入された金額を除く。以下この項において「譲渡損益調整額」という。)は、譲渡損益調整資産のうち譲渡損益調整額が少額であるものその他の政令で定めるものに係る譲渡損益調整額(同条第一項に規定する通算法人のうち同項第二号に掲げる要件に該当するものにあつては、当該政令で定めるものに係る譲渡損益調整額及び次に掲げる要件のいずれかに該当しない譲渡損益調整額)を除き、当該時価評価事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
一 十億円を超えること。
二 譲渡損失額に係るものであること。
三 当該譲渡損益調整資産に係る譲受法人において当該譲渡損益調整資産の譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他の政令で定める事由が生ずることが見込まれていること又は当該通算法人が当該譲渡損益調整資産に係る譲受法人との間に完全支配関係を有しないこととなること(前項各号に掲げる事由に基因して完全支配関係を有しないこととなることを除く。)が見込まれていること。

法人税法第61条の11第4項、施行日令和5年6月7日

譲渡損益の戻入れをしないもの

11 法第六十一条の十一第四項に規定する政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額から当該譲渡損益調整資産に係る第五項に規定する調整済額を控除した金額が千万円に満たない場合における当該譲渡損益調整資産
二 次に掲げる法人の区分に応じそれぞれ次に定める譲渡損益調整額に係る譲渡損益調整資産
イ 法第六十四条の十一第一項に規定する内国法人(同項に規定する親法人を除く。) 第百三十一条の十三第二項第二号ロ(時価評価資産等の範囲)に掲げる譲渡損益調整額
ロ 法第六十四条の十二第一項に規定する他の内国法人 第百三十一条の十三第三項第二号ロに掲げる譲渡損益調整額

法人税法施行令第122条の12第11項、施行日令和5年10月1日

政令で定める事由

12 法第六十一条の十一第四項第三号に規定する政令で定める事由は、第四項第一号、第二号、第五号、第六号及び第八号に掲げる事由(同条第六項の規定の適用があるものを除く。)とする。

法人税法施行令第122条の12第12項、施行日令和5年10月1日
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