貸倒引当金に関するその他の規定


今回は、貸倒引当金に関するその他の規定を確認してみましょう。

適格分割等があった場合の損金算入

内国法人が適格分割等により
他の法人に個別評価金銭債権を移転する場合、
移転前に個別評価の貸倒引当金を設定したときは、

・期中個別貸倒引当金勘定の金額
・期中の個別貸倒引当金繰入限度額(損金算入の上限)
のうちいずれか少ない金額を損金算入できます。

一括評価金銭債権についても
・期中一括貸倒引当金勘定の金額
・期中の一括貸倒引当金繰入限度額(損金算入の上限)
のうちいずれか少ない金額を損金算入できます。

損金算入を選択する場合は、
適格分割等の日以後2月以内に
一定の事項を記載した書類を提出する必要があります。

[手続名]適格分割等による期中損金経理額等の損金算入に関する届出https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/kigyosaihen/annai/01.htm

適格組織再編成があった場合の引継ぎ

内国法人が、適格組織再編成を行った場合は、
貸倒引当金勘定を他の法人に引き継ぎます。

引き継ぐ金額は、
貸倒引当金として損金算入した金額です。

金銭債権に含まれないもの

内国法人がその内国法人との間に
完全支配関係がある他の法人に対して有する金銭債権など
(例えば、100%支配している子法人に対する売掛金)は、
個別評価金銭債権や一括評価金銭債権が設定できません。

気になった点
国税庁、タックスアンサー
No.5500、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5500.htm

一括評価金銭債権に当たるものの中に
通算税効果額に係る未収金があります。

通算税効果の処理を行った後、
完全支配関係がなくなった場合に
未収金として残っていれば、
貸倒引当金の設定が可能なのでしょう。

引き継いだ貸倒引当金の益金算入

適格組織再編成により損金算入した貸倒引当金は、
引継ぎ先の法人で益金算入する必要があります。

公益法人等に移行する場合

普通法人、協同組合等が公益法人等に移行する場合、
移行前に貸倒引当金を設定できません。
(翌期に戻入れできない場合があるため。)

参考規定など

期中個別貸倒引当金の損金算入

5 内国法人が、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(適格現物分配にあつては、残余財産の全部の分配を除く。以下この条において「適格分割等」という。)により分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人に個別評価金銭債権を移転する場合(当該適格分割等の直前の時を事業年度終了の時とした場合に当該内国法人が第一項各号に掲げる法人に該当する場合に限る。)において、当該個別評価金銭債権について同項の貸倒引当金勘定に相当するもの(以下この条において「期中個別貸倒引当金勘定」という。)を設けたときは、その設けた期中個別貸倒引当金勘定の金額に相当する金額のうち、当該個別評価金銭債権につき当該適格分割等の直前の時を事業年度終了の時とした場合に同項の規定により計算される個別貸倒引当金繰入限度額に相当する金額に達するまでの金額は、当該適格分割等の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

法人税法第52条第5項、施行日令和5年6月7日

内国法人が、
適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(注1)により
分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人に
個別評価金銭債権を移転する場合(注2)において、

その個別評価金銭債権について
同項の貸倒引当金勘定に相当するもの(注3)を設けたときは、

その設けた期中個別貸倒引当金勘定の金額に相当する金額のうち、
その個別評価金銭債権につき
その適格分割等の直前の時を事業年度終了の時とした場合に
同項の規定により計算される
個別貸倒引当金繰入限度額に相当する金額に達するまでの金額は、
その適格分割等の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、
損金の額に算入する。

注1、適格現物分配にあつては、残余財産の全部の分配を除く。
以下この条において「適格分割等」という。

注2、その適格分割等の直前の時を事業年度終了の時とした場合に
その内国法人が第一項各号に掲げる法人に該当する場合に限る。

注3、以下この条において「期中個別貸倒引当金勘定」という。


期中一括貸倒引当金の損金算入

6 内国法人が、適格分割等により分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人に一括評価金銭債権を移転する場合(当該適格分割等の直前の時を事業年度終了の時とした場合に当該内国法人が第一項各号に掲げる法人に該当する場合に限る。)において、当該一括評価金銭債権について第二項の貸倒引当金勘定に相当するもの(以下この条において「期中一括貸倒引当金勘定」という。)を設けたときは、その設けた期中一括貸倒引当金勘定の金額に相当する金額のうち、当該一括評価金銭債権につき当該適格分割等の直前の時を事業年度終了の時とした場合に同項の規定により計算される一括貸倒引当金繰入限度額に相当する金額に達するまでの金額は、当該適格分割等の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

法人税法第52条第6項、施行日令和5年6月7日

内国法人が、
適格分割等により分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人に
一括評価金銭債権を移転する場合(注1)において、

その一括評価金銭債権について
第二項の貸倒引当金勘定に相当するもの(注2)を設けたときは、

その設けた期中一括貸倒引当金勘定の金額に相当する金額のうち、
その一括評価金銭債権につき
その適格分割等の直前の時を事業年度終了の時とした場合に
同項の規定により計算される
一括貸倒引当金繰入限度額に相当する金額に達するまでの金額は、
その適格分割等の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、
損金の額に算入する。

注1、その適格分割等の直前の時を事業年度終了の時とした場合に当該内国法人が第一項各号に掲げる法人に該当する場合に限る。

注2、以下この条において「期中一括貸倒引当金勘定」という。


手続き

7 前二項の規定は、これらの規定に規定する内国法人が適格分割等の日以後二月以内に期中個別貸倒引当金勘定の金額又は期中一括貸倒引当金勘定の金額に相当する金額その他の財務省令で定める事項を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出した場合に限り、適用する。

法人税法第52条第7項、施行日令和5年6月7日

前2項(第5項、第6項)の規定は、
これらの規定に規定する内国法人が
適格分割等の日以後2月以内に
・期中個別貸倒引当金勘定の金額又は
・期中一括貸倒引当金勘定の金額
に相当する金額その他の財務省令で定める事項を記載した書類を
納税地の所轄税務署長に提出した場合に限り、適用する。


適格組織再編成を行った場合の貸倒引当金勘定の引継ぎ

8 内国法人が、適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(以下この項及び第十一項において「適格組織再編成」という。)を行つた場合には、次の各号に掲げる適格組織再編成の区分に応じ当該各号に定める貸倒引当金勘定の金額又は期中個別貸倒引当金勘定の金額若しくは期中一括貸倒引当金勘定の金額は、当該適格組織再編成に係る合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人(第十一項において「合併法人等」という。)に引き継ぐものとする。
一 適格合併又は適格現物分配(残余財産の全部の分配に限る。) 第一項又は第二項の規定により当該適格合併の日の前日又は当該残余財産の確定の日の属する事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたこれらの規定に規定する貸倒引当金勘定の金額
二 適格分割等 第五項又は第六項の規定により当該適格分割等の日の属する事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された期中個別貸倒引当金勘定の金額又は期中一括貸倒引当金勘定の金額

法人税法第52条第8項、施行日令和5年6月7日

内国法人が、
適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(注1)
を行った場合には、

次の各号に掲げる適格組織再編成の区分に応じ
その各号に定める貸倒引当金勘定の金額又は
期中個別貸倒引当金勘定の金額若しくは
期中一括貸倒引当金勘定の金額は、

その適格組織再編成に係る
合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人(注2)
に引き継ぐものとする。

1、適格合併又は適格現物分配(注3)
第1項又は第2項の規定により
・その適格合併の日の前日又は
・その残余財産の確定の日
の属する事業年度の所得の金額の計算上
損金の額に算入された
これらの規定に規定する貸倒引当金勘定の金額

2、適格分割等
第5項又は第6項の規定により
その適格分割等の日の属する事業年度の所得の金額の計算上
損金の額に算入された
期中個別貸倒引当金勘定の金額又は
期中一括貸倒引当金勘定の金額

注1、以下この項及び第十一項において「適格組織再編成」という。

注2、第十一項において「合併法人等」という。

注3、残余財産の全部の分配に限る。


金銭債権に含まれないもの

9 第一項、第二項、第五項及び第六項の規定の適用については、個別評価金銭債権及び一括評価金銭債権には、次に掲げる金銭債権を含まないものとする。
一 第一項第三号に掲げる内国法人(第五項又は第六項の規定を適用する場合にあつては、適格分割等の直前の時を事業年度終了の時とした場合に同号に掲げる内国法人に該当するもの)が有する金銭債権のうち当該内国法人の区分に応じ政令で定める金銭債権以外のもの
二 内国法人が当該内国法人との間に完全支配関係がある他の法人に対して有する金銭債権

法人税法第52条第9項、施行日令和5年6月7日

第1項、個別評価金銭債権の貸倒引当金の損金算入
第2項、一括評価金銭債権の貸倒引当金の損金算入
第5項、期中個別貸倒引当金の損金算入
第6項、期中一括貸倒引当金の損金算入
の規定については、

・個別評価金銭債権
・一括評価金銭債権
には、次の金銭債権が含まれません。

内国法人がその内国法人との間に
完全支配関係がある他の法人に対して有する金銭債権など


引き継いだ貸倒引当金の益金算入

11 第八項の規定により合併法人等が引継ぎを受けた貸倒引当金勘定の金額又は期中個別貸倒引当金勘定の金額若しくは期中一括貸倒引当金勘定の金額は、当該合併法人等の適格組織再編成の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。

法人税法第52条第11項、施行日令和5年6月7日

第8項の規定により合併法人等が引継ぎを受けた
・貸倒引当金勘定の金額
・期中個別貸倒引当金勘定の金額
・期中一括貸倒引当金勘定の金額
は、その合併法人等の適格組織再編成の日の属する
事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。


公益法人等に移行する場合

12 普通法人又は協同組合等が公益法人等に該当することとなる場合の当該普通法人又は協同組合等のその該当することとなる日の前日の属する事業年度については、第一項及び第二項の規定は、適用しない。

法人税法第52条第12項、施行日令和5年6月7日

・普通法人又は
・協同組合等
が公益法人等に該当することとなる場合の
・その普通法人又は
・協同組合等
のその該当することとなる日の前日の属する事業年度については、
第1項及び第2項の規定は、適用しない。


政令委任

13 第三項、第四項及び第七項に定めるもののほか、第一項、第二項、第五項、第六項及び第八項から前項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

法人税法第52条第13項、施行日令和5年6月7日
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