貸倒引当金の貸倒実績率の計算


今回は、貸倒引当金の貸倒実績率の計算を
確認してみましょう。

貸倒実績率の計算

法人税の計算では、
原則として見積計算による損金算入ができません。

ただし、税法上の要件を満たした場合、
損金算入が可能です。

貸倒引当金については、
会社が費用処理した金額(損金経理額)のうち
損金算入の上限(繰入限度額)まで
損金算入ができます。

繰入限度額の計算式はこちら↓

一括貸倒引当金繰入限度額=
一括評価金銭債権の帳簿価額×貸倒実績率

貸倒実績率=
第2号(過去3年の貸倒損失の平均)÷
第1号(過去3年の一括評価金銭債権の平均)

今回は、貸倒実績率の計算を確認してみましょう。

別表の確認

貸倒引当金の損金算入は、
確定申告書に別表の添付が必要です。

使用する別表を確認してみましょう。
別表11(1の2)一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2023/pdf/11(01-02).pdf

貸倒実績率は、9欄から16欄で計算します。

規定の確認

今回確認する規定はこちら↓

一括貸倒引当金繰入限度額の計算

6 法第五十二条第二項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項の内国法人の当該事業年度終了の時において有する一括評価金銭債権(同項に規定する一括評価金銭債権をいう。以下この項において同じ。)の帳簿価額の合計額に貸倒実績率(第一号に掲げる金額のうちに第二号に掲げる金額の占める割合(当該割合に小数点以下四位未満の端数があるときは、これを切り上げる。)をいう。)を乗じて計算した金額とする。
以下省略

法人税法施行令第96条第6項、施行日令和5年10月1日

貸倒実績率の分母の計算

一 当該内国法人の前三年内事業年度(当該事業年度開始の日前三年以内に開始した各事業年度をいい、当該内国法人が適格合併に係る合併法人である場合には当該内国法人の当該事業年度開始の日前三年以内に開始した当該適格合併に係る被合併法人の各事業年度を含むものとし、当該事業年度が次に掲げる当該内国法人の区分に応じそれぞれ次に定める日の属する事業年度である場合には当該事業年度とし、ロからニまでに定める日の属する事業年度前の各事業年度を除く。以下この項及び第八項において同じ。)終了の時における一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額を当該前三年内事業年度における事業年度の数で除して計算した金額
イ 新たに設立された内国法人(適格合併(被合併法人の全てが収益事業を行つていない公益法人等であるものを除く。)により設立されたもの並びに公益法人等及び人格のない社団等を除く。) 設立の日
ロ 新たに収益事業を開始した内国法人である公益法人等及び人格のない社団等 その開始した日
ハ 公共法人に該当していた収益事業を行う公益法人等 当該公益法人等に該当することとなつた日
ニ 公共法人又は収益事業を行つていない公益法人等に該当していた普通法人又は協同組合等 当該普通法人又は協同組合等に該当することとなつた日

法人税法施行令第96条第6項第1号、施行日令和5年10月1日

貸倒実績率の分子の計算

二 当該内国法人のイ及びロに掲げる金額の合計額からハに掲げる金額を控除した残額に十二を乗じてこれを前三年内事業年度における事業年度の月数の合計数で除して計算した金額
イ 前三年内事業年度において売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権(法第五十二条第九項各号に掲げるものを除く。以下この号において「売掛債権等」という。)の貸倒れにより生じた損失の額の合計額
ロ 法第五十二条第一項又は第五項の規定により前三年内事業年度に含まれる各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額(売掛債権等に係る金額に限る。)の合計額
ハ 法第五十二条第十項又は第十一項の規定により前三年内事業年度に含まれる各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入された金額のうち次に掲げる金額に係るもの(当該各事業年度においてイに規定する損失の額が生じた売掛債権等に係る金額又は当該各事業年度において売掛債権等につき同条第一項若しくは第五項の規定の適用を受ける場合の当該売掛債権等に係る金額に限る。)の合計額
(1) 法第五十二条第一項の規定により当該各事業年度開始の日の前日の属する事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額
(2) 法第五十二条第一項の規定により適格合併又は適格現物分配(残余財産の全部の分配に限る。)に係る被合併法人又は現物分配法人の当該適格合併の日の前日又は当該残余財産の確定の日の属する事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額
(3) 法第五十二条第五項の規定により同項に規定する適格分割等に係る分割法人、現物出資法人又は現物分配法人の当該適格分割等の日の属する事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額

法人税法施行令第96条第6項第2号、施行日令和5年10月1日

規定をまとめてみましょう。


法第五十二条第二項に規定する
政令で定めるところにより計算した金額は、
同項の内国法人の当該事業年度終了の時において有する
一括評価金銭債権(注1)の帳簿価額の合計額に
貸倒実績率(注2)を乗じて計算した金額とする。

注1、同項に規定する一括評価金銭債権をいう。以下この項において同じ。

注2、第一号に掲げる金額のうちに
第二号に掲げる金額の占める割合(注2-1)をいう。

注2‐1、当該割合に小数点以下4位未満の端数があるときは、これを切り上げる。


次は、貸倒実績率の分母(第1号)を確認してみましょう。


1号、当該内国法人の前三年内事業年度(注1)終了の時における
一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額を
当該前三年内事業年度における事業年度の数で除して計算した金額

注1、当該事業年度開始の日前三年以内に開始した各事業年度をいい、
当該内国法人が適格合併に係る合併法人である場合には
当該内国法人の当該事業年度開始の日前三年以内に開始した
当該適格合併に係る被合併法人の各事業年度を含むものとし、
当該事業年度が次に掲げる当該内国法人の区分に応じ
それぞれ次に定める日の属する事業年度である場合には当該事業年度とし、
ロからニまでに定める日の属する事業年度前の各事業年度を除く。
以下この項及び第八項において同じ。


次は、貸倒実績率の分子(第2号)を確認してみましょう。


2号、当該内国法人の
・イ及びロに掲げる金額の合計額から
・ハに掲げる金額を
控除した残額に12を乗じて
これを前三年内事業年度における
事業年度の月数の合計数で除して計算した金額

イの金額
前三年内事業年度において
売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権(注1)の
貸倒れにより生じた損失の額の合計額

注1、法第五十二条第九項各号に掲げるものを除く。
以下この号において「売掛債権等」という。

ロの金額
法第五十二条第一項又は第五項の規定により
前三年内事業年度に含まれる各事業年度の所得の金額の計算上
損金の額に算入された金額(売掛債権等に係る金額に限る。)の合計額

ハの金額
法第五十二条第十項又は第十一項の規定により
前三年内事業年度に含まれる各事業年度の所得の金額の計算上
益金の額に算入された金額のうち
次に掲げる金額に係るもの(注2)の合計額

注2、当該各事業年度においてイに規定する損失の額が生じた売掛債権等に係る金額又は当該各事業年度において売掛債権等につき同条第一項若しくは第五項の規定の適用を受ける場合の当該売掛債権等に係る金額に限る。

(1) 法第五十二条第一項の規定により
当該各事業年度開始の日の前日の属する事業年度の所得の金額の計算上
損金の額に算入された金額

(2) 法第五十二条第一項の規定により
適格合併又は適格現物分配(残余財産の全部の分配に限る。)に係る
被合併法人又は現物分配法人の
当該適格合併の日の前日又は当該残余財産の確定の日の
属する事業年度の所得の金額の計算上
損金の額に算入された金額

(3) 法第五十二条第五項の規定により
同項に規定する適格分割等に係る
分割法人、現物出資法人又は現物分配法人の
当該適格分割等の日の属する事業年度の所得の金額の計算上
損金の額に算入された金額

まとめ

一括貸倒引当金繰入限度額=
一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額×貸倒実績率

貸倒実績率=
第2号(過去3年の貸倒損失の平均)÷
第1号(過去3年の一括評価金銭債権の平均)

第1号、貸倒実績率の分母
過去3年の一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額÷
過去3年の事業年度の数(3)

第2号、貸倒実績率の分子
イの金額+ロの金額-ハの金額=
残額×12÷過去3年の事業年度の月数の合計(36)

イの金額
過去3年の売掛債権等の貸倒損失の合計額

ロの金額
過去3年の個別評価した
貸倒引当金の損金算入額の合計額

ハの金額
過去3年の個別評価した
貸倒引当金の戻入の益金算入額の合計額など

計算例

過去3年の合計額
・一括評価金銭債権 60,000(別表の9欄)
・貸倒損失 1,500(11欄)
・個別評価の損金算入 150(12欄)
・個別評価の益金算入など 150(13欄)

1、貸倒実績率の分母の計算(10欄)
60,000÷3=20,000

2、貸倒実績率の分子の計算(15欄)
1,500+150-150=1,500(14欄)×12÷36=500

3、貸倒実績率(16欄=15欄÷10欄)
500÷20,000=0.0250(小数点以下4位未満切上げ)
→3欄に転記

2欄、期末の一括評価金銭債権 50,000
3欄、貸倒実績率 0.0250
6欄、繰入限度額 50,000円×0.0250=1,250

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