今回は、貸手のフリーレント期間の法人税の取扱いを確認してみましょう。
収益の計上の単位の通則
借り手の取扱いと貸し手の取扱いは異なるのかと思い、基本通達等を調べてみました。気になった通達から確認してみましょう。
(収益の計上の単位の通則)
2-1-1 資産の販売若しくは譲渡若しくは役務の提供(2-1-1の10⦅資産の引渡しの時の価額等の通則⦆及び2-1-40の2⦅返金不要の支払の帰属の時期⦆を除き、平成30年3月30日付企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識基準」という。)の適用対象となる取引に該当するものに限る。以下この節において「資産の販売等」という。)又は資産の賃貸借に係る収益の額は、原則として個々の契約ごとに計上する。ただし、次に掲げる取引の区分に応じ、それぞれ次に定めるところによりその収益の額を計上することができる。
(1) 資産の販売等 省略
(2) 資産の賃貸借
・資産の販売等(収益認識基準の取引に限定)
・資産の賃貸借
に係る収益の額は、原則として個々の契約ごとに計上します。
・資産の販売若しくは譲渡若しくは役務の提供(収益認識基準の取引に限定)
・資産の賃貸借
と読めますので、上記通達の資産の賃貸借については、収益認識基準の取引に限定されていないと読めます。
ただし書きに例外があります。(2)の資産の賃貸借を確認してみましょう。
⑵ 資産の賃貸借 資産の賃貸借に係る契約にリースを構成する部分とリースを構成しない部分とがある場合(当該契約における対価の中に、原資産の維持管理に伴う固定資産税、保険料等の諸費用が含まれる場合を含む。)において、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに分ける方法により経理しているときは、その方法により区分した単位ごとにその収益の額を計上することができる。
(注) 次に掲げる用語の意義については、それぞれ次による。以下この節において同じ。
⑴ リース 原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転
する契約又は契約の一部分をいう。
⑵ 原資産 リースの対象となる資産で賃貸人によって賃借人に当該資産
を使用する権利が移転されているものをいう。
・リースを構成する部分
・リースを構成しない部分(例、サービス等)
がある場合において
・リースを構成する部分
・リースを構成しない部分(例、サービス等)
の2つを分けて経理しているときは、2つに分けて収益の額が計上できます。
フリーレントの内容とは関係がありませんので、原則として個々の契約ごとに計上することになります。
賃貸借契約に基づく使用料等の帰属の時期
資産の賃貸借に関する基本通達がありますので確認してみましょう。
(賃貸借契約に基づく使用料等の帰属の時期)
2-1-29 資産の賃貸借(平成11年1月22日付企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」の適用対象となる資産、負債及びデリバティブ取引(以下この章において「金融商品」という。)に係る取引、リース取引並びに2-3-62⦅暗号資産信用取引に係る売付け及び買付けに係る対価の額⦆の対象となる取引に該当するものを除くものとし、知的財産のライセンスの供与に係る取引にあっては、その収益の額を賃貸人の会計リース期間にわたり定額で計上する場合における当該取引に該当するもの(リース取引に該当するものを除く。)に限る。以下2-1-29において同じ。)は、履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに該当し、その収益の額は2-1-21の2⦅履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに係る収益の帰属の時期⦆の事業年度の益金の額に算入する。
ただし、省略
資産の賃貸借から
・金融商品に係る取引
・リース取引(税金計算上のファイナンスリース取引のみ)
の2つを除外します。
結果、オペレーティングリース取引が残ります。
資産の賃貸借のカッコ書きを省略してみましょう。
資産の賃貸借()は、履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに該当し、その収益の額は2-1-21の2⦅履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに係る収益の帰属の時期⦆の事業年度の益金の額に算入する。
基本通達2-1-21の2⦅履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに係る収益の帰属の時期⦆を確認してみましょう。
(履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに係る収益の帰属の時期)
2-1-21の2 役務の提供(法第63条第1項⦅工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例⦆の規定の適用があるもの及び同条第2項の規定の適用を受けるものを除くものとし、収益認識基準の適用対象となる取引に該当するものに限る。以下2-1-21の3までにおいて同じ。)のうちその履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの(以下2-1-30までにおいて「履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの」という。)については、その履行に着手した日から引渡し等の日(物の引渡しを要する取引にあってはその目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日をいい、物の引渡しを要しない取引にあってはその約した役務の全部を完了した日をいう。以下2-1-21の7までにおいて同じ。)までの期間において履行義務が充足されていくそれぞれの日が法第22条の2第1項⦅収益の額⦆に規定する役務の提供の日に該当し、その収益の額は、その履行義務が充足されていくそれぞれの日の属する事業年度の益金の額に算入されることに留意する。
省略してみますと
・役務の提供(収益認識基準の取引に限定)
・履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの
については、
・履行に着手した日から
・引渡し等の日まで
の期間において履行義務が充足されていくそれぞれの日が「役務提供の日」に該当します。
収益の額は、その履行義務が充足されていくそれぞれの日が含まれる事業年度の益金の額に算入されます。
とあります。上記通達を見ると、フリーレント期間を含めて賃料の按分計算が必要となりそうです。
基本通達2-1-29のただし書き
基本通達2-1-29(賃貸借契約に基づく使用料等の帰属の時期)のただし書きを確認してみましょう。
ただし、資産の賃貸借契約に基づいて支払を受ける使用料等の額(前受けに係る額を除く。)について、当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日において収益計上を行っている場合には、その支払を受けるべき日は、その資産の賃貸借に係る役務の提供の日に近接する日に該当するものとして、法第22条の2第2項⦅収益の額⦆の規定を適用する。
ただし書きの「資産の賃貸借」は、オペレーティングリース取引を指します。
「当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日において収益計上を行っている場合」とありますので、例外を適用する場合は、フリーレント期間を含めた賃料の按分計算は不要となるのでしょう。
まとめ
基本通達2-1-1(収益の計上の単位の通則)
・資産の販売等(収益認識基準の取引に限定)
・資産の賃貸借
原則として個々の契約ごとに収益を計上する。
基本通達2-1-21の2(履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに係る収益の帰属の時期)
・役務の提供(収益認識基準の取引に限定)
進捗度に応じて按分計算が必要となる。
基本通達2-1-29(賃貸借契約に基づく使用料等の帰属の時期)
・資産の賃貸借
(税法上のリース取引を除外→オペレーティングリース取引に限定)
原則
基本通達2-1-21の2の「履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの」に該当するため、進捗度に応じて按分計算が必要となる。
例外、ただし書き
支払を受けるべき日に収益計上が可能(按分計算が不要)
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おまけ
法人税法では、
・資産の販売若しくは譲渡
・役務の提供
を「資産の販売等」と定義しています。
資産の貸付けは明記されていませんが、役務の提供に含まれます。
基本通達2-1-1(収益の計上の単位の通則)
1、資産の販売等(収益認識基準の取引に限定)
2、資産の賃貸借
を分けている理由は、規定からそのまま読み取れないからだと思います。
消費税法では、
・資産の貸付け
・役務の提供
の2つを明確に分けていますので、注意が必要です。
フリーレント期間については消費税がかからないと考えていましたが、消費税がかかる場合もあるのかもと考えています。
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