賃上げ促進税制の中小企業者


今回は、「賃上げ促進税制の中小企業者」について確認します。

賃上げ促進税制のイメージ

簡単に確認します。
当期の給料が前期の給料より増加(賃上げ)している場合に、
増加した給料に応じて、法人税や所得税が一定額減る特例です。

例えば、
当期の給料 1,200
前期の給料 △1,000
賃上げ給料 +200×15%(減税割合)=30の税金が減少します。

賃上げに応じて税金が減る特例です。
前期の給料と比較して当期の給料が減ったら特例は使えません。
赤字などにより税金が発生しない場合も特例は使えません。

制度の全体像

現在の制度を整理します。
賃上げ促進税制は煩雑な特例で
具体的な制度を見る前に次の2点は注意が必要です。

  • 改正前の規定か、改正後の規定か
  • 中小企業者に該当するか否か

大企業向け特例は中小企業も使えますが、
中小企業向け特例は中小企業者しか使えません。

以下、中小企業者について確認します。

賃上げ促進税制の中小企業者

「中小企業者」は税法上の定義です。

この「中小企業者」も税法上に複数定義あったり、
他の法令でも税法と異なる定義があったりするので注意が必要です。


賃上げ促進税制の中小企業者の定義
 第四十二条の四第十九項第七号に規定する中小企業者(同項第八号に規定する適用除外事業者又は同項第八号の二に規定する通算適用除外事業者に該当するものを除く。)

42条の4は、試験研究を行つた場合の法人税額の特別控除です。
19項7号
 中小企業者 中小企業者に該当する法人として政令で定めるもの<原則資本金1億円以下の法人等>をいう。


原則として、資本金が1億円以下の法人です。
ほとんどの法人が該当すると思います。

例外として、大きい親法人に支配されている小さい子法人等については、
中小企業者に該当しません。大きい親法人の助けがあるからです。

カッコ書き
適用除外事業者(8号)と通算適用除外事業者(8号の2)は、
資本金1億円以下であっても、中小企業者に該当しません。

適用除外事業者(8号)

8号の適用除外事業者とは、
過去3年間の平均所得が15億円を超える法人です。


適用除外事業者の定義(参考)
 適用除外事業者 当該事業年度開始の日前三年以内に終了した各事業年度(以下この号において「基準年度」という。)の所得の金額の合計額を各基準年度の月数の合計数で除し、これに十二を乗じて計算した金額(設立後三年を経過していないこと、既に基準年度の所得に対する法人税の額につき法人税法第八十条の規定の適用があつたこと、基準年度において合併、分割又は現物出資が行われたこと、基準年度において通算法人に該当することその他の政令で定める事由がある場合には、当該計算した金額につき当該事由の内容に応じ調整を加えた金額として政令で定めるところにより計算した金額十五億円を超える法人をいう。


カッコ書きで、「一定の場合には一定の方法で計算した金額」とあります。

一定の場合とは、次の5つです。

  • 設立してから3年経過していない(政令1号)
  • 過去3年間に、欠損金の繰戻し還付を受けている(政令2号)
  • 過去3年間に、一定の合併等があった(政令3号)
  • 過去3年間に、非収益事業があった(政令4号)
  • 対象法人が外国法人である(政令5号)

通算法人については、別の規定なんでしょうね。
具体的な計算方法は省略します。

通算適用除外事業者(8号の2)

グループ通算制度の内容です。


通算適用除外事業者の定義(参考)
八の二 通算適用除外事業者 通算法人<通算親法人と通算子法人>である法人の各事業年度終了の日において当該通算法人である法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうちいずれかの法人が適用除外事業者(当該通算法人である法人に係る通算親法人の同日を含む事業年度開始の日以後に当該通算親法人との間に通算完全支配関係を有することとなつた適用除外事業者として政令で定めるものを除く。)に該当する場合における当該通算法人である法人をいう。


判定日は事業年度終了の日です。
グループ通算制度を採用している法人のいずれか1社が適用除外事業者に該当する場合、グループ全体が通算適用除外事業者に該当してしまい、中小企業者向け特例は使用できません。

カッコ書きは、通算法人グループに他の法人が加入した場合です。以下、間違っているかもしれませんので注意。

例えば、グループ通算制度を採用しているP社グループ

P社 適用除外事業者でない
S社 適用除外事業者でない

P社もS社も適用除外事業者ではないため、中小企業向けの特例が使えます。
このときに、過去にP社やS社と支配関係がない(縁がない)
A社(適用除外事業者)がグループに加入した場合の内容と思います。

P社 適用除外事業者でない
S社 適用除外事業者でない
A社 適用除外事業者(政令で定めるものを除く)

Aが適用除外事業者であっても
カッコ書きに該当する適用除外事業者であれば、
P社もS社も通算適用除外事業者に該当しなくなる
(中小企業向け特例が使える)のでしょうね。

実際に出てきてから調べます。

以上、賃上げ促進税制の中小企業者について確認しました。

参考規定

措置法施行令27条の4
25 法第四十二条の四第十九項第号に規定する政令で定めるものは、資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が千人以下の法人(当該法人が通算親法人である場合には、第三号に掲げる法人を除く。)とする。

次に掲げる法人は、資本金1億円以下であっても中小企業者特例が使えません。

一 その発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。次号において同じ。)の総数又は総額の二分の一以上が同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が一億円を超える法人、資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が千人を超える法人又は次に掲げる法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く。次号において同じ。)の所有に属している法人

イ 大法人(次に掲げる法人をいう。以下この号において同じ。)との間に当該大法人による完全支配関係(法人税法第二条第十二号の七の六に規定する完全支配関係をいう。ロにおいて同じ。)がある普通法人
(1) 資本金の額又は出資金の額が五億円以上である法人
(2) 保険業法第二条第五項に規定する相互会社及び同条第十項に規定する外国相互会社のうち、常時使用する従業員の数が千人を超える法人
(3) 法人税法第四条の三に規定する受託法人

ロ 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十四項に規定する投資口を含む。以下この章において同じ。)及び出資の全部を当該全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合において当該いずれか一の法人と当該普通法人との間に当該いずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときの当該普通法人(イに掲げる法人を除く。)

二 前号に掲げるもののほか、その発行済株式又は出資の総数又は総額の三分の二以上が大規模法人の所有に属している法人

三 他の通算法人のうちいずれかの法人が次に掲げる法人に該当しない場合における通算法人
イ 資本金の額又は出資金の額が一億円以下の法人のうち前二号に掲げる法人以外の法人
ロ 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が千人以下の法人


措置法施行令27条の4
31 法第四十二条の四第十九項第八号の二に規定する政令で定めるものは、法人税法第六十四条の九第十一項又は第十二項の規定の適用を受けるこれらの規定に規定する他の内国法人(以下この項において「他の内国法人」という。)が当該他の内国法人について同条第一項の規定による承認の効力が生ずる日(以下この項において「加入日」という。)を含む事業年度(当該他の内国法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限る。)において法第四十二条の四第十九項第八号に規定する適用除外事業者に該当する場合の当該加入日を含む事業年度における当該他の内国法人(第二十八項第一号ニに掲げる合併に係る合併法人、当該通算親法人の事業年度開始の日において行われた合併で同日の前日において当該通算親法人との間に通算完全支配関係があつた法人を被合併法人とする合併により設立したもの及び当該通算親法人の事業年度開始の時において当該通算親法人との間に通算完全支配関係があるもの並びに次に掲げる要件の全てを満たすものを除く。とする。

一 他の内国法人の加入日において当該他の内国法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のいずれかとの間に当該他の内国法人の当該加入日の前日以前のいずれかの日において通算完全支配関係があつたこと。

二 他の内国法人の加入日を含む当該他の内国法人に係る通算親法人の事業年度開始の日の前日において当該通算親法人との間に法人税法第二条第十二号の七の五に規定する支配関係があつたこと。

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