賃上げ促進税制の用語_給与関係


今回は、賃上げ促進税制の給与関係の用語について確認します。

規定の概要

規定の全体像を確認します。

  1. 大企業向けの制度
  2. 中小企業向けの特例
  3. 用語の意義(今回確認)
  4. 1月未満の取扱い
  5. 手続き
  6. 合併等があった場合
  7. 読み替え規定
用語の一覧

似たような用語が多いため、大企業向けの用語、中小企業向けの用語、共通の用語で分けます。

  1. 設立事業年度(共通)
  2. 国内雇用者(共通)
  3. 給与等(共通)
  4. 継続雇用者給与等支給額(大企業向け、今回確認)
  5. 継続雇用者比較給与等支給額(大企業向け、今回確認)
  6. 控除対象雇用者給与等支給増加額(共通、今回確認)
  7. 教育訓練費(共通)
  8. 比較教育訓練費の額(共通)
  9. 雇用者給与等支給額(中小企業向け、今回確認)
  10. 比較雇用者給与等支給額(中小企業向け、今回確認)

今回は、次の5点を確認します。
4、継続雇用者給与等支給額
5、継続雇用者比較給与等支給額
6、控除対象雇用者給与等支給増加額
9、雇用者給与等支給額
10、比較雇用者給与等支給額

継続雇用者給与等支給額(4号、大企業向け)

継続雇用者給与等支給額のポイントは次の2点です。

  1. 継続雇用者の定義
  2. 給与等支給額から他の者から支払を受ける金額(助成金除く)を除く。
継続雇用者の定義

継続雇用者は、次の項目に該当する人です。

  1. 国内雇用者に該当する。
  2. 一般被保険者に該当する。
  3. 継続雇用制度の対象者を除く。
  4. 当期と前期の全ての月で給料等の支給を受けている。

下記ガイドブックの6ページが理解しやすい図です。

参考情報、経済産業省
大企業向け「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック、5ページ、6ページ
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/pdf/chinagesokushinzeisei_gb_20220706.pdf

給与等支給額の計算

給料を支払うために、他の者から支払を受ける金額(注)がある場合は、
その支払を受ける金額をマイナスします。

継続雇用者給与等支給額=
給料等支給額-他の者から支払を受ける金額(注)

(注)ただし、他の者から支払を受ける金額であっても、国等から受ける助成金などについては除きます。

継続雇用者給与等支給額=
給料等支給額-(他の者から支払を受ける金額-国等の助成金)

参考情報、経済産業省、大企業向け「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック、7ページ
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/pdf/chinagesokushinzeisei_gb_20220706.pdf

継続雇用者給与等支給額(4号)

継続雇用者給与等支給額は、雇用者給与等支給額の頭に「継続」が付きます。雇用者給与等支給額は、費用(損金)算入される国内雇用者の給与等の支給額(9号)です。この雇用者給与等支給額のうち、継続雇用者に該当する部分を継続雇用者給与等支給額といいます。支給額は、他の者から受ける金額(助成金を除く)がある場合はマイナスした後の金額となります。

各用語を分けると次の関係となります。

内容前期当期
大企業向け継続雇用者比較給与等支給額(5号)継続雇用者給与等支給額(4号)
中小企業向け比較雇用者給与等支給額(10号)雇用者給与等支給額
(9号)
雇用者給与等支給額のまとめ

全て、他の者から受ける金額(助成金を除く)がある場合は、控除した金額。


参考情報、規定の関係

4号の「継続雇用者給与等支給額」の基礎となる
「雇用者給与等支給額」が9号にあり、
「継続雇用者」は4号で規定しているので、また4号に戻ります。

措置法42条の12の5第3項第4号=継続雇用者の定義(措令27条の12の5第7項)
 ↓
政令で定める金額=措令27条の12の5第8項
 ↓
第8項、同項(法第42条の12の5第3項)9号の雇用者給与等支給額のうち
 ↓
第8項、同項(法第42条の12の5第3項)4号に規定する継続雇用者


参考規定、継続雇用者給与等支給額の定義

四 継続雇用者給与等支給額 継続雇用者(法人の各事業年度(以下この項において「適用年度」という。)及び当該適用年度開始の日の前日を含む事業年度(次号及び第十号において「前事業年度」という。)の期間内の各月分のその法人の給与等の支給を受けた国内雇用者として政令で定めるものをいう。次号において同じ。)に対する当該適用年度の給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(国又は地方公共団体から受ける雇用保険法第六十二条第一項第一号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものの額を除く。)がある場合には、当該金額を控除した金額。以下この項において同じ。)として政令で定める金額をいう。

租税特別措置法42条の12の5、3項

参考規定、継続雇用者の定義

7 法第四十二条の十二の五第三項第四号に規定する政令で定めるものは、法人の同項第二号に規定する国内雇用者(雇用保険法第六十条の二第一項第一号に規定する一般被保険者に該当する者に限るものとし、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第九条第一項第二号に規定する継続雇用制度の対象である者として財務省令で定める者を除く。第一号及び第二号において「国内雇用者」という。)のうち次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定めるものとする。
一 適用年度(法第四十二条の十二の五第三項第四号に規定する適用年度をいう。以下この号及び次号において同じ。)の月数と当該適用年度開始の日の前日を含む事業年度(設立の日(同項第一号に規定する設立の日をいう。以下この条において同じ。)を含む事業年度にあつては、当該設立の日から当該事業年度終了の日までの期間。以下この号及び次号において「前事業年度」という。)の月数とが同じ場合 当該法人の国内雇用者として当該適用年度及び当該前事業年度の期間内の各月分の当該法人の給与等の支給を受けた者

二 適用年度の月数と前事業年度の月数とが異なる場合 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定めるもの
イ 以下省略

租税特別措置法施行令27条の12の5

参考規定、継続雇用者給与等支給額の金額

8 法第四十二条の十二の五第三項第四号に規定する政令で定める金額は、同項第九号に規定する雇用者給与等支給額のうち同項第四号に規定する継続雇用者(次項各号において「継続雇用者」という。)に係る金額とする。

租税特別措置法施行令27条の12の5

参考規定、雇用者給与等支給額の定義

九 雇用者給与等支給額 法人の適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう。

租税特別措置法42条の12の5、3項
継続雇用者比較給与等支給額(5号、大企業向け)

原則として継続雇用者比較給与等支給額は、前期の継続雇用者給与等支給額となります。支給額は、他の者から受ける金額(助成金を除く)がある場合はマイナスした後の金額となります。

4号の表と同じ表です。

内容前期当期
大企業向け継続雇用者比較給与等支給額(5号)継続雇用者給与等支給額(4号)
中小企業向け比較雇用者給与等支給額(10号)雇用者給与等支給額
(9号)
雇用者給与等支給額のまとめ

参考規定

五 継続雇用者比較給与等支給額 前号の法人の継続雇用者に対する前事業年度の給与等の支給額として政令で定める金額をいう。

租税特別措置法42条の12の5、3項

前事業年度の月数と適用年度の月数とが異なる場合

9 法第四十二条の十二の五第三項第五号に規定する政令で定める金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 第七項第一号に掲げる場合 法第四十二条の十二の五第三項第五号の法人の第七項第一号に規定する前事業年度に係る給与等支給額(法人の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者(同条第三項第二号に規定する国内雇用者をいう。以下この条において同じ。)に対する給与等の支給額(法第四十二条の十二の五第三項第四号に規定する支給額をいう。第十九項及び第二十項において同じ。)をいう。以下第十八項までにおいて同じ。)のうち継続雇用者に係る金額
二 第七項第二号イに掲げる場合 以下省略

租税特別措置法施行令27条の12の5
控除対象雇用者給与等支給増加額(6号、共通)

控除対象雇用者給与等支給増加額は、
法人税の特別控除の基礎となる金額です。

算式でまとめると、次のとおりです。

控除対象雇用者給与等支給増加額=
雇用者給与等支給額(当期)-比較雇用者給与等支給額(前期)

この控除対象雇用者給与等支給増加額が、
調整雇用者給与等支給増加額(注1)を超える場合は、
調整雇用者給与等支給増加額となります。

この「調整」は、助成金を受け取っている場合は、
助成金をマイナスした後という意味です。

(注1)調整雇用者給与等支給増加額は、イーロで求めます。

イ、雇用者給与等支給額(注2)
ロ、比較雇用者給与等支給額(注2)
(注2)雇用安定助成金額がある場合はマイナスした後の金額。

参考情報、雇用安定助成金の定義

国又は地方公共団体から受ける雇用保険法第六十二条第一項第一号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものの額をいう。

租税特別措置法42条の12の5、3項

まとめると次のような関係になります。

内容前期当期増加摘要
助成金を控除する前A、比較雇用者給与等支給
1,000
B、雇用者給与等支給額
1,500
B-A
控除対象雇用者給与等支給増加額
500
他の者から受ける金額(助成金を除く)がある場合は、除いた金額。
助成金を控除した後イ、比較雇用者給与等支給額(助成金控除後)
1,000-300=700
ロ、雇用者給与等支給額(助成金控除後)
1,500-400=1,100
イーロ
調整雇用者給与等支給増加額
1,100-700=400
助成金をさらに除く。
控除対象雇用者給与等支給増加額のまとめ

1、助成金控除前
当期給料1,500-前期給料1,000=増加額500

2、助成金控除後
当期給料1,100-前期給料700=調整増加額400

3、1>2 助成金控除後の400(少ない金額)が特別控除の対象となります。


参考情報、規定の関係

控除対象雇用者給与等支給増加額を計算するための、
雇用者給与等支給額と比較雇用者給与等支給については、
他の者から受ける金額(助成金を除く)を既にマイナスしています。

ただし、国から受ける助成金等についてはマイナスしていませんので、
さらに助成金等マイナスします。

(結論)
法人税の特別控除を判定する金額は、助成金をマイナスしませんが、
特別控除額を計算する金額は、助成金をマイナスします。

参考規定、控除対象雇用者給与等支給増加額の定義

六 控除対象雇用者給与等支給増加額 法人の雇用者給与等支給額からその比較雇用者給与等支給額を控除した金額(当該金額が当該法人の調整雇用者給与等支給増加額(イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除した金額をいう。)を超える場合には、当該調整雇用者給与等支給増加額)をいう。
イ 雇用者給与等支給額(当該雇用者給与等支給額の計算の基礎となる給与等に充てるための雇用安定助成金額(国又は地方公共団体から受ける雇用保険法第六十二条第一項第一号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものの額をいう。以下この号において同じ。)がある場合には、当該雇用安定助成金額を控除した金額)
ロ 比較雇用者給与等支給額(当該比較雇用者給与等支給額の計算の基礎となる給与等に充てるための雇用安定助成金額がある場合には、当該雇用安定助成金額を控除した金額)

租税特別措置法42条の12の5、3項
雇用者給与等支給額(9号、中小企業向け)

雇用者給与等支給額は、費用(損金)算入される国内雇用者の給与等の支給額です。支給額は、他の者から受ける金額(助成金を除く)がある場合はマイナスした後の金額となります。

4号の表と同じ表です。

内容前期当期
大企業向け継続雇用者比較給与等支給額(5号)継続雇用者給与等支給額(4号)
中小企業向け比較雇用者給与等支給額(10号)雇用者給与等支給額
(9号)
雇用者給与等支給額のまとめ

参考規定、雇用者給与等支給額の定義

九 雇用者給与等支給額 法人の適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう。

租税特別措置法42条の12の5、3項
比較雇用者給与等支給額(10号、中小企業向け)

原則として比較雇用者給与等支給額は、前期の雇用者給与等支給額となります。支給額は、他の者から受ける金額(助成金を除く)がある場合はマイナスした後の金額となります。

4号の表と同じ表です。

内容前期当期
大企業向け継続雇用者比較給与等支給額(5号)継続雇用者給与等支給額(4号)
中小企業向け比較雇用者給与等支給額(10号)雇用者給与等支給額
(9号)
雇用者給与等支給額のまとめ

参考規定、比較雇用者給与等支給額の定義

十 比較雇用者給与等支給額 法人の前事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額(前事業年度の月数と適用年度の月数とが異なる場合には、その月数に応じ政令で定めるところにより計算した金額をいう。

租税特別措置法42条の12の5、3項

前事業年度の月数と適用年度の月数とが異なる場合

18 法第四十二条の十二の五第三項第十号に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 法第四十二条の十二の五第三項第十号の前事業年度の月数が同号の適用年度の月数を超える場合 当該前事業年度に係る給与等支給額に当該適用年度の月数を乗じてこれを当該前事業年度の月数で除して計算した金額

二 法第四十二条の十二の五第三項第十号の前事業年度の月数が同号の適用年度の月数に満たない場合 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額
イ 当該前事業年度が六月に満たない場合 当該適用年度開始の日前一年(当該適用年度が一年に満たない場合には、当該適用年度の期間)以内に終了した各事業年度(イにおいて「前一年事業年度」という。)に係る給与等支給額の合計額に当該適用年度の月数を乗じてこれを前一年事業年度の月数の合計数で除して計算した金額
ロ 当該前事業年度が六月以上である場合 当該前事業年度に係る給与等支給額に当該適用年度の月数を乗じてこれを当該前事業年度の月数で除して計算した金額

租税特別措置法施行令27条の12の5
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