賃上げ促進税制(一般特例)


今回は、賃上げ促進税制の一般特例を確認します。
ここでは、大企業向け特例を一般特例、
中小企業向け特例をそのまま中小企業向け特例といいます。

政令も一緒に確認したかったのですが、
e-govが5/10時点で更新されていないようなので、後日確認します。

一般特例の情報は下記サイトから確認できます。
「賃上げ促進税制」について(令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始される各事業年度対象)

中小企業向け特例の情報は下記サイトから確認できます。
中小企業向け「賃上げ促進税制」(令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度が対象)

一般特例の概要

細かい要件を除きます。

青色申告法人が令和4年度(令和5年度)中に
国内雇用者に給料を支払う場合に、
前期の給料と比較して、給料の増加割合が3%以上のときは、
法人税額から給料の増加額の15%を控除できます。
(控除額は法人税額の20%が限度)

仮に、賃上げが1,000の場合、
控除額は、1,000×15%=150となります。

法人税が300の場合
限度額が300×20%=60となりますので、
法人税の減税は60となります。
控除額150>控除限度額60 → 少ない金額60

控除割合の追加
1、給料の増加割合が4%以上の場合は、控除割合を10%追加する。
2、一定の教育訓練費の割合が20%以上の場合は、控除割合を5%追加する。

原則の控除割合は15%です。上記1、2の要件を満たした場合、
控除割合が増加して、さらに法人税を減らせます。
1を満たせば25%、2を満たせば20%、両方満たせば30%に増加します。

対象法人、対象期間、国内雇用者

対象法人について
大企業だけではなく中小企業も対象です。一般的には中小企業者向け特例の方が要件が緩く、控除額も大きいので中小企業者向け特例を使用します。

対象期間について
令和4年度、令和5年度の2期間です。
ただし、下記3つの事業年度は使用できません。

  1. 設立事業年度
    比較する前期の給与がないため。
  2. 解散(合併解散除く)
    事業を継続しないため
  3. 清算中
    事業を継続しないため

国内雇用者について
国内で働く人の賃上げを促進させることが目的のため、
国外で働く人や、国内であっても役員は、国内雇用者に含まれません。
パート、アルバイト、日雇い労働者は、国内雇用者に含みます。

給料の増加割合

次の給料増加割合が3%以上必要です。

継続雇用者給与等支給額(本年)-継続雇用者比較給与等支給額(前年)=増加
——————————————————————————————
継続雇用者比較給与等支給額(前年)

例えば、次の場合
前年の給料 100
本年の給料 105

105(本年)-100(前年)=5(増加)÷100(前年)
=5%≧3% で要件を満たします。

資本金10億円以上、かつ、従業員数1,000人以上の法人については、
マルチステークホルダー方針の公表が必要ですが、
ほとんどの法人には関係ないでしょう。

減税できる金額

控除額は、
控除対象雇用者給与等支給増加額(控除の基礎となる金額)×15%
となります。

控除対象雇用者給与等支給増加額(限度あり)は、
雇用者給与等支給額(本年)-比較雇用者給与等支給額(前年)
で計算します。

増加額>調整雇用者給与等支給増加額(イ-ロ=限度額)のときは、
増加額は限度額とします。

A、形式的賃上げ
 雇用者給与等支給額(本年)-比較雇用者給与等支給額(前年)
B、実質的賃上げ
 雇用者給与等支給額(雇用安定助成金額除く、本年)-比較雇用者給与等支給額(雇用安定助成金額を除く、前年)

上記AとBを比較して、少ない金額が増加額となります。

計算例1

内容前年本年増加
雇用者給与等支給額10001500500
うち安定助成金額100200100
助成金控除後9001300400
計算例1

A、1500-1000=500
B、1300-900=400
AとBを比較して少ない金額400が増加額となります。

500の賃上げをしたとしても、
助成金を追加で100もらっているので、
増加額は400となります。

計算例2

内容前年本年増加
雇用者給与等支給額10001500500
うち安定助成金額10080▲20
助成金控除後9001420520
計算例2

A、1500-1000=500
B、1420-900=520
AとBを比較して少ない金額500が増加額となります。

計算例1と異なり、助成金が20減っていますが、
500の賃上げをしているため、増加額は500となります。
助成金20減った部分は法人が負担していますが、
この部分は考慮されません。

計算例3

内容前年本年増加
雇用者給与等支給額10001500500
うち安定助成金額100600500
助成金控除後900900
計算例3

A、1500-1000=500
B、900-900=0
AとBを比較して少ない金額0が増加額となります。減税額はありません。
もらったお金で賃上げしても、控除は認めない仕組みです。

以上、賃上げ促進税制の一般特例について確認しました。

参考リンク
賃上げ促進税制の中小企業者
賃上げ促進税制(中小企業者向け特例)

参考規定、賃上げ促進税制の一般特例
内容規定
要件1青色申告書を提出する法人が、令和四年四月一日から令和六年三月三十一日までの間に開始する各事業年度(設立事業年度、解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度を除く。)において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、
要件2当該事業年度において当該法人の継続雇用者給与等支給額からその継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額の当該継続雇用者比較給与等支給額に対する割合(第一号において「継続雇用者給与等支給増加割合」という。)百分の三以上であるとき(当該事業年度終了の時において、当該法人の資本金の額又は出資金の額が十億円以上であり、かつ、当該法人の常時使用する従業員の数が千人以上である場合には、給与等の支給額の引上げの方針、下請中小企業振興法(昭和四十五年法律第百四十五号)第二条第四項に規定する下請事業者その他の取引先との適切な関係の構築の方針その他の政令で定める事項を公表している場合として政令で定める場合に限る。)は、
効果当該法人の当該事業年度の所得に対する調整前法人税額(第四十二条の四第十九項第二号に規定する調整前法人税額をいう。以下この項及び次項において同じ。)から、当該法人の当該事業年度の控除対象雇用者給与等支給増加額(当該事業年度において第四十二条の十二の規定の適用を受ける場合には、同条の規定による控除を受ける金額の計算の基礎となつた者に対する給与等の支給額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した残額)に百分の十五(当該事業年度において次の各号に掲げる要件を満たす場合には、百分の十五に当該各号に定める割合(当該事業年度において次の各号に掲げる要件の全てを満たす場合には、当該各号に定める割合を合計した割合)を加算した割合)を乗じて計算した金額(以下この項において「税額控除限度額」という。)を控除する。
後段この場合において、当該税額控除限度額が、当該法人の当該事業年度の所得に対する調整前法人税額の百分の二十に相当する金額を超えるときは、その控除を受ける金額は、当該百分の二十に相当する金額を限度とする。
控除割合の追加 継続雇用者給与等支給増加割合が百分の四以上であること 百分の十
 当該法人の当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額(その教育訓練費に充てるため他の者(その法人が外国法人である場合の法人税法第百三十八条第一項第一号に規定する本店等を含む。第三項第四号において同じ。)から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除した金額。次項第二号及び第三項第八号において同じ。)からその比較教育訓練費の額を控除した金額の当該比較教育訓練費の額に対する割合が百分の二十以上であること 百分の五
賃上げ促進税制、一般特例

六 控除対象雇用者給与等支給増加額(の定義)

法人の雇用者給与等支給額からその比較雇用者給与等支給額を控除した金額(当該金額が当該法人の調整雇用者給与等支給増加額(イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除した金額をいう。)を超える場合には、当該調整雇用者給与等支給増加額)をいう。

イ 雇用者給与等支給額(当該雇用者給与等支給額の計算の基礎となる給与等に充てるための雇用安定助成金額(国又は地方公共団体から受ける雇用保険法第六十二条第一項第一号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものの額をいう。以下この号において同じ。)がある場合には、当該雇用安定助成金額を控除した金額)

ロ 比較雇用者給与等支給額(当該比較雇用者給与等支給額の計算の基礎となる給与等に充てるための雇用安定助成金額がある場合には、当該雇用安定助成金額を控除した金額)

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