賃上げ促進税制_大企業向け


今回は、大企業向けの賃上げ促進税制を確認してみましょう。

規定の概要

規定の全体像を確認します。

  1. 大企業向けの制度 ← 今回確認
  2. 中小企業向けの特例
  3. 用語の意義
  4. 1月未満の取扱い
  5. 手続き ← 今回確認
  6. 合併等があった場合
  7. 読み替え規定
大企業向けの概要

ポイントを箇条書きしていきます。

  1. 青色申告法人の令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する事業年度であること
  2. 国内雇用者に対して給与等を支給すること
  3. 継続雇用者給与等支給増加割合が3%以上であること
  4. 上記1から4を満たすときは、法人税額から税額控除限度額を控除する。
  5. 税額控除限度額は、法人税の20%を限度とする。

税法特有の用語などは別途確認します。

大企業向けの制度(対象者は青色申告法人)

対象者は青色申告法人であるため、中小企業者なども対象者となります。
中小企業者については特例の方が有利となるため、
大企業向けの制度を使うことはほとんどないでしょう。

対象期間

対象期間は、令和4年4月1日から
令和6年3月31日までの間に開始する事業年度です。
3月決算の場合、令和5年3月期と令和6年3月期となります。

継続雇用者給与等支給増加割合が3%以上

継続雇用者給与等支給増加割合が
3%以上増加している必要があります。

継続雇用者給与等支給増加割合=

継続雇用者給与等支給額(当期)-継続雇用者比較給与等支給額(前期)
———————————————————————————–
継続雇用者比較給与等支給額(前期)

あまり多くはないと思いますが、資本金10億円以上、かつ、従業員数1000人以上いる法人については、マルチステークホルダー要件を満たす必要があります。

控除する金額

算式でまとめます。

税額控除限度額=
控除対象雇用者給与等支給増加額(一定の金額を控除)×15%

ただし、法人税額の20%を限度とします。

割増控除(その1)

原則の控除割合は15%ですが、
継続雇用者給与等支給増加割合が4%以上である場合は、
控除割合を10%加算して25%とすることが可能です。

割増控除(その2)

原則の控除割合は15%ですが、
教育訓練費増加割合が20%以上である場合は、
控除割合を5%加算して20%とすることが可能です。

教育訓練費増加割合=

教育訓練費(当期)-比較教育訓練費(前期)
——————————————————
比較教育訓練費(前期)

割増控除を併用する場合の控除割合は、
30%となります。

手続き

法人税の特別控除を使用する場合は、確定申告書等に
一定の事項を記載した書類(別表)を添付する必要があります。
記載金額を限度とする要件がありますので、
給与等の集計は注意しましょう。

別表6(31)
給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/06(31).pdf

別表6(31)付表1
給与等支給額及び比較教育訓練費の額の計算に関する明細書https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/06(31)-f1.pdf

参考情報

経済産業省、賃上げ税制について(賃上げ促進税制/所得拡大促進税制)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai.html

大企業向けの法人税の特別控除

(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)
第四十二条の十二の五 青色申告書を提出する法人が、令和四年四月一日から令和六年三月三十一日までの間に開始する各事業年度(設立事業年度、解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度を除く。)において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、当該事業年度において当該法人の継続雇用者給与等支給額からその継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額の当該継続雇用者比較給与等支給額に対する割合(第一号において「継続雇用者給与等支給増加割合」という。)が百分の三以上であるとき(当該事業年度終了の時において、当該法人の資本金の額又は出資金の額が十億円以上であり、かつ、当該法人の常時使用する従業員の数が千人以上である場合には、給与等の支給額の引上げの方針、下請中小企業振興法(昭和四十五年法律第百四十五号)第二条第四項に規定する下請事業者その他の取引先との適切な関係の構築の方針その他の政令で定める事項を公表している場合として政令で定める場合に限る。)は、当該法人の当該事業年度の所得に対する調整前法人税額(第四十二条の四第十九項第二号に規定する調整前法人税額をいう。以下この項及び次項において同じ。)から、当該法人の当該事業年度の控除対象雇用者給与等支給増加額(当該事業年度において第四十二条の十二の規定の適用を受ける場合には、同条の規定による控除を受ける金額の計算の基礎となつた者に対する給与等の支給額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した残額)に百分の十五(当該事業年度において次の各号に掲げる要件を満たす場合には、百分の十五に当該各号に定める割合(当該事業年度において次の各号に掲げる要件の全てを満たす場合には、当該各号に定める割合を合計した割合)を加算した割合)を乗じて計算した金額(以下この項において「税額控除限度額」という。)を控除する。この場合において、当該税額控除限度額が、当該法人の当該事業年度の所得に対する調整前法人税額の百分の二十に相当する金額を超えるときは、その控除を受ける金額は、当該百分の二十に相当する金額を限度とする。
一 継続雇用者給与等支給増加割合が百分の四以上であること 百分の十
二 当該法人の当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額(その教育訓練費に充てるため他の者(その法人が外国法人である場合の法人税法第百三十八条第一項第一号に規定する本店等を含む。第三項第四号において同じ。)から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除した金額。次項第二号及び第三項第八号において同じ。)からその比較教育訓練費の額を控除した金額の当該比較教育訓練費の額に対する割合が百分の二十以上であること 百分の五

5 第一項及び第二項の規定は、確定申告書等(これらの規定により控除を受ける金額を増加させる修正申告書又は更正請求書を提出する場合には、当該修正申告書又は更正請求書を含む。)にこれらの規定による控除の対象となる控除対象雇用者給与等支給増加額(第一項の規定の適用を受けようとする場合には、継続雇用者給与等支給額及び継続雇用者比較給与等支給額を含む。)、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。この場合において、第一項及び第二項の規定により控除される金額の計算の基礎となる控除対象雇用者給与等支給増加額は、確定申告書等に添付された書類に記載された控除対象雇用者給与等支給増加額を限度とする。

租税特別措置法
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