資産の移転と譲渡


調べものや実務で気になった論点についてメモします。
今回は、資産の「移転」と資産の「譲渡」の違いです。

図解、譲渡所得に違いが記載されています。

4、「資産の譲渡」の概念より「資産の移転」の概念の方が広いということができます。

令和4年度、図解、譲渡所得、12ページ

と書いてあります。

所得税法の規定を「移転」で検索してみると、
みなし譲渡の規定がヒットします。

みなし譲渡の規定を簡単にまとめると

贈与、相続、遺贈、低額譲渡の事由により
譲渡所得の基因となる資産の「移転」があった場合には、
時価で資産の「譲渡」があったものとみなす。

という規定です。

無償や時価より低い金額で資産を誰かに渡したとしても、
有償(時価)で資産を誰かに渡したものとして、
所得を計算するという意味です。

みなし譲渡の要件で「移転」とあり、この移転には、
借地権等の設定は含まれません。

譲渡所得の「譲渡」の定義で、
「建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるもの。以下この条において同じ。」を含む。

として、譲渡の範囲を広げています。
ただし、「以下この条において」とあるので、
譲渡所得の規定に限定されています。

整理すると

・借地権等の設定のうち、一定のものは「譲渡」に含めて、譲渡所得を計算することになります。
・借地権等の設定は「移転」には該当しないため、無償や低額であっても、みなし譲渡の対象にはなりません。

借地権等の設定については、基本的には、
「譲渡」でも「移転」でもなくて「設定」なんでしょうね。

法人税では、時価で寄附金と受贈益になるのでしょう。

参考規定など

(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
第五十九条 次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。

 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)

(譲渡所得)
第三十三条 譲渡所得とは、資産の譲渡建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるもの含む以下この条において同じ。)による所得をいう。

所得税法

(借地権等の設定及び借地の無償返還)
59-5 法第59条第1項に規定する「譲渡所得の基因となる資産の移転」には、借地権等の設定は含まれないのであるが、借地の返還は、その返還が次に掲げるような理由に基づくものである場合を除き、これに含まれる。(昭56直資3-2、直所3-3追加)

(1) 借地権等の設定に係る契約書において、将来借地を無償で返還することが定められていること。

(2) 当該土地の使用の目的が、単に物品置場、駐車場等として土地を更地のまま使用し、又は仮営業所、仮店舗等の簡易な建物の敷地として使用していたものであること。

(3) 借地上の建物が著しく老朽化したことその他これに類する事由により、借地権が消滅し、又はこれを存続させることが困難であると認められる事情が生じたこと。

所得税基本通達
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