資産の評価損の損金不算入_評定があった場合


今回は、法人税の資産の評価損のうち、
評定があった場合について確認してみましょう。

評定があった場合の損金算入

法人について再生計画認可の決定などが生じた場合において、その法人がその有する資産の価額につき政令で定める評定を行っているときは、その資産(注1)の評価損の額として政令で定める金額は、原則に関係なく、その決定などが生じた事業年度の損金算入となります。

注1、評価損の計上に適しないものとして政令で定めるものを除きます。

再生計画認可の決定に準ずる事実(政令で定める事実)

評価損の規定は、評価益の規定と合わせています。

第六十八条の二 法第三十三条第四項(資産の評価損の損金不算入等)に規定する政令で定める事実は、第二十四条の二第一項(再生計画認可の決定に準ずる事実等)に規定する事実とする。

法人税法施行令68条の2、再生計画認可の決定に準ずる事実等

この事実とは、債務処理に関する計画が1号から3号まで及び4号又は5号に掲げる要件に該当するものに限ります(規定は載せていません)。

再生計画認可の決定に準ずる事実等の要件

  1. 一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に従って策定されている。
  2. 債務者の有する資産・負債につき一定の事項に従って資産評定が行われ、その資産評定による価額を基礎としたその債務者のB/Sが作成されている。
  3. B/S(2号)における資産・負債の価額、その計画における損益の見込み等に基づいて債務者に対して債務免除等をする金額が定められている。
  4. 2以上の金融機関等が債務免除等することが定められている。
  5. 政府関係金融機関等が債務免除等することが定められている。

下記のいずれかの要件を満たす必要があります。

1号、2号、3号
+4号(2以上の金融機関等の債務免除等)

1号、2号、3号
+5号(政府関係金融機関等の債務免除等)

評定方法は2つ(政令で定める評定)

1号が再生計画認可の決定があったこと、
2号が再生計画認可の決定に準ずる事実(上記の要件を満たす事実)です。

2 法第三十三条第四項に規定する政令で定める評定は、次の各号に掲げる事実の区分に応じ当該各号に定める評定とする。
一 再生計画認可の決定があつたこと 内国法人がその有する法第三十三条第四項に規定する資産の価額につき当該再生計画認可の決定があつた時の価額により行う評定
二 法第三十三条第四項に規定する政令で定める事実 内国法人が第二十四条の二第一項第一号イに規定する事項に従つて行う同項第二号の資産評定

法人税法施行令68条の2、再生計画認可の決定に準ずる事実等

参考規定

(再生計画認可の決定に準ずる事実等)
第二十四条の二 法第二十五条第三項(資産の評価益)に規定する政令で定める事実は、内国法人について再生計画認可の決定があつたことに準ずる事実(その債務処理に関する計画が第一号から第三号まで及び第四号又は第五号に掲げる要件に該当するものに限る。)とする。
一 一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則(公正かつ適正なものと認められるものであつて、次に掲げる事項が定められているもの(当該事項が当該準則と一体的に定められている場合を含む。)に限るものとし、特定の者(政府関係金融機関、株式会社地域経済活性化支援機構及び協定銀行を除く。)が専ら利用するためのものを除く。)に従つて策定されていること。
イ 債務者の有する資産及び負債の価額の評定(以下この項において「資産評定」という。)に関する事項(公正な価額による旨の定めがあるものに限る。)
ロ 当該計画が当該準則に従つて策定されたものであること並びに次号及び第三号に掲げる要件に該当することにつき確認をする手続並びに当該確認をする者(当該計画に係る当事者以外の者又は当該計画に従つて債務免除等をする者で、財務省令で定める者に限る。)に関する事項

二 債務者の有する資産及び負債につき前号イに規定する事項に従つて資産評定が行われ、当該資産評定による価額を基礎とした当該債務者の貸借対照表が作成されていること。
以下省略

法人税法施行令24条の2、再生計画認可の決定に準ずる事実等
評価損が計上できない資産(政令で定める資産)

評価損の規定は、評価益の規定と合わせています。

3 法第三十三条第四項に規定する政令で定める資産は、第二十四条の二第四項各号に掲げる資産とする。

法人税法施行令68条の2、再生計画認可の決定に準ずる事実等

まとめますと、
再生計画認可の決定があった日(準ずる事実があった日)の属する事業年度開始日前5年以内に開始した各事業年度(前5年内事業年度)において、次に掲げる適用を受けた減価償却資産(注2)

  • 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入
  • 特別勘定を設けた場合の国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入
  • 工事負担金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入
  • 非出資組合が賦課金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入
  • 保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入
  • 特別勘定を設けた場合の保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入
  • 転廃業助成金等に係る課税の特例

注2、その減価償却資産が適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配により被合併法人等(被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人)から移転を受けたものである場合には、その被合併法人等のその前5年内事業年度において次に掲げる規定の適用を受けたものを含む。


過去5年内に圧縮記帳を受けた減価償却資産については、
評価損計上ができません。

圧縮記帳を受けた減価償却資産については簿価が減少しています。
圧縮後簿価(1,000)>時価(300)となる場合は、
評価損計上が認められるような気がしますが、
圧縮後簿価(1,000)<時価(1,200)となる場合には、
評価益計上が禁止されていますので、
評価益の規定に合わせる形で評価損計上が禁止されています。

他には、短期売買商品等、売買目的有価証券、償還有価証券、少額減価償却資産、一括償却資産なども評価損計上ができません。

評価損の金額(政令で定める金額)

1号が再生計画認可の決定があったこと、
2号が再生計画認可の決定に準ずる事実に合わせて
それぞれ規定が設けられています。

1号の評価損は、再生計画認可の決定時の価額に達するまでの金額です。
直前簿価2,000、決定時の価額700の場合、評価損は1,300となります。

2号の評価損は、評定によるB/Sの価額に達するまでの金額です。
直前簿価2,000、B/S価額600の場合、評価損は1,400となります。

評定による評価損があった場合は、資産の帳簿価額をマイナスします。

4 法第三十三条第四項に規定する政令で定める金額は、次の各号に掲げる事実の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 再生計画認可の決定があつたこと 法第三十三条第四項に規定する資産の当該再生計画認可の決定があつた時の直前の帳簿価額が当該再生計画認可の決定があつた時の価額を超える場合のその超える部分の金額
二 法第三十三条第四項に規定する政令で定める事実 同項に規定する資産の当該事実が生じた時の直前のその帳簿価額が第二十四条の二第一項第二号の貸借対照表に計上されている価額を超える場合のその超える部分の金額

法人税法施行令68条の2、再生計画認可の決定に準ずる事実等
手続き

評定による損金算入は、次の3つの手続き要件を満たす必要があります。

  • 確定申告書に評価損明細を記載がある。
  • 確定申告書に評価損関係書類の添付がある。
  • 評価益がある場合には確定申告書に評価益関係書類の添付がある。

評価損益明細の記載、評価損益関係書類の添付がない場合であっても
やむを得ない事情があるときは、適用可能です。

参考、別表14(1)民事再生等評価換えによる資産の評価損益に関する明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/14(01).pdf

参考、別表7(3)更生欠損金の損金算入及び民事再生等評価換えが行われる場合の再生等欠損金の損金算入に関する明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/07(03).pdf

参考規定

4 内国法人について再生計画認可の決定があつたことその他これに準ずる政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人がその有する資産の価額につき政令で定める評定を行つているときは、その資産(評価損の計上に適しないものとして政令で定めるものを除く。)の評価損の額として政令で定める金額は、第一項の規定にかかわらず、これらの事実が生じた日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

7 第四項の規定は、確定申告書に同項に規定する評価損の額として政令で定める金額の損金算入に関する明細(次項において「評価損明細」という。)の記載があり、かつ、財務省令で定める書類(次項において「評価損関係書類」という。)の添付がある場合(第二十五条第三項(資産の評価益)に規定する資産につき同項に規定する評価益の額として政令で定める金額がある場合(次項において「評価益がある場合」という。)には、同条第六項に規定する評価益明細(次項において「評価益明細」という。)の記載及び同条第六項に規定する評価益関係書類(次項において「評価益関係書類」という。)の添付がある場合に限る。)に限り、適用する。

8 税務署長は、評価損明細(評価益がある場合には、評価損明細又は評価益明細)の記載又は評価損関係書類(評価益がある場合には、評価損関係書類又は評価益関係書類)の添付がない確定申告書の提出があつた場合においても、当該記載又は当該添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、第四項の規定を適用することができる。

法人税法33条、資産の評価損

参考規定、再生計画認可の決定に準ずる事実等

(再生計画認可の決定に準ずる事実等)
5 法第三十三条第四項の規定の適用を受けた場合において、同項に規定する評価損の額として政令で定める金額を損金の額に算入された資産については、同項の規定の適用を受けた事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上、当該資産の帳簿価額は、別段の定めがあるものを除き、当該適用に係る同項に規定する事実が生じた日において、当該損金の額に算入された金額に相当する金額の減額がされたものとする。

法人税法施行令68条の2、再生計画認可の決定に準ずる事実等

参考規定、評価損関係書類

(資産の評価損の損金算入に関する書類)
第二十二条の二 法第三十三条第七項(資産の評価損の損金算入に関する書類)に規定する財務省令で定める書類は、次の各号に掲げる事実の区分に応じ当該各号に定める書類とする。
一 内国法人について再生計画認可の決定があつたこと 当該決定があつた旨を証する書類及び令第六十八条の二第四項第一号(再生計画認可の決定に準ずる事実等)に規定する価額の算定の根拠を明らかにする事項を記載した書類
二 法第三十三条第四項に規定する政令で定める事実 第八条の六第三項第二号イ及びロ(資産の評価益の益金算入に関する書類等)に掲げる書類

法人税法施行規則22条の2、資産の評価損の損金算入に関する書類
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