資産を寄附した場合


今回は、金銭ではなく金銭以外の資産を寄附した場合の取扱いを確認します。

資産を寄附した場合(原則)

金銭を寄附した場合は、その金額がそのまま寄附金の額となりますが、金銭以外の資産(例えば土地)を寄附した場合は、寄附した時の土地の価額が寄附金の額となります。

例えば、土地の帳簿価額3000万円、土地の時価5000万円の場合、
税金計算上の寄附金は時価の5000万円となります。

会計上の仕訳

借方貸方
寄附金 3000万円土地(簿価) 3000万円
会計上の仕訳

税務上の仕訳

借方貸方
現金 5000万円土地譲渡収入 5000万円
土地譲渡損 3000万円土地(簿価) 3000万円
寄附金 5000万円現金 5000万円
税務上の仕訳

会計上の費用は寄附金3000万円ですが、税金計算上の寄附金は時価5000万円となるため、別表には5000万円を記入します。

資産を寄附した場合(基本通達9-4-8)

法人税基本通達9-4-8に特殊な取扱いがあります。

上記のケースで、土地の簿価3000万円を別表に記入して確定申告したときは、記載金額を限度とする要件があるため、3000万円を基に限度額を計算することになります。時価と簿価との差額2000万円の分だけ限度額が少なく計算されるため、不利な計算となります。

基本通達では、不利な計算にならないようにするため、指定寄附金(3項)や特定公益増進法人(4項)に対する寄附金の計算上、土地の時価5000万円で計算することが認められています。

(考え方)
基本通達では「3項と4項の規定を適用することができる」とあり、記載金額を限度とする9項は関係ないのか(記載金額を限度とする)と考えましたが、3項と4項は時価を記載することを要件にしていないため、「時価を記載していなかったとしても時価で計算することができる」という意味だと思います。

2023/5/2、以下追加修正しました。

確定申告時の話ではなくて、修正申告書や更正請求書の話なのでしょうね。
3項と4項に限定しているため、一般寄附金(1項)にはない取扱いです。

基本通達では、
帳簿価額により計算し、かつ、確定申告書に記載した場合」とあります。

指定寄付金(3項)の場合

指定寄付金(3項)として簿価3000万円を確定申告書に記載すれば、
時価との差額2000万円についても指定寄付金として
自動的に適用される取扱いです。

指定寄付金については、全額損金算入となるため、
差額2000万円を記載しなくても、当初の確定申告で適用されるため、
再計算(修正申告、更正の請求)の可能性はないのでしょう。

特定公益増進法人に対する寄附金(4項)の場合

特定公益増進法人に対する寄附金(4項)として簿価3000万円を確定申告書に記載すれば、時価との差額2000万円についても特定公益増進法人に対する寄附金として自動的に適用される取扱いです。

指定寄付金(3項)と異なり、計算結果が異なる場合は、
基本的には修正申告になります。

いずれも、記載金額の問題であって、
簿価を記載しない場合や一般寄附金として記載したものについて
再計算(修正申告や更正の請求)を認める通達ではないのでしょうね。

参考通達など

参考リンク
寄附金の損金不算入

手続き規定

 第三項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第三項各号に掲げる寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付がある場合に限り、第四項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第四項に規定する寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付があり、かつ、当該書類に記載された寄附金が同項に規定する寄附金に該当することを証する書類として財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。この場合において、第三項又は第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。

法人税法37条

資産を帳簿価額により寄附した場合の処理

(資産を帳簿価額により寄附した場合の処理)
9-4-8 法人が金銭以外の資産をもって寄附金を支出した場合には、その寄附金の額は支出の時における当該資産の価額によって計算するのであるが、法人が金銭以外の資産をもって支出した法第37条第3項各号《指定寄附金等》及び第4項《特定公益増進法人に対する寄附金》に定める寄附金につき、その支出した金額を帳簿価額により計算し、かつ、確定申告書に記載した場合には、法人の計上した寄附金の額が当該資産の価額より低いためその一部につき当該確定申告書に記載がないこととなるときであっても、これらの項の規定を適用することができる。(平10年課法2-7「十一」、平15年課法2-7「二十五」、平19年課法2-3「二十三」、平24年課法2-17「一」により改正)

法人税基本通達
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