贈与等の国外転出時課税の対象となった有価証券等を売却した場合の調整計算


今回は、非居住者に有価証券等を贈与した場合の国外転出時課税の対象となった有価証券等を売却した場合の調整計算について確認してみましょう。

内容

・国外転出した場合の国外転出時課税の取扱い
・非居住者に贈与した場合の国外転出時課税の取扱い
この2つの特例は似ていますので、国外転出の取扱いを参考にして確認してみましょう。

国外転出した時に所得税の計算対象となった有価証券等が実際に売却された場合は、有価証券等を取得した金額が更新されることになります。更新しないと2重に計算されてしまうからです。

参考リンク
国外に転出した後に有価証券を売却した場合等の調整計算

非居住者に贈与した場合の国外転出時課税の場合も同じで、有価証券等を受け取った個人が実際に有価証券等を売却した場合は、取得した金額が更新されます。

買った金額を更新する。

有価証券については、贈与等があった時の価額に更新されます。ただし、国外転出時課税には再計算できる特例があり、再計算された場合はその再計算の時の価額となります。

例えば、有価証券を買った金額が1,000、贈与した時の価額が1,500の場合、有価証券を買った金額が1,500に更新されます。

実際に売却した金額が2,200の場合、売却益は、
売却収入2,200-買った金額1,500=700となります。

・未決済の信用取引等
・未決済のデリバティブ取引
の2つについては、実際に決済により生じた利益や損失から国外転出時課税で計算された利益をマイナスします。国外転出時課税で計算された損失についてはプラスします。

例えば、贈与した時に計算した利益が500、実際に決済したときの利益が300の場合、決済利益300-国外転出時の利益500=利益▲200(損失200)となります。

買った金額を更新しない場合

国外転出した場合の国外転出時課税については、金額を更新しない場合が3つあります。非居住者に贈与した場合の国外転出時課税についても同様の取扱いがあります。

1つ目
贈与等をした年分の所得税について、確定申告書の提出や所得税の決定がされていない場合

2つ目
確定申告書を提出しているが、収入金額の計算が考慮されていない場合

3つ目
他の特例(第6項と第7項)の対象となる場合
(例えば、贈与等の日から5年以内に帰国する場合)

参考規定

国外転出時課税の対象となった有価証券等を売却した場合、取得価額を更新する必要があります。

4 贈与の日又は相続の開始の日(以下この条において「贈与等の日」という。)の属する年分の所得税につき前三項(第八項(第十項において準用する場合を含む。第一号において同じ。)又は第十一項の規定により適用する場合を含む。)の規定の適用を受けた居住者から有価証券等又は未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引に係る契約の移転を受けた個人(その相続人を含む。)が、当該有価証券等又は未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引に係る契約の譲渡(前条第四項に規定する譲渡をいう。第九項において同じ。)又は決済をした場合における事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、次に定めるところによる。ただし、当該贈与等の日の属する年分の所得税につき確定申告書の提出及び決定がされていない場合における当該有価証券等、未決済信用取引等及び未決済デリバティブ取引、当該贈与等の日の属する年分の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上有価証券等の当該贈与等の時における価額に相当する金額又は未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引の利益の額若しくは損失の額に相当する金額が総収入金額に算入されていない当該有価証券等、未決済信用取引等及び未決済デリバティブ取引並びに第六項前段(第七項の規定により適用する場合を含む。)の規定の適用があつた有価証券等、未決済信用取引等及び未決済デリバティブ取引については、この限りでない。
一 その有価証券等については、第一項の贈与等があつた時における当該有価証券等の価額に相当する金額(第八項の規定により第一項の規定の適用を受けた場合には当該有価証券等の第八項に規定する譲渡に係る譲渡価額又は限定相続等の時における当該有価証券等の価額に相当する金額とし、第十一項の規定により第一項の規定の適用を受けた場合には第十一項に規定する五年を経過する日における当該有価証券等の価額に相当する金額とする。)をもつて取得したものとみなす。
二 その未決済信用取引等又は未決済デリバティブ取引の決済があつた場合には、当該決済によつて生じた利益の額若しくは損失の額(以下この号において「決済損益額」という。)から当該未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引に係る第二項若しくは前項に規定する利益の額に相当する金額を減算し、又は当該決済損益額に当該未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引に係る第二項若しくは前項に規定する損失の額に相当する金額を加算するものとする。

所得税法第60条の3第4項、施行日令和6年6月12日
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