通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価_対象資産2


今回は、通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価を確認してみましょう。通算グループを出る前にも時価評価が必要です。

時価評価のポイントは次の2点です。
1、対象となる法人
2、対象となる資産

対象となる資産は、要件により異なります。
今回は2号の要件と時価評価資産を確認します。

時価評価の要件

その通算法人の株式等を有する他の通算法人において
その通算終了直前事業年度終了時「後」に
その株式等の譲渡又は評価替えによる損失の額として
政令で定める金額が生ずることが見込まれていること
(1号に該当する場合を除く。)


通算グループ内の持合い株式について、
離脱後に譲渡又は評価替えによる損失が
発生する見込みがある場合が時価評価の要件となります。

時価評価の要件となる損失の金額(政令で定める金額)

次の7つの規定による損金算入額が見込まれている場合です。

  1. 資産の評価損(法法33条②~④)
  2. 有価証券の譲渡損益(法法61条の2①)
  3. 合併・分割による資産等の時価の譲渡(法法62条②)
  4. 現物分配による資産の譲渡(法法62条の5②)
  5. 非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の有する資産の時価評価損益(法法62条の9①)
  6. 通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益(法法64条の11①②)
  7. 通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益(法法64条の12①②)

6番と7番は、通算制度が開始(通算制度に加入)する場合の時価評価の規定です。通算グループから離脱して、別の通算制度が始まることによる時価評価の損失が発生する見込みがある場合は、離脱前に時価評価が必要です。

A通算制度
| 通算終了直前事業年度
| 含み損が実現する見込みがある場合、含み損を時価評価する。
| 含み損の持ち出し禁止。
離脱等
| 通算終了直前事業年度時「後」
| 開始・加入の時価評価による時価評価の見込みがある。
B通算制度

通算グループ内で発生した含み損を離脱する前に精算するため、
譲渡益が生じる場合は時価評価が不要です。
1号の主要事業が継続しない場合に該当するときについても
時価評価が不要です。

時価評価の対象資産

その通算法人がその通算終了直前事業年度終了時に有する
同号(注1)に定める資産(注2)のうち、
その時後に譲渡、評価替え、貸倒れ、除却
その他の政令で定める事由が生ずること(注3)が見込まれているもの

注1、1号
固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産(これらの資産のうち評価損益の計上に適しないものとして一定のものを除く。)

注2、その時における帳簿価額として
政令で定める金額が10億円を超えるものに限る。

注3、その事由が生ずることによる損金算入額がない場合又は
その事由が生ずることによる損金算入額が
その事由が生ずることによる益金算入額以下である場合を除く。

政令で定める事由については別途確認します。


主要事業が継続しない場合は1号で時価評価します。
主要事業が継続する場合は2号で判定し、
離脱後に一定の含み損が実現する見込みがある場合は含み損を時価評価します。ただし、帳簿価額が10億円を超えるものに限ります。

10億円超基準

帳簿価額(法法64条の13①2号)として政令で定める金額は、
資産を第2項に規定する単位に区分した後の
それぞれの資産の通算制度からの
離脱等に伴う資産の時価評価損益(法法64条の13①)を適用しないもの
とした場合における
通算終了直前事業年度(法法64条の13①)終了時の帳簿価額とします。

少し複雑な表現です。資産を一定の単位ごとに区分した後の金額で、離脱等の時価評価する「前」の帳簿価額が10億円超の場合、含み損の時価評価をします。

例えば、離脱前の土地の帳簿価額が11億円
離脱前の土地の時価が9億円の場合(含み損2億円)
11億円>10億円となるため、含み損2億円の時価評価が必要となります。
時価評価後の帳簿価額では判定しません。

参考規定

6 法第六十四条の十三第一項第二号に規定する帳簿価額として政令で定める金額は、資産を第二項に規定する単位に区分した後のそれぞれの資産の同条第一項の規定を適用しないものとした場合における同項に規定する通算終了直前事業年度終了の時における帳簿価額とする。

法令131条の17、通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益

第2項

(通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益)
第百三十一条の十七 
2 法第六十四条の十三第一項第一号に規定する政令で定める場合は、同項に規定する通算法人の同項に規定する通算終了直前事業年度終了の時に有する同号に定める資産の評価益の額(資産を財務省令で定める単位に区分した後のそれぞれの資産のその時における価額がその時における帳簿価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)

法令131条の17、通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益

財務省令

(通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価の単位)
第二十七条の十六の十二 令第百三十一条の十七第二項(通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益)に規定する財務省令で定める単位は、第二十七条の十五第一項各号(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定めるところにより区分した後の単位とする。

法人税法施行規則27条の16の12

法規27条の15

(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)
第二十七条の十五 令第百二十三条の八第二項第四号(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)(同条第九項、第十一項及び第十二項において準用する場合を含む。)に規定する財務省令で定める単位は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定めるところにより区分した後の単位とする。

一 金銭債権 一の債務者ごとに区分するものとする。
二 減価償却資産 次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定めるところによる。
イ 建物 一棟(建物の区分所有等に関する法律第一条(建物の区分所有)の規定に該当する建物にあつては、同法第二条第一項(定義)に規定する建物の部分)ごとに区分するものとする。
ロ 機械及び装置 一の生産設備又は一台若しくは一基(通常一組又は一式をもつて取引の単位とされるものにあつては、一組又は一式)ごとに区分するものとする。
ハ その他の減価償却資産 イ又はロに準じて区分するものとする。
三 土地等(令第百二十三条の八第二項第一号に規定する土地等をいう。以下この号において同じ。) 土地等を一筆(一体として事業の用に供される一団の土地等にあつては、その一団の土地等)ごとに区分するものとする。
四 有価証券 その銘柄の異なるごとに区分するものとする。
五 資金決済に関する法律第二条第五項(定義)に規定する暗号資産 その種類の異なるごとに区分するものとする。
六 その他の資産 通常の取引の単位を基準として区分するものとする。
2 省略

法人税法施行規則27条の15

金銭債権、減価償却資産、建物、機械装置、その他の減価償却資産、土地等、有価証券、暗号資産、その他の資産が単位となります。

参考規定

(通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益)
第六十四条の十三 通算法人(第六十四条の十第四項から第六項まで(通算制度の取りやめ等)の規定により通算承認の効力を失うもの当該通算法人が通算子法人である場合には、第六十四条の五(損益通算)の規定の適用を受けない法人として政令で定める法人及び他の通算法人を合併法人とする合併が行われたこと又は当該通算法人の残余財産が確定したことに基因して同項の規定により当該通算承認の効力を失うものを除く。)に限る。)が次に掲げる要件のいずれかに該当する場合には、当該通算法人の通算終了直前事業年度(その効力を失う日の前日の属する事業年度をいう。以下この項において同じ。)終了の時に有する時価評価資産(次の各号に掲げる要件のいずれに該当するかに応じ当該各号に定める資産をいう。)の評価益の額(その時の価額がその時の帳簿価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)又は評価損の額(その時の帳簿価額がその時の価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)は、当該通算終了直前事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。

二 当該通算法人の株式又は出資を有する他の通算法人において当該通算終了直前事業年度終了の時後に当該株式又は出資の譲渡又は評価換えによる損失の額として政令で定める金額が生ずることが見込まれていること(前号に掲げる要件に該当する場合を除く。) 当該通算法人が当該通算終了直前事業年度終了の時に有する同号に定める資産(その時における帳簿価額として政令で定める金額が十億円を超えるものに限る。)のうちその時後に譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他の政令で定める事由が生ずること(その事由が生ずることにより損金の額に算入される金額がない場合又はその事由が生ずることにより損金の額に算入される金額がその事由が生ずることにより益金の額に算入される金額以下である場合を除く。)が見込まれているもの

法人税法第64条の13第1項、通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益

政令で定める金額

5 法第六十四条の十三第一項第二号に規定する損失の額として政令で定める金額は、次に掲げる規定により損金の額に算入される金額とする。
一 法第三十三条第二項から第四項まで(資産の評価損)
二 法第六十一条の二第一項(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)
三 法第六十二条第二項(合併及び分割による資産等の時価による譲渡)
四 法第六十二条の五第二項(現物分配による資産の譲渡)
五 法第六十二条の九第一項(非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の有する資産の時価評価損益)
六 法第六十四条の十一第一項又は第二項(通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益)
七 法第六十四条の十二第一項又は第二項(通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益)

法令131条の17、通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益
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