通算制度加入に伴う資産の時価評価_対象法人


時価評価の趣旨

含み損益を他の法人の損益と通算させないことを目的としています。原則として、子法人の含み損1億円は、通算制度を始める前に精算することになります。

通算制度の加入に伴う資産の時価評価損益(法法64条の12①)

規定を要約します。

子法人等(法法64条の9⑪⑫、注1、次の法人を除く。)が通算加入直前事業年度(注2)終了時に有する時価評価資産(注3)の評価益又は評価損は、その通算加入直前事業年度の益金の額又は損金の額に算入します。

注1、加入に伴う時価評価をしない法人
1号~4号の法人

注2、その内国法人の通算承認効力発生日の前日の属するその子法人等の事業年度をいいます。以下この項において同じ。

注3、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産(これらの資産のうち評価損益の計上に適しないものとして政令で定めるものを除く。)をいいます。


ポイントは次の2つです。
1、時価評価をしない加入法人
2、時価評価をする加入法人であっても時価評価をしない資産

今回は、1の時価評価をしない加入法人を確認します。

通算グループ内で完全支配関係がある法人を設立した場合(1号)

通算グループ内で新たに完全支配関係がある法人を
設立した場合のその法人(子法人や孫法人など)です。

親法人
 |
A子法人、C子法人(親が設立)
 |
B孫法人(Aが設立)

上記の場合、B孫法人とC子法人は、時価評価をしない法人となります。

1号の要件はシンプルですが、以下2号から4号までの要件は複雑です。
適格組織再編の要件に似た要件を満たす必要があります。
2号、適格株式交換等で通算グループに加入した子法人等
3号、加入直前に支配関係がある場合(従業者、主要事業の引継ぎ要件)
4号、加入直前に支配関係がない場合(共同事業要件)

適格株式交換等で通算グループに加入した子法人等(2号)

適格株式交換等で通算グループに加入した子法人等は、
時価評価をしない法人となります。

加入直前に支配関係がある場合(3号)

規定を要約します。

通算親法人が加入法人との間に、その通算親法人による完全支配関係を有することとなった場合(注1)で、かつ、次に掲げる要件(イとロ)の全てに該当する場合におけるその加入法人(注2)

注1、その直前においてその通算親法人とその加入法人との間にその通算親法人による「支配関係」がある場合に限ります。完全支配関係ではありません。

イ、その加入法人のその完全支配関係を有することとなる「直前」の従業者のうち、その総数のおおむね80%がその加入法人の業務(その加入法人との間に完全支配関係がある法人の業務を含む。グループ内の転籍OK。)に引き続き従事することが見込まれていること。

ロ、その加入法人のその完全支配関係を有することとなる「前」に行う主要事業がその加入法人(その加入法人との間に完全支配関係がある法人を含む。グループ内であれば事業移管OK。)において引き続き行われることが見込まれていること。

注2、その通算親法人との間にその通算親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合として政令で定める場合に限るものとし、第2条12号の17(適格株式交換等)イ(100%)、ロ(50%超)、ハ(共同事業)のいずれにも該当しない株式交換等(=非適格株式交換等)により完全支配関係を有することとなったその株式交換等に係る株式交換等完全子法人を除く


次の主な要件を満たす場合、時価評価が不要となります。
1、発生直前に支配関係(50%超)がある。
2、次の要件を満たす。
 イ、発生直前の従業者の80%が継続従事する見込み。
 ロ、発生前の主要事業が継続する見込み。
3、完全支配関係が継続する見込み。
4、非適格株式交換等によるものではない。

加入直前に支配関係がない場合(4号)

規定を要約します。

通算親法人が加入法人との間にその通算親法人による完全支配関係を有することとなった場合で、かつ、「その通算親法人又は子法人等」と「その加入法人」とが共同で事業を行う場合として政令で定める場合(共同事業要件)に該当する場合におけるその加入法人(注1)

注1、その通算親法人との間にその通算親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合として政令で定める場合に該当するものに限るものとし、第2条12号の17(適格株式交換等)イ(100%)、ロ(50%超)、ハ(共同事業)のいずれにも該当しない株式交換等(=非適格株式交換等)により完全支配関係を有することとなったその株式交換等に係る株式交換等完全子法人を除く。


次の主な要件を満たす場合、時価評価が不要となります。
1、共同事業要件を満たす。
2、完全支配関係が継続する見込み。
3、非適格株式交換等によるものではない。

共同事業要件
1、完全支配関係が発生した直前に支配関係がない。
2、子法人事業と親法人事業が相互に関連している。
3、規模が5倍以内又は特定役員が退任しない。
4、従業者の80%の継続従事が見込まれている。
5、主要事業が継続すること。

参考規定

通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益

第六十四条の十二 第六十四条の九第十一項又は第十二項(通算承認)の規定の適用を受けるこれらの規定に規定する他の内国法人次に掲げるものを除く。が通算加入直前事業年度(当該他の内国法人について通算承認の効力が生ずる日の前日の属する当該他の内国法人の事業年度をいう。以下この項において同じ。)終了の時に有する時価評価資産(固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産(これらの資産のうち評価損益の計上に適しないものとして政令で定めるものを除く。)をいう。)の評価益の額(その時の価額がその時の帳簿価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)又は評価損の額(その時の帳簿価額がその時の価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)は、当該通算加入直前事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
一 通算法人が当該通算法人に係る通算親法人による完全支配関係がある法人を設立した場合における当該法人
二 通算法人を株式交換等完全親法人とする適格株式交換等に係る株式交換等完全子法人
三 通算親法人が法人との間に当該通算親法人による完全支配関係を有することとなつた場合(その有することとなつた時の直前において当該通算親法人と当該法人との間に当該通算親法人による支配関係がある場合に限る。)で、かつ、次に掲げる要件の全てに該当する場合における当該法人(当該通算親法人との間に当該通算親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合として政令で定める場合に該当するものに限るものとし、第二条第十二号の十七イからハまで(定義)のいずれにも該当しない株式交換等により完全支配関係を有することとなつた当該株式交換等に係る株式交換等完全子法人を除く。
イ 当該法人の当該完全支配関係を有することとなる時の直前の従業者のうち、その総数のおおむね百分の八十以上に相当する数の者が当該法人の業務(当該法人との間に完全支配関係がある法人の業務を含む。)に引き続き従事することが見込まれていること。
ロ 当該法人の当該完全支配関係を有することとなる前に行う主要な事業が当該法人(当該法人との間に完全支配関係がある法人を含む。)において引き続き行われることが見込まれていること。

四 通算親法人が法人との間に当該通算親法人による完全支配関係を有することとなつた場合で、かつ、当該通算親法人又は他の通算法人と当該法人とが共同で事業を行う場合として政令で定める場合に該当する場合における当該法人(当該通算親法人との間に当該通算親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合として政令で定める場合に該当するものに限るものとし、第二条第十二号の十七イからハまでのいずれにも該当しない株式交換等により完全支配関係を有することとなつた当該株式交換等に係る株式交換等完全子法人を除く。

法人税法64条の12、通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益

通算効力発生日

11 第二項に規定する他の内国法人が通算親法人との間に当該通算親法人による完全支配関係を有することとなつた場合(第十四条第八項(第二号に係る部分に限る。)(事業年度の特例)の規定の適用を受ける場合を除く。)には、当該他の内国法人については、当該完全支配関係を有することとなつた日(同条第八項(第一号に係る部分に限る。次項各号において同じ。)の規定の適用を受ける場合にあつては、同日の前日の属する同条第八項第一号に規定する特例決算期間の末日の翌日。以下この項において同じ。)において通算承認があつたものとみなす。この場合において、その通算承認は、当該完全支配関係を有することとなつた日から、その効力を生ずるものとする。

12 第二項に規定する他の内国法人が申請特例年度において第七項の規定の適用を受けて通算承認を受ける第一項に規定する親法人との間に当該親法人による完全支配関係を有することとなつた場合(第十四条第八項(第二号に係る部分に限る。)の規定の適用を受ける場合を除く。)には、前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる法人の区分に応じ当該各号に定める日においてその通算承認があつたものとみなす。この場合において、その通算承認は、当該各号に定める日から、その効力を生ずるものとする。
一 当該完全支配関係を有することとなつた日の前日の属する事業年度終了の時に第六十四条の十二第一項(通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益)に規定する時価評価資産その他の政令で定めるものを有する当該他の内国法人(同項各号に掲げるものを除く。以下この号において「時価評価法人」という。)及び当該時価評価法人又は第十項第一号に規定する時価評価法人が発行済株式又は出資を直接又は間接に保有する第二項に規定する他の内国法人 当該申請特例年度終了の日の翌日(第十四条第八項の規定の適用を受ける場合にあつては、当該翌日と当該前日の属する同項第一号に規定する特例決算期間の末日の翌日とのうちいずれか遅い日)
二 第二項に規定する他の内国法人のうち、前号に掲げる法人以外の法人 当該完全支配関係を有することとなつた日(第十四条第八項の規定の適用を受ける場合にあつては、同日の前日の属する同項第一号に規定する特例決算期間の末日の翌日)

法人税法64条の9、通算承認
参考規定(政令)

完全支配関係が継続する場合

3 法第六十四条の十二第一項第三号及び第四号に規定する完全支配関係が継続することが見込まれている場合として政令で定める場合は、通算親法人との間に当該通算親法人による完全支配関係を有することとなつた法人について法第六十四条の九第一項の規定による承認(以下この項において「通算承認」という。)の効力が生じた後に当該法人と当該通算親法人との間に当該通算親法人による完全支配関係が継続すること(当該通算承認の効力が生じた後に当該法人を被合併法人とする適格合併(当該通算親法人又は他の通算法人で当該通算親法人による通算完全支配関係が継続することが見込まれているものを合併法人とするものに限る。)を行うことが見込まれている場合には、当該通算承認の効力が生じた時から当該適格合併の直前の時まで当該完全支配関係が継続すること。)が見込まれている場合とする。

法人税法施行令131条の16、通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益

共同事業要件

4 法第六十四条の十二第一項第四号に規定する共同で事業を行う場合として政令で定める場合は、次に掲げる要件の全てに該当する場合(同号の完全支配関係を有することとなつた時の直前において同号の通算親法人と同号の法人との間に当該通算親法人による支配関係がある場合を除く。)とする。

一 法第六十四条の十二第一項第四号の法人又は当該法人が同号の通算親法人との間に当該通算親法人による完全支配関係を有することとなる時の直前において当該法人との間に完全支配関係がある他の法人(当該完全支配関係が継続することが見込まれているものに限る。第四号において同じ。)の完全支配関係発生日(当該通算親法人による完全支配関係を有することとなる日をいう。以下この項において同じ。)前に行う事業のうちのいずれかの主要な事業(次号において「子法人事業」という。)と当該通算親法人又は当該完全支配関係を有することとなる時の直前において当該通算親法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人(当該通算完全支配関係が継続することが見込まれているものに限る。)の完全支配関係発生日前に行う事業のうちのいずれかの事業(次号において「親法人事業」という。)とが相互に関連するものであること。

二 子法人事業と親法人事業(当該子法人事業と関連する事業に限る。)のそれぞれの売上金額、当該子法人事業と親法人事業のそれぞれの従業者の数若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね五倍を超えないこと又は完全支配関係発生日の前日の子法人事業を行う法人の特定役員(社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。)の全てが法第六十四条の十二第一項第四号の通算親法人による完全支配関係を有することとなつたことに伴つて退任をするものでないこと。

三 法第六十四条の十二第一項第四号の法人が同号の通算親法人との間に当該通算親法人による完全支配関係を有することとなる時の直前の当該法人の従業者のうち、その総数のおおむね百分の八十以上に相当する数の者が当該法人の業務(当該法人との間に完全支配関係がある法人の業務を含む。)に引き続き従事することが見込まれていること。

四 法第六十四条の十二第一項第四号の法人の完全支配関係発生日前に行う主要な事業(当該主要な事業が第一号の子法人事業でない場合には、当該子法人事業を含む。)が当該法人(当該法人との間に完全支配関係がある他の法人を含む。)において引き続き行われることが見込まれていること。

法人税法施行令131条の16、通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益
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