通算制度開始に伴う資産の時価評価_対象法人


時価評価の趣旨

含み損益を他の法人の損益と通算させないことを目的としています。原則として、A親法人の含み益1億円とB子法人の含み損1億円は、それぞれ通算制度を始める前に精算することになります。

通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益(法法64条の11①)

カッコ書きが複雑ですので、カッコを除いて要約します。

通算承認を受ける内国法人(注1)が通算開始直前事業年度(注2)終了時に有する時価評価資産(注3)の評価益又は評価損は、その通算開始直前事業年度の益金又は損金の額に算入します。

通算制度を始める直前に有する含み益は益金算入、
含み損は損金算入となります。

注1、対象法人(時価評価が必要な法人)
親法人とその親法人の最初通算事業年度(注1-2)開始時にその親法人との間にその親法人による完全支配関係(注1-3)があるものに限るものとし、次に掲げるものを除く。

注1ー2
その通算承認効力発生日以後最初に終了する事業年度

注1ー3
同条1項=64条の9①に規定する政令で定める関係に限る。以下この項及び次条において同じ。外国法人などが介在しない完全支配関係のことです。

注2、通算開始直前事業年度
その最初通算事業年度開始日の前日(その内国法人グループが時価評価法人(法法64条の9⑩1号)である場合には、その最初通算事業年度終了日)の属するその内国法人グループの事業年度をいいます。この項・次項において同じ。

注3、時価評価資産
別途確認します。

次に掲げるものを除く。
時価評価しない法人が2つあります。

時価評価しない親法人(1号、完全支配関係が継続する場合)

1つ目は親法人です。

その親法人と子法人等(法法64条の9②、注1-4)のいずれかとの間に完全支配関係が継続することが見込まれている場合として政令で定める場合に該当する場合におけるその親法人

注1-4
その最初通算事業年度開始時にその親法人との間にその親法人による完全支配関係があるものに限ります。

政令で定める場合

3 法第六十四条の十一第一項第一号に規定する政令で定める場合は、親法人について法第六十四条の九第一項の規定による承認(次項において「通算承認」という。)の効力が生じた後に当該親法人と同号に規定する他の内国法人のいずれかとの間に当該親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合とする。

法人税法施行令131条の15

親法人について通算承認効力発生後にその親法人とその子法人等のいずれかとの間に、その親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合です。

時価評価しない子法人等(2号、完全支配関係が継続する場合)

2つ目は子法人です。

その親法人と子法人等(法法64条の9②)との間にその親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合として政令で定める場合に該当する場合におけるその子法人等

政令で定める場合

4 法第六十四条の十一第一項第二号に規定する政令で定める場合は、同号に規定する他の内国法人について通算承認の効力が生じた後に当該他の内国法人と親法人との間に当該親法人による完全支配関係が継続すること(当該通算承認の効力が生じた後に当該他の内国法人を被合併法人とする適格合併(当該親法人又は当該親法人との間に完全支配関係がある法第六十四条の九第二項に規定する他の内国法人で当該親法人による完全支配関係が継続することが見込まれているものを合併法人とするものに限る。)を行うことが見込まれている場合には、当該通算承認の効力が生じた時から当該適格合併の直前の時まで当該親法人による完全支配関係が継続すること。)が見込まれている場合とする。

法人税法施行令131条の15

子法人等について通算承認効力発生後にその子法人等と親法人との間にその親法人による完全支配関係が継続すること(注1)が見込まれている場合です。

親法人と同様に完全支配関係の継続が時価評価しない要件となっています。ただし、注1の条件が付いています。

時価評価しない子法人等の追加条件

注1、その通算承認効力発生後にその子法人等を被合併法人とする適格合併(注2)を行うことが見込まれている場合には、その通算承認効力発生時からその「適格」合併直前の時までその親法人による完全支配関係が継続すること。

子法人等の合併による消滅は、完全支配関係の継続要件を満たしません。ただし、適格合併でその直前まで完全支配関係が継続している場合は、継続要件を満たすものとして時価評価しない法人となります。

注2、その親法人又はその親法人との間に完全支配関係がある法法64条の9②の子法人等でその親法人による完全支配関係が継続することが見込まれているものを合併法人とするものに限ります。

例えば、

A親法人
 |
B子法人(見込み有り、合併法人)、D子法人(見込み無し、合併法人)
 |                 |
C孫法人(被合併法人)      E孫法人(被合併法人)

BがCを適格吸収合併、DがEを適格吸収合併した場合

Bは継続見込みがあるため時価評価をしない法人、
Dは継続見込みがないため時価評価をする法人になるのでしょう。

参考規定、通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益(法法64条の11①)

(通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益)
第六十四条の十一 通算承認を受ける内国法人(第六十四条の九第一項(通算承認)に規定する親法人(以下この項及び次項において「親法人」という。)及び当該親法人の最初通算事業年度(当該通算承認の効力が生ずる日以後最初に終了する事業年度をいう。以下この項において同じ。)開始の時に当該親法人との間に当該親法人による完全支配関係(同条第一項に規定する政令で定める関係に限る。以下この項及び次条において同じ。)があるものに限るものとし、次に掲げるものを除く。が通算開始直前事業年度(当該最初通算事業年度開始の日の前日(当該内国法人が第六十四条の九第十項第一号に規定する時価評価法人である場合には、当該最初通算事業年度終了の日)の属する当該内国法人の事業年度をいう。以下この項及び次項において同じ。)終了の時に有する時価評価資産(固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産(これらの資産のうち評価損益の計上に適しないものとして政令で定めるものを除く。)をいう。)の評価益の額(その時の価額がその時の帳簿価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)又は評価損の額(その時の帳簿価額がその時の価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)は、当該通算開始直前事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。

一 当該親法人と第六十四条の九第二項に規定する他の内国法人(当該最初通算事業年度開始の時に当該親法人との間に当該親法人による完全支配関係があるものに限る。)のいずれかとの間に完全支配関係が継続することが見込まれている場合として政令で定める場合に該当する場合における当該親法人

二 当該親法人と第六十四条の九第二項に規定する他の内国法人との間に当該親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合として政令で定める場合に該当する場合における当該他の内国法人

法人税法64条の11、通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益
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